労働安全コンサルタント試験 2023年 産業安全関係法令 問09

ボイラによる労働災害の防止




問題文
トップ
受験勉強に打ち込む

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2023年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2023年度(令和05年度) 問09 難易度 ボイラに関するかなり細かな内容の知識問題である。専門家以外は棄て問でもよいか。
ボイラー災害の防止

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問9 特定機械等であるボイラーについて、事業者が講ずべき措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、正しいものはどれか。

(1)溶接部の厚さが40ミリメートル以下のボイラーの溶接の業務については、普通ボイラー溶接士免許を受けたものでなければ、当該業務に就かせてはならない。

(2)ボイラー室その他のボイラー設置場所に液体燃料を貯蔵するときは、これをボイラーの外側から1メートル以上離しておかなければならない。ただし、ボイラーが、厚さ100ミリメートル以上の金属以外の不燃性の材料で被覆されているときは、この限りでない。

(3)移動式ボイラーを除き、ボイラー明細書をボイラー室その他のボイラー設置場所の見やすい箇所に掲示しなければならない。

(4)ボイラー取扱作業主任者に、1日に1回以上水処理装置の機能を点検させなければならない。

(5)蒸気ボイラーの常用水位は、ガラス水面計又はこれに近接した位置に、現在水位と比較することができるように表示しなければならない。

正答(5)

【解説】

問9試験結果

試験解答状況
図をクリックすると拡大します

(1)誤り。ボイラ則第9条は、溶接部の厚さが 25 ミリメートル以下のボイラーの溶接の業務について、普通ボイラー溶接士免許を受けたものでもよいとしている。

しかし、25 ミリメートルを超える場合は、特別ボイラー溶接士免許を受けた者(特別ボイラー溶接士)でなければ、溶接の業務を行わせてはならない。従って「溶接部の厚さが40ミリメートル以下のボイラーの溶接の業務については、普通ボイラー溶接士免許を受けたものでなければ、当該業務に就かせてはならない」とする本肢は誤りである。

【労働安全衛生法】

(就業制限)

第61条 事業者は、クレーンの運転その他の業務で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の当該業務に係る免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う当該業務に係る技能講習を修了した者その他厚生労働省令で定める資格を有する者でなければ、当該業務に就かせてはならない。

2~4 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(就業制限に係る業務)

第20条 法第六十一条第一項の政令で定める業務は、次のとおりとする。

一及び二 (略)

 ボイラー(小型ボイラーを除く。)の取扱いの業務

 前号のボイラー又は第一種圧力容器(小型圧力容器を除く。)の溶接(自動溶接機による溶接、管(ボイラーにあつては、主蒸気管及び給水管を除く。)の周継手の溶接及び圧縮応力以外の応力を生じない部分の溶接を除く。)の業務

五~十六 (略)

【ボイラー及び圧力容器安全規則】

(就業制限)

第9条 事業者は、令第20条第四号の業務のうちボイラーの溶接の業務については特別ボイラー溶接士免許を受けた者(以下「特別ボイラー溶接士」という。)でなければ、当該業務につかせてはならない。ただし、溶接部の厚さが25ミリメートル以下の場合又は管台、フランジ等を取り付ける場合の溶接の業務については、普通ボイラー溶接士免許を受けた者(以下「普通ボイラー溶接士」という。)を当該業務につかせることができる

(2)誤り。ボイラ則第 21 条第2項は、ボイラー室その他のボイラー設置場所に液体燃料を貯蔵するときは、これをボイラーの外側から2メートル以上離しておかなければならない。ただし、ただし、ボイラーと燃料又は燃料タンクとの間に適当な障壁を設ける等防火のための措置を講じたときは、この限りでないとしている。

【ボイラー及び圧力容器安全規則】

(ボイラーと可燃物との距離)

第21条 事業者は、ボイラー、ボイラーに附設された金属製の煙突又は煙道(以下この項において「ボイラー等」という。)の外側から0.15メートル以内にある可燃性の物については、金属以外の不燃性の材料で被覆しなければならない。ただし、ボイラー等が、厚さ100ミリメートル以上の金属以外の不燃性の材料で被覆されているときは、この限りでない。

 事業者は、ボイラー室その他のボイラー設置場所に燃料を貯蔵するときは、これをボイラーの外側から2メートル(固体燃料にあつては、1.2メートル)以上離しておかなければならない。ただし、ボイラーと燃料又は燃料タンクとの間に適当な障壁を設ける等防火のための措置を講じたときは、この限りでない。

(3)誤り。ボイラー明細書をボイラー室その他のボイラー設置場所の見やすい箇所に掲示しなければならないとする規定はない。なお、ボイラ則第 66 条、同規則第 29 条(第一号及び第四号)参照。

【ボイラー及び圧力容器安全規則】

(ボイラー室の管理等)

第29条 事業者は、ボイラー室の管理等について、次の事項を行なわなければならない。

 ボイラー室その他のボイラー設置場所には、関係者以外の者がみだりに立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に掲示すること。

二及び三 (略)

 ボイラー検査証並びにボイラー取扱作業主任者の資格及び氏名をボイラー室その他のボイラー設置場所の見やすい箇所に掲示すること。

五及び六 (略)

(掲示等)

第66条 事業者は、第一種圧力容器取扱作業主任者の氏名を第一種圧力容器を設置している場所の見やすい箇所に掲示しなければならない。

 事業者は、移動式第一種圧力容器の管理に当たつては、第一種圧力容器検査証又はその写を第一種圧力容器取扱作業主任者に所持させなければならない。

(4)誤り。ボイラー取扱作業主任者に、1日に1回以上水処理装置の機能を点検させなければならないとする規定はない。なお、ボイラ則第 32 条第1項の表参照。

【ボイラー及び圧力容器安全規則】

(定期自主検査)

第32条 事業者は、ボイラーについて、その使用を開始した後、一月以内ごとに一回、定期に、次の表の上欄に掲げる項目ごとにそれぞれ同表の下欄に掲げる事項について自主検査を行なわなければならない。ただし、一月をこえる期間使用しないボイラーの当該使用しない期間においては、この限りでない。

項目 点検事項
ボイラー本体 損傷の有無
燃焼装置

油加熱器及び燃料送給装置

バーナ

ストレーナ

バーナタイル及び炉壁

ストーカ及び火格子

煙道

損傷の有無

汚れ又は損傷の有無

つまり又は損傷の有無

汚れ又は損傷の有無

損傷の有無

漏れその他の損傷の有無及び通風圧の異常の有無

自動制御装置

起動及び停止の装置、火炎検出装置、燃料しや断装置、水位調節装置並びに圧力調節装置

電気配線

機能の異常の有無

端子の異常の有無

附属装置及び附属品

給水装置

蒸気管及びこれに附属する弁

空気予熱器

水処理装置

損傷の有無及び作動の状態

損傷の有無及び保温の状態

損傷の有無

機能の異常の有無

2及び3 (略)

(5)正しい。ボイラ則第 28 条第1項(第六号)により、蒸気ボイラーの常用水位は、ガラス水面計又はこれに近接した位置に、現在水位と比較することができるように表示しなければならない。

【ボイラー及び圧力容器安全規則】

(附属品の管理)

第28条 事業者は、ボイラーの安全弁その他の附属品の管理について、次の事項を行なわなければならない。

一~五 (略)

 蒸気ボイラーの常用水位は、ガラス水面計又はこれに接近した位置に、現在水位と比較することができるように表示すること。

七及び八 (略)

 (略)

2023年12月08日執筆