労働安全コンサルタント試験 2024年 産業安全一般 問13

設備や構造物の強度計算




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2024年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

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2024年度(令和06年度) 問13 難易度 構造力学の問題は、過去問も多く基本的な事項を理解していれば正答可能。ぜひとも正答しておきたい。
設備や構造物の強度計算  5 

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問13 設備や構造物の強度計算に関する次のイ~ニの記述について、適切でないものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

イ オイラー式によれば、長柱の弾性座屈荷重は、材料の曲げ剛性に比例し、座屈長さの二乗に反比例する。

ロ 鋼棒が軸方向に引張力を受け、その断面に比例限度内の一様な引張応カが生じているときの引張ひずみは、引張応カに鋼材のヤング係数(縦弾性係数)を乗じて求める。

ハ ボルトで重ね継ぎされた鋼板の引張強度の計算においては、通常、鋼板に作用する引張力をボルト穴部分を含めた鋼板の総断面積で除して引張応力を求める。

ニ 長さ方向に一様な断面を有するはりの曲げ強度の計算においては、梁に作用する曲げモーメントの最大値を求め、これを梁の断面係数で除して曲げ応力の最大値を求める。

(1)イ  ロ

(2)イ  ハ

(3)イ  ニ

(4)ロ  ハ

(5)ロ  ニ

正答(4)

【解説】

問13試験結果

試験解答状況
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構造力学に関する設問は、過去問においても頻出事項である。解答は(2)と(4)に分かれた。要は、イとロで迷った受験者が多かったということである(※)

※ ハは過去問で出題されたことのない設問だが、あまり迷った受験者はいなかったようである。

しかし、ロは、単純なフックの法則の説明であり、構造力学としては基本的な内容である。また、過去問を学習していれば自然に理解できる内容である。

構造力学に関する問題は、本問を含めて過去問をきちんと理解していれば正答できるのである。合格のためには、確実に正答しておきたい分野である。

イ 適切である。オイラーの式とは、軸方向に圧縮荷重を受ける一様断面の柱の弾性座屈(オイラー座屈)の座屈荷重(※)を求める公式である。

※ 座屈とは、物体に力を加えていったとき、限度を超えたある時点で急激に変形してしまう現象のことであり、座屈荷重とはそのときの荷重である。

オイラーの式では、この場合の座屈荷重 Pcr は、次式で表される。

Pcr=nπ2EIl2 =π2EIl' 2

E : 縦弾性係数
I : 断面二次モーメント
l : 柱の長さ
l'=ln : 座屈長さ
n : 端末条件係数

ロ 適切ではない。鋼棒が軸方向に引張力を受け、その断面に比例限度内の一様な引張応カが生じているときの引張ひずみは、引張応カを鋼材のヤング係数(縦弾性係数)で除して求める。

ε=σE

ε : 引張ひずみ
σ : 引張応力(MPa)
E : ヤング係数(MPa)

ハ 適切ではない。あり得ないことである。例えば、JIS B 8821:2013「クレーン鋼構造部分の計算基準」においても、引張強度の計算においては、作用する引張力をボルト穴を除いた有効な純断面積で除して引張応力を求めることとされている。

ボルト穴の面積を含めて計算したのでは、応力が実際よりも小さく計算されるので危険である。

【JIS B 8821:2013】

8 強度設計

8.2 引張材の計算

  引張応力は,ボルト穴を除いた有効な純断面積で式(1)によって計算する。

σt=NAnσta・・・・・

σt : 引張応力(N/mm2
An : 純断面積(mm2
N : 軸方向引張力(N)
σta : 箇条7による許容引張応力(N/mm2

  なお、時間の周期的な関数として応力の値が変化する交番応力を受ける場合には、箇条10に示す疲れ強さを検討する。

  引張材の有効な純断面積を求めるには,ボルトの位置によって適切にボルト穴を減じなければならない。

  (以下略)

※ 日本工業規格「クレーン鋼構造部分の計算基準」(JIS B 8821:2013)

ニ 適切である。長さ方向に一様な断面を有する梁では、曲げモーメントの最大値を断面係数で除すことにより、梁に生じる最大の曲げ応力の値を求めることができる。

σmax=MmaxZ

σmax : 最大の曲げ応力
Mmax : 曲げモーメントの最大値
Z : 断面係数