労働安全コンサルタント試験 2024年 産業安全一般 問16

丸のこ盤の安全装置などの点検




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2024年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2024年度(令和06年度) 問16 難易度 過去問にないタイプの問題である。あまりにも細かな内容だからか、正答率はきわめて低い。
安全装置の点検  5 

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問16 丸のこ盤の安全装置などの点検に関する次の文中の空欄 A  C に当てはまる語句として、適切なものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

  A の固定の確実さの点検は、電源スイッチを切るなど、丸のこ盤が不意に起動しないための措置を施した後、 A の先端を手で揺すり、固定の確実さを触感により調べる。

  B の作動の円滑さ及び確実さの点検は、丸のこを取り付けない状態で電源スイッチを切るなど、丸のこ盤が不意に起動しないための措置を施した後、加工材を用いて模擬加工を行い、作動の円滑さ及び確実さを目視及び触感により調べる。

  C の昇降の円滑さ、確実さ及び固定の確実さの点検は、丸のこを取り付けない状態で電源スイッチを切るなど、丸のこ盤が不意に起動しないための措置を施した後、 C の調整ねじを緩め、手で C を昇降させ、昇降の円滑さを触感により調べる。

(1) 回転部分の覆い   可動式の歯の接触予防装置   テーブル昇降装置
(2) 回転部分の覆い   テーブル昇降装置   固定式の歯の接触予防装置
(3) 固定式の歯の接触予防装置   回転部分の覆い   テーブル昇降装置
(4) 割刃   回転部分の覆い   可動式の歯の接触予防装置
(5) 割刃   可動式の歯の接触予防装置   固定式の歯の接触予防装置

正答(5)

【解説】

問16試験結果

試験解答状況
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本問は、「丸のこ盤の構造、使用等に関する安全上のガイドライン(平成 10 年9月1日基発第 521 号)」の第1の4の(2)の別添「丸のこ盤の点検基準」(以下「点検基準」という。)(※)からの問題である。

※ 点検基準は、本問の解説に必要な範囲で、本ページの末尾に転載している。

このガイドラインは、一般に知られているものではなく、しかもその中でもかなり細かな内容の出題である。さらに誤った肢に、いかにもそれらしい言葉が用いられていることもあって、正答者はほとんどいなかった。

このような問題の出題は、試験協会の立場としても好ましいものではないだろう。おそらく、次年度以降は、この種の設問では出題しないのではないかと思われる。

【Aについて】

点検基準によると、割刃の固定の確実さの点検は「電源スイッチを切るなど、丸のこ盤が不意に起動しないための措置を施した後、割刃の先端を手で揺すり固定の確実さを触感により調べる」こととされている。従って A は【割刃】である。

割刃

図をクリックすると拡大します(©photoAC)

割刃とは、図の丸のこの奥にある赤い楔形の部分のことである。比較的大型の材料を丸のこで切断するとき、材料は切断されるにつれて丸のこの奥側に移動することになる。2つに割れた材料が、丸のこの奥側を両側から挟むと、丸のこの奥側は手前に向って高速で動いているので、材料が手前に向って反ぱつ(キックバック)したり押し返されたりすることがある。これを防止するための装置が割刃である。

割刃の厚さは、丸のこの厚さの 1.1 倍以上あり、割刃が材料を広げて、刃に接触しないようになっている(※)。割刃が本来の役割を果たすためには、確実に固定されている必要がある。そこで、確実に取り付けられていることを、電源スイッチを切った状態で手でゆすって確認するわけである。

※ 切断された材料の間隔を広げる(割る)ので割刃と呼ぶのである。なお、本問の正誤とは無関係だが、割刃があるために材料を切断するときの抵抗が増えるので、押す力を増す必要がある。このため、それを嫌がって外されてしまうことがあるので、実務のパトロールなどでは留意する必要がある。

なお、次の動画は意図的に反ぱつを起こしているが、その恐ろしさが感じられる(音が出ます)。

なお、割刃とは反ぱつ予防装置であって、歯の接触予防装置とは全く別なもので、役割も異なる。この点、誤解のないようにしたい。

木材加工用丸のこ盤並びにその反ぱつ予防装置及び歯の接触予防装置の構造規格

(割刃及び歯の接触予防装置の取付け方法)

第6条 木材加工用丸のこ盤は、反ぱつ予防装置として設ける割刃(以下「割刃」という。)及び歯の接触予防装置が、それらの縦断面の縦方向の中心線を含みそれらの側面と平行な面と丸のこの縦断面の縦方向の中心線を含みその側面に平行な面とが常に同一の平面上にあるように取り付けられているものでなければならない。

 木材加工用丸のこ盤は、割刃が対面する丸のこの歯の先端との間げきが12ミリメートル以内となるように取り付けられているものでなければならない。

(厚さ)

第18条 割刃の厚さは、丸のこの厚さの1.1倍以上でなければならない。

【Bについて】

点検基準によると、歯の接触予防装置(可動式)の作動の円滑さ及び確実さの点検は「丸のこを取り付けない状態で電源スイッチを切るなど、丸のこ盤が不意に起動しないための措置を施した後、加工材を用いて模擬加工を行い、作動の円滑さ及び確実さを目視及び触感により調べる」こととされている。従って B には【可動式の歯の接触予防装置】が入る。

歯の接触予防装置(可動式)

図をクリックすると拡大します(©photoAC)

ここに、歯の接触予防装置とは、図の丸のこを覆う赤いカバーのような部分のことである。作業者の手が刃に触れないようにするためのカバーだと考えればよい。

しかし、刃を完全に覆ってしまうと作業ができなくなるので、接触予防装置と作業台の上には一定のすき間を開ける必要がある。このすき間を開ける方式には可動式のものと固定式のものの2種類がある。

可動式のもの(構造規格第 27 条第1項)は、材料によって接触予防装置と作業台の間のすき間を広げるような方式となっている(図)。一方、固定式のもの(構造規格第 27 条第2項)はすき間を固定して開けておくが、すき間の間隔は調節できるようになっている。

そこで、可動式の接触予防装置の点検では、材料を丸のこに近付けて、接触予防装置がスムーズに上下することを確認するのである。

【木材加工用丸のこ盤並びにその反ぱつ予防装置及び歯の接触予防装置の構造規格】

(構造)

第27条 歯の接触予防装置(携帯用丸のこ盤に使用されるものを除く。以下この条及び第29条において同じ。)で可動式のもの(そのおおいの下端が送給する加工材に常に接触する方式のものをいう。以下同じ。)のおおいは、歯のうち割刃に対面している部分及び加工材を切断している部分以外の部分をおおうことのできる構造のものでなければならない。

 前項の歯の接触予防装置以外の歯の接触予防装置のおおいは、歯のうち割刃に対面している部分及び送給する加工材の上面から8ミリメートルまでの部分以外の部分をおおうことができ、かつ、その下端をテーブル面から25ミリメートルをこえる高さに調節して使用することができない構造のものでなければならない。

 歯の接触予防装置の支持部の軸及びボルトは、ゆるみ止め又は抜け止めが施されているものでなければならない。

【Cについて】

点検基準によると、歯の接触予防装置(固定式)の昇降の円滑さ、確実さ及び固定の確実さは、「丸のこを取り付けない状態で電源スイッチを切るなど、丸のこ盤が不意に起動しないための措置を施した後、歯の接触予防装置の調整ねじを緩め、手で歯の接触予防装置を昇降させ、昇降の円滑さを触感により調べる」とされている。従って C には【固定式の歯の接触予防装置】が入る。

従って(5)が正答となる。

【丸のこ盤の点検基準】

第1 丸のこ盤(携帯用丸のこ及び可搬式丸のこ盤を除く)の構造、使用等に関する安全上のガイドライン

4 点検等に関する基準

(2)点検項目等

  日常点検又は定期点検を行う際の点検項目、点検方法、判定基準及び異常を認めたときの措置については、別添の点検基準によること。

別添

丸のこ盤の点検基準

検査項目 点検方法 判定基準 異常を認めたときの措置 点検時期
日常 定期

1 割刃

1 固定の確実さ

電源スイッチを切るなど、丸のこ盤が不意に起動しないための措置を施した後、割刃の先端を手で揺すり固定の確実さを触感により調べる。 (略) (略)
(略) (略) (略) (略) (略) (略)
2及び3(略) (略) (略) (略) (略) (略) (略)

4 歯の接触予防装置

固定式

1 昇降の円滑さ、確実さ及び固定の確実さ

丸のこを取り付けない状態で電源スイッチを切るなど、丸のこ盤が不意に起動しないための措置を施した後、歯の接触予防装置の調整ねじを緩め、手で歯の接触予防装置を昇降させ、昇降の円滑さを触感により調べる。 (略) (略)
(略) (略) (略) (略) (略) (略)
可動式

1 作動の円滑さ及び確実さ

丸のこを取り付けない状態で電源スイッチを切るなど、丸のこ盤が不意に起動しないための措置を施した後、加工材を用いて模擬加工を行い、作動の円滑さ及び確実さを目視及び触感により調べる。 (略) (略) (略) (略)
(略) (略) (略) (略) (略) (略)
5~22(略) (略) (略) (略) (略) (略) (略)
※ 「丸のこ盤の構造、使用等に関する安全上のガイドライン」(平成 10 年9月1日基発第 521 号)