問24 厚生労働省の労働災害統計(令和4年)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)年齢階層別に 20 歳未満、20 ~ 29 歳、30 ~ 39 歳、40 ~ 49 歳、50 ~ 59 歳、60 歳以上に区分して死傷年千人率(休業4日以上)を比較すると、30~39 歳が最も小さくなっている。
(2)業種別の死亡者数をみると、建設業、製造業、陸上貨物運送事業の三つの業種の合計は全産業の約3分の2を占めている。
(3)全産業における休業4日以上の起因物別死傷者数をみると、動力運搬機が最も多くなっている。
(4)全産業における休業4日以上の死傷者数をみると、50 歳以上が半数以上を占めている。
(5)業種別に休業4日以上の事故の型別死傷者数をみると、製造業では、はさまれ・巻き込まれが最も多く、建設業では、墜落・転落が最も多くなっている。

※ イメージ図(©photoAC)
このページは、2024年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。
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2024年度(令和06年度) | 問24 | 難易度 | 労働災害統計は必ず出題される。最近は試験全体の難易度が高まっているため、統計の問題は正答したい。 |
---|---|---|---|
労働災害統計 | 3 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問24 厚生労働省の労働災害統計(令和4年)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)年齢階層別に 20 歳未満、20 ~ 29 歳、30 ~ 39 歳、40 ~ 49 歳、50 ~ 59 歳、60 歳以上に区分して死傷年千人率(休業4日以上)を比較すると、30~39 歳が最も小さくなっている。
(2)業種別の死亡者数をみると、建設業、製造業、陸上貨物運送事業の三つの業種の合計は全産業の約3分の2を占めている。
(3)全産業における休業4日以上の起因物別死傷者数をみると、動力運搬機が最も多くなっている。
(4)全産業における休業4日以上の死傷者数をみると、50 歳以上が半数以上を占めている。
(5)業種別に休業4日以上の事故の型別死傷者数をみると、製造業では、はさまれ・巻き込まれが最も多く、建設業では、墜落・転落が最も多くなっている。
正答(3)
【解説】
(1)正しいとしておく。というのは、2022 年(令和4年)の 10 歳ごとの年齢階層別死傷年千人率の数値は公表されていない(※)からである。
※ 年齢階層別死傷年千人率は公表されているが、それらはいずれも5歳ごとに区分されており(例えば2023年のデータだが「令和5年 高年齢労働者の労働災害発生状況」など)、本肢のように区分されている例は見当たらなかった。
なお、いずれも本肢の年齢区分とは異なっているが、第 14 次労働災害防止計画の表(14頁)によると、経験年数が1年以上の労働者の死傷年千人率は 30 ~ 39 歳が最も小さくなっているが、経験年数が1年未満の労働者では 29 歳以下が最も小さくなっている。また、「令和5年 高年齢労働者の労働災害発生状況」によると、年齢階層別の死傷年千人率(休業4日以上)を比較すると、30~34 歳が最も小さく、25 ~ 29 歳がこれに次いでいる。
従って、これらのデータから本肢がおそらく正しいとは思えるが、確実に正しいとすることはできないのである。
なぜ、あえて公表されていない数値を出題するのかは理解に苦しむが、労働力調査(「労働力調査」の2022年の調査結果)を用いて、10 歳ごとの年死傷千人率を計算してみよう。
なお、母数には就業者数を用いた(※)。これによると、年齢階層別の労働者数、就業者数及び年死傷千人率は次表のようになる。
※ 年千人率の計算に当たって、母数には、労基法の労働者の定義に最も近い「役員を除く雇用者数」を用いることが最も合理的である。ところが、「役員を除く雇用者数」の公表値である 表Ⅰ-A や表Ⅱ-4などの年齢区分はいずれも 15~24歳、25~34歳などとなっており、本問の 10 歳ごとの年死傷千人率の計算には使用できない。
そこで、完全ではないが、基本集計 第Ⅱ-2-1表の「就業者数」を用いた。
合計の値が、行政が公表している数値(2.3)と異なっているが、これは行政は分母に「役員を除く雇用者数」を用いて計算しているからである。
年齢区分 | 死傷者数 (人) |
就業者数 (万人) |
年千人率 |
---|---|---|---|
15~19歳 | 2,460 | 106 | 2.32 |
20~29歳 | 15,937 | 999 | 1.60 |
30~39歳 | 16,412 | 1,171 | 1.40 |
40~49歳 | 25,441 | 1,524 | 1.67 |
50~59歳 | 34,117 | 1,468 | 2.32 |
60以上 | 37,988 | 1,454 | 2.61 |
合計 | 132,355 | 6,722 | 1.97 |
これによると、本肢の「年齢階層別に 20 歳未満、20 ~ 29 歳、30 ~ 39 歳、40 ~ 49 歳、50 ~ 59 歳、60 歳以上に区分して死傷年千人率(休業4日以上)を比較すると、30~39 歳が最も小さくなっている」という文が(おそらく)正しいことが分かる。
しかし、繰り返しになるが、年死傷千人率が公表されていない年齢区分で出題するのはルール違反という気もするがいかがなものであろうか。
(2)正しい。2022 年の業種別の死亡者数をみると、建設業(281人)、製造業(140人)、陸上貨物運送事業(90人)の三つの業種の合計は全産業(774人)の約3分の2を占めている。
(3)誤っている。全産業における休業4日以上の起因物別死傷者数をみると、「動力運搬機」(12,314人)は「仮設物、建築物、構築物等」(36,716人)より少ない。
「仮設物、建築物、構築物等」が起因物となる災害は、転倒や墜落転落災害などである。近年では転倒災害の割合が増加していることにより、「仮設物、建築物、構築物等」を起因物とする災害の割合が増加しつつあるのである。
(4)正しい。全産業(132,355 人)における休業4日以上の死傷者数をみると、50 歳以上(72,105 人)が半数以上を占めている。
高年齢者の労働災害の防止の重要性は、今後、ますます高まってゆくことが考えられる。それに伴って、コンサルタント試験でも出題されることが、筆記・口述を問わず増えるだろう。基本的な数値は押さえておく必要がある。
(5)正しい。業種別に休業4日以上の事故の型別死傷者数をみると、製造業では、はさまれ・巻き込まれが最も多く、建設業では、墜落・転落が最も多くなっている。
近年では、労働災害統計の問題は、業種別に問われることがあるので、基本的なところは覚えておく必要がある。