労働安全コンサルタント試験 2024年 産業安全一般 問15

温度センサー




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2024年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

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2024年度(令和06年度) 問15 難易度 温度センサーに関する詳細な知識問題。一般的な知識では正答は困難だろう。
各種温度センサーの特性  5 

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問15 温度センサーに関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)熱電対は、2種類の金属を一端で接合したとき、接合端と開端の間にある温度差によって生じる起電力を用いて、温度を測定するものである。

(2)サーミスタは、温度により電気抵抗が大きく変化する素子で、温度が上がると抵抗値が上がるタイプのものと温度が上がると抵抗値が下がるタイプのものがある。

(3)測温抵抗体は、金属等の電気抵抗が温度によって変化する性質を利用して混度を測定するものである。

(4)放射温度計は、物質が放射する赤外線のエネルギーを測定することで温度を測定する非接触式の温度計であるが、急速な温度上昇の測定には不向きである。

(5)白金測温抵抗体は、熱電対やサーミスタと比較して精度が高く、使用温度範囲も広い。

正答(4)

【解説】

問15試験結果

試験解答状況
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(1)適切である。熱電対はゼーベック効果を利用して温度測定を行う素子で、測定可能な温度範囲が広く、液体封入ガラス管温度計などでは測定が困難な高温や低温の温度の測定も可能である。

※ ゼーベック効果とは、2種類の線状の金属の両端をそれぞれ接続して閉回路とし、2か所の接続した両端に温度差を加えると熱起電力が発生するという現象である。

(2)適切である。サーミスタ(Thermistor:thermally sensitive resistor の略称)とは、温度によって電気抵抗が変化する半導体を利用して温度を測定する素子である。

サーミスタには PTC(Positive Temperature Coefficient)という電気抵抗が温度に対して正の相関を有するタイプと、NTC(Negative Temperature Coefficient:JIS C 2570-1:2015JIS C 2570-2:2021)という温度に対して負の相関をもつタイプがある。

なお、一般に、熱電対と比較して、とりわけ低温域での精度が高いという特性がある。

(3)適切である。測温抵抗体(RTD:Resistance Temperature Detector)は、(2)のサーミスタとは異なり、金属又は金属酸化物の電気抵抗が温度に対して正の係数を有することを利用して温度を測定する素子である(※)。測温抵抗のための素子としては、一般には白金が用いられることが多い。白金の他には、ニッケル、銅なども用いられるが、白金以外では JIS は定められていない。。

※ JIS C 1604:2013「測温抵抗体」は、白金測温抵抗体について定められているが、「抵抗素子、内部導線、絶縁物、保護管、端子などからなる白金測温体。ただし,分離できる保護管及びサーモウエルは含まない」とされている。

(4)適切ではない。放射温度計は、接触式温度計に比べて応答時間(温度測定の速度)が速い(おおむね1秒以内に計測可能)という特徴がある。従って、急速な温度上昇の測定にも適している(※)

※ 接触式温度計では、測定対象物の温度が変化したとき、センサーが測定対象物の温度と等しくなるには、熱量が測定対象物とセンサーの間で移動しなければならない。測定対象物とセンサーの間の熱抵抗をいくら小さくしても熱量の移動にはある程度の時間がかかるので、測定対象物の急激な温度変化に対応することは困難な面がある。なお、サーミスタや測温抵抗体のセンサーそのものは、温度変化に対して急激な抵抗値変化がある。

これに対して、放射温度計では熱の移動を必要としないので、測定対象物の急激な温度変化にも対応が可能なのである。

(5)適切であるとしておく。白金測温抵抗体は、熱電対やサーミスタと比較して精度が高いことは正しい。しかし、使用温度範囲はサーミスタよりは広いが、一般に熱電対よりは狭い。

【電気式温度センサの使用範囲】

温度センサー 使用範囲(安定性)
株式会社ニッポー 服部晋
白金測温抵抗体 −200℃+650℃ −260℃+1,000℃(±0.001~±0.01℃)
熱電対 −200℃+1,600℃ −200℃+1,400℃(測定温度の±0.1〜±0.2%)
サーミスタ −50℃+300℃程度 −50℃+350℃(測定温度の±0.3〜±1.5%)

※ 株式会社ニッポー「温度センサの種類と仕組み」の情報 及び 服部晋「温度はどうすれば正しく測れるか」(化学教育 Vol.25 Mo.1)の「表1 温度計の種類と性能およびその特徴」中の数値を筆者においてまとめたもの

とはいえ、(4)が明らかに誤っているので、こちらは適切であるとしておく。