労働安全コンサルタント試験 2024年 産業安全一般 問21

GHSの絵表示が表す物理化学的危険性とその物質例




問題文
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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2024年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2024年度(令和06年度) 問21 難易度 過去問にGHSの絵表示は出題例がある。ただ、過去問には具体的物質名との組合わせとなっている例はない。
GHS標章  5 

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問21 化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS)に基づく絵表示が表す物理化学的危険性と、その物理化学的危険性をもつ化学物質との次のイ~ニの組合せについて、正しいもののみを挙げたものは(1)~(5)のうちどれか。

なお、窒素は、20°C、ゲージ圧1,000kPaの圧力の下で容器に充填されているガスとする。

絵表示 化学物質
絵表示B トルエン
絵表示B 窒素
絵表示B 硝酸
絵表示B 水酸化カルシウム

(1)イ   ロ

(2)イ   ハ

(3)ロ   ハ

(4)ロ   ニ

(5)ハ   ニ

正答(1)

【解説】

問21試験結果

試験解答状況
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これまでの過去問にGHSの絵表示は出題例(2020年問222022年問21)がある。本年度は、具体的な物質名との組み合わせが新しい要素といえる。最近の安全コンサルタント試験の難易度が上がっている要因の典型ともいえる問題である。

過去問を学習をするに当たっては、たんにその問で問われていることのみならず、周辺の事情まで学習の範囲を広げる必要があることを示している。

なお、GHSの絵表示については、厚労省のサイト「GHSのシンボルと名称」を参照して頂きたい。

危険有害性を表す絵表示
爆弾の爆発 円上の炎 ガスボンベ
絵表示 爆弾の爆発 炎 円上の炎 ガスボンベ
概要

● 火薬類

● 自己反応性化学品

● 有機過酸化物

● 可燃性・引火性ガス

● 可燃性・引火性エアゾール

● 引火性液体、可燃性固体

● 自己反応性化学品

● 自然発火性液体、自然発火性固体、自己発熱性化学品、水反応可燃性化学品、有機過酸化物

● 支燃性・酸化性ガス

● 酸化性液体

● 酸化性固体

● 高圧ガス

イ 正しい。この絵表示は「炎」であり、引火性、可燃性、自己反応性、自然発火性、自己発熱性、水反応可燃性などを表現している。トルエンのモデルSDSにあるように、トルエンは「引火性の高い液体及び蒸気」である。

ロ 正しい。この絵表示は「ガスボンベ」であり、文字通り「高圧ガス」を表現している。GHSにいう高圧ガスとは、GHS分類ガイダンスによれば、「20 ℃、200 kPa(ゲージ圧)以上の圧力の下で容器に充塡されているガス又は液化若しくは深冷液化されているガス。高圧ガスには、圧縮ガス、液化ガス、溶解ガス及び深冷液化ガスが含まれる。高圧ガスには、危険物の輸送に関する国連勧告 モデル規則(UN Recommendations on the transport of dangerous goods, Model Regulations)( 2001)又は国内法に引用されているものを含む」とされている。

問題文より、本肢の窒素は、20°C、ゲージ圧1,000kPaの圧力の下で容器に充填されているガスとされているので該当している。なお、窒素のモデルSDSも高圧ガスの例として記載されている。

ハ 誤り。イの解説で述べたように、この絵表示は「炎」であり、引火性、可燃性、自己反応性、自然発火性、自己発熱性、水反応可燃性などを表現している。硝酸のモデルSDSに示されているように、硝酸はこれらに該当しない。

ニ 誤り。この絵表示は「円上の炎」であり、支燃性・酸化性を表現している。すなわち、自らが燃えるのではなく、「他の物を燃やす」作用のあるものである。公式な記録には残っていないかもしれないが、この絵表示を定めた国際会議では、円は酸素の化学記号の「O」を表す(※)という議論があったのである。

※ 支燃性、可燃性のある物質の多くは、酸素を供給することによって他の物質を燃焼等させるのである。なお、国際会議での議論のことは、会議への参加者から筆者が直接聴いたことである。

水酸化カルシウムのモデルSDSに支援されているように、水酸化カルシウムに支燃性や酸化性はない。確かに水酸化カルシウムは水と混ざることで発熱して火災の原因となることがある(※)が、それは支燃性や酸化性とは別なプロセスである。

※ 東京消防庁「事例2 「建築工事現場敷地内で自然発火により出火した火災」