問7 はい作業に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)箱物の荷をパレットに積み付ける方法には、ブロック積み、交互列積み、ピンホイール積みなどがある。
(2)段ボール箱の強度は、水分や湿気及び経時日数の増加により低下するので、床に直置きしないなどの配慮が必要である。
(3)プラスチックコンテナは、積重ねストッパリブがついており、ブロック積みとなるので、荷割れを防ぐために上部をPPバンド(ポリプロピレン製バンド)などで結束する必要がある。
(4)フレコンパッグのはい積みは、原則として、2段積み以下とし、目落とし積み(ひな段積み)とする。
(5)パレットに積み付けた箱物の荷の荷崩れ防止対策のうち、水平バンド掛け方式では、垂直振動による跳ね上がりは押さえるが水平方向の衝撃に弱い。

※ イメージ図(©photoAC)
このページは、2024年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。
他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。
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2024年度(令和06年度) | 問07 | 難易度 | はい作業に関する問題。やや意味不明な肢もあるが正答率は高い。 |
---|---|---|---|
はい作業の安全 | 2 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問7 はい作業に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)箱物の荷をパレットに積み付ける方法には、ブロック積み、交互列積み、ピンホイール積みなどがある。
(2)段ボール箱の強度は、水分や湿気及び経時日数の増加により低下するので、床に直置きしないなどの配慮が必要である。
(3)プラスチックコンテナは、積重ねストッパリブがついており、ブロック積みとなるので、荷割れを防ぐために上部をPPバンド(ポリプロピレン製バンド)などで結束する必要がある。
(4)フレコンパッグのはい積みは、原則として、2段積み以下とし、目落とし積み(ひな段積み)とする。
(5)パレットに積み付けた箱物の荷の荷崩れ防止対策のうち、水平バンド掛け方式では、垂直振動による跳ね上がりは押さえるが水平方向の衝撃に弱い。
正答(5)
【解説】
はいとは、「倉庫、上屋又は土場に積み重ねられた荷(小麦、大豆、鉱石等のばら物の荷を除く。)の集団
」(安衛令第6条第十二号)のことである。はい作業に関する問題が「産業安全一般」に出題されたのは、少なくともこのサイトで解説を掲示している 2012 年度以降では初めてである。
大手の企業では、はい上での作業は行われなくなっている傾向があるが、我が国全体では最近でもよく行われている。はい作業主任者技能講習の修了者は、ここ数年は、毎年1万数千名いるのである。その意味では、今後も出題される可能性は否定できない。
はい作業については、行政が指針やガイドラインの類を定めているわけではなく、学習用の資料も少ないため、学習しずらい分野ではある。しかし、一通りの知識は習得しておくべきだろう。もっとも、本問に関しては正答率はかなり高かった。
(1)適切である。箱物の荷をパレットに積み付ける方法には、ブロック積み、交互列積み、ピンホイール積みなどがある。なお、この他の積み付けの方法には、ダブルピンホール積み、レンガ積み、スプリット積み、窓積みなどがある。
※1 図は、厚生労働省「フォークリフト運転技能講習=補助テキスト」(技能講習補助教材)より引用
(2)適切である。段ボール箱に限らず、床に直置きすると、水分や湿気の影響を受ける。本肢は、床に直置きしないなどの配慮が必要であると言っているだけなので、不適切とする要素がない。本肢を選んだ受験者はいなかった。
(3)本問の各肢の中では(5)の方がより不適切なので、こちらは適切であるとしておく。まず、本肢のプラスチックコンテナとは、図(※2)のようなものである。図のような積重ねストッパリブが付いていることが多いので、ブロック積みをするしかない。
※2 図は、JIS Z 1655-1993「プラスチック製通い容器」より引用している。この種のプラスチックコンテナの上に人が乗るとは思えず、2メートル以上積み重ねたりすることもあまりないだろうから、はい作業としての規制はほとんど適用されないだろう。
本肢を誤りとした受験者は、すべてのプラスチックコンテナに積重ねストッパリブがついているとは限らないので誤りと考えたものであろう。その意味では、問題文がよくないといえる。
はい作業においては、荷割れとは、積み重ねた荷がずれて隣の荷の列との間に隙間ができることを意味する(※)。ブロック積みの場合、他の積み方に比較して荷割れを起こしやすいことは事実である。従って、状況によっては上部をPPバンド(ポリプロピレン製バンド)などで結束しておけば荷割れを防ぐことができる場合はあるだろう。
※ 運送業においては、荷割れ(Spirit delivery/口割れともいう)とは、「複数の荷物を同じ宛先に届けるときに、別々に届くこと」を意味する用語である。このような定義の定まっていない用語を試験に用いるのであれば、定義を示しておくべきだろう。
もっとも、先述したようにこの種のコンテナを積み上げた上に人が乗ることはまずないだろうし、それほど高く積み上げるとも思えない。「必要がある」とまで言い切れるかは疑問である。
(4)適切である。目落とし積みとは図にあるように、下段の4つの荷の中心に上段の荷が互い違いにくるように、ひな壇状に積み上げることである。フレコンバックで、はい積み、はい崩しをする作業についてのガイドラインや指針のようなものは公表されていない。しかし、災害事例「フレキシブルコンテナのはい山の荷崩れで荷の下敷きになり重傷」などを参照すれば、適切ではないとはいえないことが分かろう。
この災害事例では、フレコンバックの3段積みのはい作業で、はい崩れを起こしている。このはい付け作業では、「3段積みで1~2段目は背積みにし、3段目は荷崩れ防止対策としてパレット荷として、片側だけ目落としにして積み付けてあった
」ものである。
対策としては、「3段積み以上の際には、ポータブルラック等の適切な用具を使用して行い、用具等を使用しないときは、2段積み以下とし、2段目は完全な目落とし積みとする
」とされている(※)。
※ なお、はい作業で目落とし積みにするのは、フレコンバックに限られない。例えば「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について」(平成26年1月15日基発 0115 第4号)には原木等の積載に関して「木材が荷崩れしないような積み方(目落とし積み)をすること
」などとされている。
(5)適切ではない。おそらく(一社)日本労働安全衛生コンサルタント会「荷役ガイドラインによる荷役災害防止マニュアル」(2017年7月)からの出題であろう。
同マニュアルによると、水平バンド掛け方式は、水平方向の衝撃には強いが、垂直振動による跳ね上がりを押さえるには弱いとされている。本肢は、垂直バンド方式に関するものである。