問28 厚生労働省の「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」に基づく危険性又は有害性等の調査等に関する次の記述のうち、適切なものはどれか。
(1)リスクの見積りに当たっては、過去に発生した負傷又は疾病のうち最も重篤であったものを用いて重篤度を見積もる。
(2)危険性又は有害性等の調査等は、リスク低減措置の決定及び実施を含め、対象となる機械設備等に詳しい立場である職長の責任によって行う。
(3)危険性又は有害性等の調査等の実施時期には、社外における類似作業で発生した災害など、従前は想定していなかったリスクを明らかにする情報を把握した場合が含まれる。
(4)危険性又は有害性等の調査等を実施する場合は、自社の秘密保持のため、外部のコンサルタントの助力を得ることは避ける。
(5)安全機能等を無効化する又は無視する可能性は、安全衛生教育の徹底によって低減させるべきものであり、リスクの見積りに当たって、これらの可能性は考慮しない。

※ イメージ図(©photoAC)
このページは、2024年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。
他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。
柳川に著作権があることにご留意ください。
2024年度(令和06年度) | 問28 | 難易度 | リスクアセスメントの基本が分かっていれば正答可能。過去問も多い。絶対に落としてはならない問題。 |
---|---|---|---|
リスクアセスメント指針 | 1 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問28 厚生労働省の「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」に基づく危険性又は有害性等の調査等に関する次の記述のうち、適切なものはどれか。
(1)リスクの見積りに当たっては、過去に発生した負傷又は疾病のうち最も重篤であったものを用いて重篤度を見積もる。
(2)危険性又は有害性等の調査等は、リスク低減措置の決定及び実施を含め、対象となる機械設備等に詳しい立場である職長の責任によって行う。
(3)危険性又は有害性等の調査等の実施時期には、社外における類似作業で発生した災害など、従前は想定していなかったリスクを明らかにする情報を把握した場合が含まれる。
(4)危険性又は有害性等の調査等を実施する場合は、自社の秘密保持のため、外部のコンサルタントの助力を得ることは避ける。
(5)安全機能等を無効化する又は無視する可能性は、安全衛生教育の徹底によって低減させるべきものであり、リスクの見積りに当たって、これらの可能性は考慮しない。
正答(3)
【解説】
本問は、問題文本文にもあるように、「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(以下「指針」という。)に関する問題である。
適宜、「危険性又は有害性等の調査等に関する指針について(平成 18 年3月 10 日基発第 0310001 号)」(以下「基本通達」という。)についても参照している。
(1)不適切である。指針9の(2)のイにあるように、リスクの見積りに当たっては、最悪の状況を想定した最も重篤な負傷又は疾病の重篤度を見積もる。過去に発生した負傷又は疾病のうち最も重篤であったものを用いて重篤度を見積もるのではない。
過去に発生した負傷又は疾病のうち最も重篤であったもので見積もったとしても、過去に起きた災害は、たまたま軽症となったものばかりということもあり得よう。ハインリヒの法則によれば、重篤な災害が起きうる事故であったとしても、同種事故で軽症の災害や負傷さえしない事故も、数多く発生するのである。
リスクを見積もるにあたっては、最悪のケースを想定する必要がある。なぜなら、そのような災害も起き得るからである。
【危険性又は有害性等の調査等に関する指針】
9 リスクの見積り
(2)事業者は、(1)の見積りに当たり、次に掲げる事項に留意するものとする。
ア (略)
イ 過去に実際に発生した負傷又は疾病の重篤度ではなく、最悪の状況を想定した最も重篤な負傷又は疾病の重篤度を見積もること。
ウ及びエ (略)
※ 厚生労働省「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(平成 18 年3月 10 日基発第 0310001 号)
(2)不適切である。基本通達の4の(5)によれば、危険性又は有害性等の調査等のうち、リスク低減措置の決定及び実施は、職長の実施事項には含まれていない。
【危険性又は有害性等の調査等に関する指針】
4 実施体制等
(1)事業者は、次に掲げる体制で調査等を実施するものとする。
ア~ウ (略)
エ 調査等の実施に当たっては、作業内容を詳しく把握している職長等に危険性又は有害性の特定、リスクの見積り、リスク低減措置の検討を行わせるように努めること。
オ (略)
※ 厚生労働省「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(平成 18 年3月 10 日基発第 0310001 号)【危険性又は有害性等の調査等に関する指針について】
4 実施体制等について
(5)指針の4(1)エの「職長等」とは、職長のほか、班長、組長、係長等の作業中の労働者を直接指導又は監督する者がこれに該当すること。また、職長等以外にも作業内容を詳しく把握している一般の労働者がいる場合には、当該労働者を参加させることが望ましいこと。
なお、リスク低減措置の決定及び実施は、事業者の責任において実施されるべきであるものであることから、指針の4(1)エにおいて、職長等に行わせる事項には含めていないこと。
※ 厚生労働省「危険性又は有害性等の調査等に関する指針について」(平成 18 年3月 10 日基発第 0310001 号)(下線強調引用者)
(3)適切である。指針の5の(1)のアの(イ)及び基本通達の5の(5)により、危険性又は有害性等の調査等の実施時期には、社外における類似作業で発生した災害など、従前は想定していなかったリスクを明らかにする情報を把握した場合が含まれる。
【危険性又は有害性等の調査等に関する指針】
5 実施時期
(1)事業者は、次のアからオまでに掲げる作業等の時期に調査等を行うものとする。
ア~エ (略)
オ その他、次に掲げる場合等、事業場におけるリスクに変化が生じ、又は生ずるおそれのあるとき。
(ア) (略)
(イ) 前回の調査等から一定の期間が経過し、機械設備等の経年による劣化、労働者の入れ替わり等に伴う労働者の安全衛生に係る知識経験の変化、新たな安全衛生に係る知見の集積等があった場合
※ 厚生労働省「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(平成 18 年3月 10 日基発第 0310001 号)【危険性又は有害性等の調査等に関する指針について】
5 実施時期について
(5)指針の5(1)オ(イ)の「新たな安全衛生に係る知見」には、例えば、社外における類似作業で発生した災害や、化学物質に係る新たな危険有害情報など、従前は想定していなかったリスクを明らかにする情報があること。
※ 厚生労働省「危険性又は有害性等の調査等に関する指針について」(平成 18 年3月 10 日基発第 0310001 号)(下線強調引用者)
(4)不適切である。基本通達の4の(7)によれば、危険性又は有害性等の調査等の実施に関し、専門的な知識を必要とする場合等には、外部のコンサルタントの助力を得ることも差し支えないとされている。
そもそもコンサルタント試験に、「外部のコンサルタントの助力を得ることは避ける」などという選択肢を、正しいものとして出題するわけがなかろう。
【危険性又は有害性等の調査等に関する指針について】
4 実施体制等について
(7)調査等の実施に関し、専門的な知識を必要とする場合等には、外部のコンサルタントの助力を得ることも差し支えないこと。
※ 厚生労働省「危険性又は有害性等の調査等に関する指針について」(平成 18 年3月 10 日基発第 0310001 号)(下線強調引用者)
(5)不適切である。指針9の(3)の後段のイにより、リスクの見積もりに当たっては、安全機能等を無効化する又は無視する可能性は考慮しなければならない。
現実に、作業者が安全機能等を無効化する又は無視する可能性は否定しえない。そのようなことを考慮しないのでは、リスクアセスメントは現実を無視した机上の空論となってしまうだろう。
【危険性又は有害性等の調査等に関する指針】
9 リスクの見積り
(3)事業者は、(1)の見積りを、事業場の機械設備、作業等の特性に応じ、次に掲げる負傷又は疾病の類型ごとに行うものとする。
ア~エ (略)
また、その際、次に掲げる事項を考慮すること。
ア (略)
イ 安全機能等を無効化する又は無視する可能性
ウ (略)
※ 厚生労働省「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(平成 18 年3月 10 日基発第 0310001 号)