労働安全コンサルタント試験 2024年 産業安全一般 問09

エイジフリーガイドライン




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 このページは、2024年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

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2024年度(令和06年度) 問09 難易度 高年齢者ガイドラインに関する基本的な内容。このレベルの問題は確実に正答できなければならない。
高年齢労働者  2 

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問9 厚生労働省の「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」の内容関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)視カや明暗の差への対応力が加齢により低下することを前提に、通路の照度を確保する。

(2)ロコモティブシンドロームとは、加齢とともに、筋力や認知機能等の心身の活力が低下し、生活機能障害や要介護状態等の危険性が高くなった状態である。

(3)高年齢労働者が、職場で気付いた労働安全衛生に関するリスクや働く上で負担に感じている事項、自身の不調等を相談できるよう、企業内相談窓口を設置する。

(4)健康状況や体力が低下することに伴う高年齢労働者の特性や課題を想定し、リスクアセスメントを実施する。

(5)加齢による心身の衰えについての高年齢労働者の気付きを促すため、フレイルチェックを導入する。

正答(2)

【解説】

問9試験結果

試験解答状況
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本問は、問題文にもあるように「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン令和2年3月 16 日基安発 0316 第1号)」(以下「ガイドライン」という。)に関する問いである。なお、ガイドラインの報道発表概要にも目を通しておくとよい。

ガイドラインの内容を知らなかったとしても、(1)、(3)、(4)及び(5)は、高年齢労働者の労働災害防止に有用なことである。それであれば、ガイドラインの内容として適切であるとしてよい。実際にこれらを選んだ受験者はほとんどいなかった。

仮に、高年齢者の労働災害防止に有効なことがガイドラインの内容になっていないとすれば、ガイドラインの内容に不備があるということであり、そのようなことを厚生労働省の所管する試験の問題として出すわけがないのである。

(1)適切である。ガイドラインの第2の2の(1)の共通事項の最初の項目に、「視カや明暗の差への対応力が加齢により低下することを前提に、通路の照度を確保する」ことが挙げられている。

【高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン】

第2 事業者に求められる事項

2 職場環境の改善

(1)身体機能の低下を補う設備・装置の導入(主としてハード面の対策)

<共通的な事項>

 視力や明暗の差への対応力が低下することを前提に、通路を含めた作業場所の照度を確保するとともに、照度が極端に変化する場所や作業の解消を図ること。

※ 厚生労働省「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(令和2年3月 16 日基安発 0316 第1号)

(2)適切ではない。ガイドラインにも記されているが、ロコモティブシンドロームとは「年齢とともに骨や関節、筋肉等運動器の衰えが原因で「立つ」、「歩く」といった機能(移動機能)が低下している状態のこと」である。

本肢の「加齢とともに、筋力や認知機能等の心身の活力が低下し、生活機能障害や要介護状態等の危険性が高くなった状態」はフレイルの説明である。

【高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン】

第2 事業者に求められる事項

1 安全衛生管理体制の確立等

(2)危険源の特定等のリスクアセスメントの実施

  (前段 略)

  これらの事項を実施するに当たっては、以下の点を考慮すること。

 高年齢労働者の状況に応じ、フレイルやロコモティブシンドロームについても考慮する必要があること。

  なお、フレイルとは、加齢とともに、筋力や認知機能等の心身の活力が低下し、生活機能障害や要介護状態等の危険性が高くなった状態であり、ロコモティブシンドロームとは、年齢とともに骨や関節、筋肉等運動器の衰えが原因で「立つ」、「歩く」といった機能(移動機能)が低下している状態のことをいうこと。

※ 厚生労働省「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(令和2年3月 16 日基安発 0316 第1号)

(3)適切である。ガイドラインの第2の1の(1)に、高年齢労働者が、職場で気付いた労働安全衛生に関するリスクや働く上で負担に感じている事項、自身の不調等を相談できるよう、企業内相談窓口を設置することとされている。

【高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン】

第2 事業者に求められる事項

1 安全衛生管理体制の確立等

(1)経営トップによる方針表明及び体制整備

  高齢者労働災害防止対策を組織的かつ継続的に実施するため、次の事項に取り組むこと。

ア~エ (略)

  これらの事項を実施するに当たっては、以下の点を考慮すること。

 高年齢労働者が、職場で気付いた労働安全衛生に関するリスクや働く上で負担に感じている事項、自身の不調等を相談できるよう、企業内相談窓口を設置することや、高年齢労働者が孤立することなくチームに溶け込んで何でも話せる風通しの良い職場風土づくりが効果的であること。

※ 厚生労働省「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(令和2年3月 16 日基安発 0316 第1号)

(4)適切である。ガイドラインの第2の1の(2)に、健康状況や体力が低下することに伴う高年齢労働者の特性や課題を想定し、リスクアセスメントを実施することとされている。

【高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン】

第2 事業者に求められる事項

1 安全衛生管理体制の確立等

(2)危険源の特定等のリスクアセスメントの実施

  (前段 略)

  これらの事項を実施するに当たっては、以下の点を考慮すること。

 健康状況や体力が低下することに伴う高年齢労働者の特性や課題を想定し、リスクアセスメントを実施すること。

※ 厚生労働省「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(令和2年3月 16 日基安発 0316 第1号)

(5)適切である。ガイドラインの第2の3の(2)に、加齢による心身の衰えについての高年齢労働者の気付きを促すため、フレイルチェックを導入するとされている。

【高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン】

第2 事業者に求められる事項

3 高年齢労働者の健康や体力の状況の把握

(2)体力の状況の把握

  (前段 略)

  具体的な体力チェックの方法として次のようなものが挙げられること。

 労働者の気付きを促すため、加齢による心身の衰えのチェック項目(フレイルチェック)等を導入すること。

※ 厚生労働省「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(令和2年3月 16 日基安発 0316 第1号)