労働安全コンサルタント試験 2024年 産業安全一般 問14

移動式クレーンの定期自主検査指針




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2024年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2024年度(令和06年度) 問14 難易度 移動式クレーンの点検に関する問題。やや詳細な内容もあるが、正答率は高い。確実に正答しておきたい。
移動式クレーン  4 

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問14 厚生労働省の「移動式クレーンの定期自主検査指針」における移動式クレーンの安全装置の検査方法に関する次のイ~ニの記述について、適切なもののみを全て挙げたものは(1)~(5)のうちどれか。

イ 過負荷防止装置の作動の検査は、定格荷重の 110% の試験荷重をつり上げてジブを徐々に起こしていき、装置が作動したときのジブ傾斜角度からその精度を調べる。

ロ ジブ角度計の作動の検査は、ジブの傾斜角度を水準器付き角度計で測定し、そのときの角度計の指度の誤差を読み取り、精度を調べる。

ハ 巻過防止装置及び巻過ぎを防止するための警報装置の作動の検査は、装置の電源スイッチを ON にし、フックその他のつり具が重すいに接触するまで巻き上げ、装置が作動したときの制限寸法が正常な範囲にあるかどうか、作動を3回以上行って調べる。

ニ 起伏制限装置の作動の検査は、ジブを当該移動式クレーンの最大ジブ傾斜角まで起こして、制限装置の作動に異常がないかどうかを調べる。

(1)イ  ロ  ハ  ニ

(2)イ  ロ  ハ

(3)イ  ロ  ニ

(4)ロ  ハ  ニ

(5)ハ  ニ

正答(4)

【解説】

問14試験結果

試験解答状況
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本問は、厚生労働省「移動式クレーンの定期自主検査指針(昭和 56 年 12 月 28 日自主検査指針公示第1号)」(以下「指針」という。)からの出題である。

個別の定期自主検査指針そのものが独立した問題として出題されることは、当サイトに解説を載せている2012年度以降では例がないにもかかわらず、正答率はかなり高かった。受験者の多くが、指針の内容を熟知しているということであろう。

イ 適切ではない。指針の「5.1.4 過負荷防止装置」によれば、作動の検査は「試験荷重を定格荷重の範囲内でつり上げた後、ジブを徐々に倒してゆき、装置が作動したときのジブ傾斜角度と当該移動式クレーンの定格荷重曲線によるジブ傾斜角度とを対比して、精度を調べる」とされている。

移動式クレーンの定格荷重とは、実際につることができる荷重のことである。定格荷重は、車体やジブなどの構造や材料にもよるが、ジブの長さと傾斜角の変化に応じて変化する。そして、ジブを起こせば(回転半径を小さくすれば)定格荷重は増加するのだ。

そのことさえ分かっていれば、「定格荷重の 110% の試験荷重をつり上げてジブを徐々に起こしていき、装置が作動」するなどということが、あり得ないことだと分かるであろう(※)

※ 最近のクレーンは、小型移動式クレーンの一部を除けば、過負荷防止装置を外さない限り、定格荷重の 110% の試験荷重をつり上げることがそもそも不可能である。仮にできたとしても、ジブの起こしは安全側への操作なので、(起こし操作は可能だが)ジブを起こしていったときに、それまで働いていなかった過負荷防止装置がある角度まで起こしたところで働くということはあり得ない。

【移動式クレーンの定期自主検査指針】

5 安全装置

5.1 安全装置

検査項目 検査方法 判定基準
(略) (略) (略) (略)

5.1.4 過負荷防止装置

(1)作動 試験荷重を定格荷重の範囲内でつり上げた後、ジブを徐々に倒してゆき、装置が作動したときのジブ傾斜角度と当該移動式クレーンの定格荷重曲線によるジブ傾斜角度とを対比して、精度を調べる。 (略)
(略)
(2)~(8)(略) (略) (略)
(略) (略) (略) (略)
※ 厚生労働省「移動式クレーンの定期自主検査指針」(昭和 56 年 12 月 28 日自主検査指針公示第1号)

ロ 適切である。指針の「5.1.3 ジブ角度計」の(1)によれば、ジブ角度計の作動の検査は、ジブの傾斜角度を水準器付き角度計で測定し、そのときの角度計の指度の誤差を読み取り、精度を調べることとされている。

【移動式クレーンの定期自主検査指針】

5 安全装置

5.1 安全装置

検査項目 検査方法 判定基準
(略) (略) (略) (略)

5.1.3 ジブ角度計

(1)作動 ジブの傾斜角度を水準器付き角度計で測定し、そのときの角度計の指度の誤差を読みとり、精度を調べる。
(略)
(2)~(6)(略) (略) (略)
(略) (略) (略) (略)
※ 厚生労働省「移動式クレーンの定期自主検査指針」(昭和 56 年 12 月 28 日自主検査指針公示第1号)

ハ 適切である。指針の「5.1.1 巻過防止装置及び巻過ぎを防止するための警報装置」の(1)に巻過防止装置及び巻過ぎを防止するための警報装置の作動の検査は、装置の電源スイッチを ON にし、フックその他のつり具が重すいに接触するまで巻き上げ、装置が作動したときの制限寸法が正常な範囲にあるかどうか、作動を3回以上行って調べるとされている。

【移動式クレーンの定期自主検査指針】

5 安全装置

5.1 安全装置

検査項目 検査方法 判定基準
(略) (略) (略) (略)

5.1.1 巻過防止装置及び巻過ぎを防止するための警報装置

過巻防止装置
(1)作動

[1]装置の電源スイッチをONにし、フックその他のつり具が重錘に接触するまで巻き上げ、装置が正常に作動するかどうかを調べる。

(略)
(略) (略)

[3]作動は、3回以上行う。

(略)
(2)~(6)(略) (略) (略)
※ 厚生労働省「移動式クレーンの定期自主検査指針」(昭和 56 年 12 月 28 日自主検査指針公示第1号)

※ 図はクリックすると拡大します。

ニ 適切である。指針の「5.1.7 起伏制限装置の作動」の(1)に起伏制限装置の作動の検査は、ジブを当該移動式クレーンの最大ジブ傾斜角まで起こして、制限装置の作動に異常がないかどうかを調べるとされている。

【移動式クレーンの定期自主検査指針】

5 安全装置

5.1 安全装置

検査項目 検査方法 判定基準
(略) (略) (略) (略)

5.1.7 起伏制限装置

(1)作動 ジブを当該移動式クレーンの最大ジブ傾斜角まで起こして、制限装置の作動に異常がないかどうかを調べる。 (略)
(2)~(9)(略) (略) (略)
(略) (略) (略) (略)
※ 厚生労働省「移動式クレーンの定期自主検査指針」(昭和 56 年 12 月 28 日自主検査指針公示第1号)