労働安全コンサルタント試験 2024年 産業安全一般 問05

信頼性ブロック線図




問題文
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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2024年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2024年度(令和06年度) 問05 難易度 信頼性ブロック線図は、基本的な知識があれば必ず正答できる。確実に正答しておきたいところだ。
信頼性ブロック線図  5 

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問5 修理がなされない相互に独立な要素a、b及びcを用いて、下図の信頼性ブロック線図に示すようなシステム ①、② 及び ③ を構成する。これらの要素の不信頼度(要素がフォールト(故障状態)にある確率)がある時点、で全て等しい値q(ただし、0<q<l)をもつとき、この時点でのシステム ①、② 及び ③ の不信頼度Q1、Q2 及び Q3 に関する(1)~(5)の大小関係のうち、正しいものはどれか。

直列ブロック線図 並列ブロック線図 並列ブロック線図

システム①

システム②

システム③

(1)Q1=Q2<Q3

(2)Q1<Q2=Q3

(3)Q1>Q2>Q3

(4)Q1>Q2=Q3

(5)Q1=Q2>Q3

※ 幅の短いデバイスでは、図は横方向にスクロールします。

正答(5)

【解説】

問5試験結果

試験解答状況
図をクリックすると拡大します

ブロック線図に関する問題は、並列と直列を組み合わせた単純なものが出題される。本年度は、やや複雑なものが出題されたが、基本的に単純な内容でトリッキーな思考は要しない。

問題は、(例年のことではあるが、)同じ要素が複数現れていることである。なお、本サイトの解説の中では2012年の問5が最初の例で、2016年問62018年問52021年問5で、同じ要素が複数現れるものが出題されている。

この場合、同じ要素は当然、同じ動きをする(※)ので、これが複数あることで信頼性の計算がやや面倒になる。そこで、すべてのシステムについて似たような形にしてしまうと解きやすいのである。

※ これについては2012年の問5の解説を参照して欲しい。

ある要素が、直列につながったものや並列につながったものは、その要素単独で存在しているのと同じなので、同じ要素を消し去ることができる。そこで、同じ要素は単純な直列又は並列にすることを考えると分かりやすい。

まず、システム ① の下側の3つの要素は、a要素 ⇨ b要素とc要素 ⇨ b要素という2つのルートから成り立っているので、b要素を2つに分けても不信頼度は変わらない。そうするとシステム ① とシステム ② は全く同じものになってしまう(※)

※ a要素とc要素の前後が入れ替わっているところがあるが、前後が入れ替わっても不信頼度は変わらない。

直列ブロック線図 右矢印 並列ブロック線図

次にシステム ③ を考えてみよう。下側の4つの要素(下図の左側=c要素は2つある)は、b要素 ⇨ c要素、b要素 ⇨ a要素、c要素 ⇨ c要素及びc要素 ⇨ a要素という4つのルートがあるので、下中央図で表せる。

しかし、これは下右図と全く同じなのである。なぜなら、まず、c要素が正常の場合を考えよう。その場合は、c要素 ⇨ c要素というルートによって、このシステムは正常に作動する。従って、はかのルートはあってもなくても同じである。

次にc要素が故障した場合は、b要素 ⇨ c要素及びc要素 ⇨ a要素というルートは、c要素が故障している以上、働くことはない。従って、この2つのルートは、cが故障していても正常であっても、どちらにしても働かないのでなくても同じなのである。

従って、システム ③ の下側は、下右図と等価になる。

直列ブロック線図 右矢印 並列ブロック線図 右矢印 並列ブロック線図

その上で、システム ① からシステム ③ を比べてみよう。なお、システム ② はシステム ① と等価であるから、システム ① の図で置き換えている。

また、システム ③ はa要素 ⇨ b要素とb要素 ⇨ a要素という2つのルートがあるが、全く同じ動作をするので片方を削除している。また、c要素 ⇨ c要素というルートもc要素のみで表している。

直列ブロック線図 並列ブロック線図 並列ブロック線図

システム①

システム②

システム③

そうすると、違いは下側のルートにシステム ① 及びシステム ② はc要素にa要素とb要素が並列となったものが、c要素と直列に接続されているのであるから、信頼度はc要素単独のシステム ③ よりも低くなるであろう(※)

※ ここで、要素 a と要素 b の不信頼度をそれぞれQa、Qb とし、これらが互いに独立だとすると、これが並列につながっていれば全体の不信頼度Qは、

 Q=Qa × Qb

となり、直列に繋がっていれば

 Q=1-(1-Qa)×(1-Qb)

となる。複雑な系であってもこれらの組合せで全体のQを算出できる。

なお、信頼度Rの算出方法は、他の年の信頼性ブロック線図の解説も参照して欲しい。

従って、(5)のQ1=Q2>Q3が正答となる。

しかし、このように考えるまでもなく、試験の現場においては以下のように考えればよい。

システム ① とシステム ② を比較した場合、システム②の一番下のaとcの前後を入れ替えても不信頼度は変わらない。そうなると、システム①とシステム②が同じになることは容易に解るだろう。

次にシステム ② とシステム ③ を比較した場合、システム③はシステム②よりも迂回路が多くなるので、システム③の方が信頼度が高くなる(不信頼度が低くなる)ことも分かるだろう。