問20 静電気に隠する次の記述のうち、適切なものはどれか。
(1)絶縁性粉体を輸送する配管の先端近くに、接地した金網を粉体の吹き出し方向と垂直に取り付けると、絶縁性粉体の静電気帯電を除去する方法として有効である。
(2)絶縁性物体を、接地した導電性物体と電気的に接続すると、絶縁性物体の静電気帯電を防止することができる。
(3)二つの異なる物体を摩擦したときの帯電量は、帯電列の中の位置が離れているほど小さくなる傾向がある。
(4)帯電物体の近くに接地不良になった導体があると、その導体は静電誘導により帯電した状態となる。
(5)コロナ放電は、接地した尖った導体が金属帯電物体に近づくときなどに起こる放電であり、放電エネルギーが小さいため水素でも着火することはない。

※ イメージ図(©photoAC)
このページは、2024年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。
他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。
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2024年度(令和06年度) | 問20 | 難易度 | 試験場で問題文の意味を考えることで正答は可能。正答率は低いが、なんとしても正答しておきたい。 |
---|---|---|---|
静電気 | 5 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問20 静電気に隠する次の記述のうち、適切なものはどれか。
(1)絶縁性粉体を輸送する配管の先端近くに、接地した金網を粉体の吹き出し方向と垂直に取り付けると、絶縁性粉体の静電気帯電を除去する方法として有効である。
(2)絶縁性物体を、接地した導電性物体と電気的に接続すると、絶縁性物体の静電気帯電を防止することができる。
(3)二つの異なる物体を摩擦したときの帯電量は、帯電列の中の位置が離れているほど小さくなる傾向がある。
(4)帯電物体の近くに接地不良になった導体があると、その導体は静電誘導により帯電した状態となる。
(5)コロナ放電は、接地した尖った導体が金属帯電物体に近づくときなどに起こる放電であり、放電エネルギーが小さいため水素でも着火することはない。
正答(4)
【解説】
静電気に特化した問題は、当サイトが解説を載せている 2012 年度以降ではこれまでは 2023 年の問 20 しかなかった。2年続けての出題である。
今後もこの傾向は続く可能性は否定できない。静電気の分野についても学習しておく必要がありそうだ。ただ、爆発・火災防止対策として、個々の肢に静電気に関する問題が出題されたことはあり、過去問はかなりある。
また、内容もかなり基本的なものであり、安全関係の基本的な参考書に書かれているレベルのことである。

(1)適切ではない。崔(※)によると、「粉体空気輸送設備において粉体の静電気(帯電)を除去するため、図1のように、輸送配管の投入口およびその先に金網を取り付けることがあります。これは、輸送物体の静電気防止対策にならないことがあります。むしろ、金網との摩擦により静電気(帯電)を増加させることが多いので注意が必要です
」とされている。
※ 崔光石「過信は禁物! 静電気対策」(安衛研ニュース No.123 2019年2月)
図も、崔光石の同じサイトから引用(小さなデバイスではタップで拡大)。
常識的に考えても、粉じんが網に触れなければ意味はないし、網に触れたとしても崔が指摘するように、かえって帯電する結果となることが予想されよう。帯電防止としてはほとんど意味はない。
(2)適切ではない。絶縁性物体では電流が流れにくいため、接地した導電性物体と電気的に接続しても(接地しても)、絶縁性物体の静電気帯電の防止には役立たない。
絶縁性物体の帯電を防止する方法としては、静電気そのものの発生を防止したり、絶縁性物体に導電性の材料を練り込むなどにより導電性を持たせたり、気中の湿度を高めるなどの方法がある。
(3)適切ではない。二つの異なる物体を摩擦したときに発生する帯電の量は、帯電列の中の位置が離れているほど大きくなる傾向がある(※)。現実には、物質の導電率が大きいと電荷が逃散してしまうなどの理由で、必ずしも帯電列の位置が離れているからといって、帯電量が多くなるわけではない。なお、同じ物質同士であっても、帯電は起きるので誤解のないようにすること。
※ 帯電量は、両物質の帯電列での位置関係のみならず、それぞれの物質の導電性や誘電性にもよる。なお、帯電においては、物質内部における性質のみならず、その表面のものが重要な意味を持つ。(葛西昭成「帯電測定値に及ぼす諸因子」(高分子 Vol.16 No.179)など参照)
(4)適切である。帯電物体の近くに接地不良になった導体があると、その導体は静電誘導により帯電した状態となる。従って、静電気対策の基本の一つは導体の接地となる。
(5)適切ではない。コロナ放電は、接地した尖った導体が金属帯電物体に近づくときなどに起こる放電であり、放電エネルギーが小さい(数十μJまで)ことは正しい。
しかし、水素の最小着火エネルギーは極めて低く、コロナ放電でも着火する可能性はある(山隈(※)など)。
※ 山隈瑞樹「水素の静電気感度」(安全工学 Vol.44 No.6 2005年)