問25 第 13 次労働災害防止計画期間(2018 年度~ 2022 年度)の労働災害発生状況(新型コロナウイルス感染症へのり患による労働災害を除く。)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)全産業の死亡者数は、2018 年から 2022 年まで毎年連続して減少した。
(2)全産業の休業4日以上の死傷者数は、2017 年と比較して、2022 年には5%以上増加した。
(3)陸上貨物運送事業、小売業、社会福祉施設及び飲食店の死傷年千人率は、2017 年と比較して、2022 年にはそれぞれ5%以上減少した。
(4)全産業の死亡者数は、2017 年と比較して、2022 年には 15 %以上減少した。
(5)林業の死亡者数は、2017 年と比較して、2022 年には 15 %以上減少した。

※ イメージ図(©photoAC)
このページは、2024年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。
他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。
柳川に著作権があることにご留意ください。
2024年度(令和06年度) | 問25 | 難易度 | 第 13 次計画期間中の災害動向は、今後は出題されないだろう。しかし、災害の長期傾向は知っておきたい。 |
---|---|---|---|
第13次災害防止計画 | 5 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問25 第 13 次労働災害防止計画期間(2018 年度~ 2022 年度)の労働災害発生状況(新型コロナウイルス感染症へのり患による労働災害を除く。)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)全産業の死亡者数は、2018 年から 2022 年まで毎年連続して減少した。
(2)全産業の休業4日以上の死傷者数は、2017 年と比較して、2022 年には5%以上増加した。
(3)陸上貨物運送事業、小売業、社会福祉施設及び飲食店の死傷年千人率は、2017 年と比較して、2022 年にはそれぞれ5%以上減少した。
(4)全産業の死亡者数は、2017 年と比較して、2022 年には 15 %以上減少した。
(5)林業の死亡者数は、2017 年と比較して、2022 年には 15 %以上減少した。
正答(3)
【解説】
コンサルタント試験では、新規労働災害防止計画が策定されるときに、新規の計画の目標や、過去の計画期間中の状況が出題されることはあったが、数は多くはなかった。
過去の計画期間中の災害発生状況が問われたのは、2期前の 2013 年度問 25 で第 12 次労働災害防止計画期間中の災害発生状況が問われて以来である。
その意味では、この種の問題が次に出題されるのは5年後に第 14 次労働災害防止計画期間中についての災害発生状況ということになるかもしれない。
しかし、労働災害の長期的な推移は今後も出題される可能性はあり、また口述試験で問われることもあるので、本問の各肢の結論は覚えておいた方がよい。
(1)正しい。全産業の新型コロナウイルス感染症へのり患による労働災害を除く死亡者数は、2017年(978人)、2018年(909人)、2019年(845人)、2020年(784人)、2021年(778人)2022年(774人)、2023年(755人)となっており、2018年から2022年までは毎年連続して減少した。
(2)正しい。全産業の休業4日以上の死傷者数は、2017年(120,460人)と比較して、2022年(132,355人)には5%以上増加した。
(3)誤り。厚生労働省「第13次労働災害防止計画の主な目標に関する令和3年(2021年)実績」には、2021年時点の数値しか載っていないが、第13次労働災害防止計画期間中、小売店・社会福祉施設を中心に新型コロナウイルス感染症による労働災害が増加したものの、それを差し引いても死傷災害年千人率は増加したとされている。
【2021年実績の分析】
2021 年実績の分析
小売店・社会福祉施設では新型コロナウイルス感染症による労働災害が増加したものの、それを差し引いても死傷災害年千人率は増加。この背景として、
・ 第三次産業における雇用者数が引き続き増加し、新規就労者も増加。転倒・腰痛等の労働者の作業行動に起因する災害が増加しており、労働安全衛生関係法令に基づく措置を実施するだけでは災害を防ぎにくい状況となっている。
・ 第三次産業では重篤な災害は発生しないとの誤解も多く、施設利用者や顧客の安全確保に関心が偏っている。
・ 本社の主導による安全衛生活動の傘下事業場等への展開が不十分。
※ 厚生労働省「第13次労働災害防止計画の主な目標に関する令和3年(2021年)実績」(第 148 回労働政策審議会安全衛生分科会資料)
(4)正しい。全産業の死亡者数は、2017年(978人)と比較して、2022年(774人)には 15 %以上減少した。
(5)正しい。林業の死亡者数は、2017年(40人)と比較して、2022年(28人)には 15 %以上減少した。そのことは事実である。そればかりか、休業4日以上の死傷災害も減少しており、墜落・転落、転倒、動作の反動・無理な動作など、高齢化が問題となる業種ではいずれも増加している型の災害も減少しているのである。
その理由は簡単で、高齢の労働者の退職が続いていることが最大の原因なのである。死亡災害が減少している原因も、高齢の労働者の減少が大きな要因となっているものであろう。
さらに、死亡災害については、発生件数の絶対数が少なく、傾向としては減少傾向にあるものの各年の数値は増減しているのである。特定の2年間での増減の割合に意味があるとは思えず、問題として適切なのか大いに疑問を感じる(※)。
※ 確かに、本肢の通り「2017 年と比較して、2022 年には 15 %以上減少した」が1年ずらした「2018 年と 2023 年の5年間」では 6.5 %しか減少していないのである。
実を言えば、2021 年の時点で、第 13 次労働災害防止計画の主な目標のうち、達成できていたのは林業の死亡災害の 15 %のみだったのである。林業の死亡災害について出題したのは、そのような背景があったのだとは思うが・・・。