労働安全コンサルタント試験 2023年 産業安全関係法令 問08

電気による労働災害の防止措置




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 このページは、2023年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2023年度(令和05年度) 問08 難易度 感電防止対策は、例年、難易度の低い問題が出題される。今年は、ややレベルが上がったか。
電気による労働災害の防止

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問8 電気による労働災害を防止するため事業者が講ずべき措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。

ただし、記述中にある電気機械器具、配線等は、いずれも、対地電圧が50ボルトを超えるものであるものとする。

(1)電気機械器具の充電部分に設けた感電を防止するための囲い又は絶縁覆いについては、毎月1回以上、その損傷の有無を点検し、異常を認めたときは、直ちに補修しなければならない。

(2)高圧の電路の開開器で、負荷電流を遮断するためのものでないものを開路するときは、当該開閉器の誤操作を防止するため、当該電路が無負荷であることを示すためのパイロットランプ等により、当該操作を行う労働者に当該電路が無負荷であることを確認させなければならない。ただし、当該開開器に、当該電路が無負荷でなければ開路することができない緊錠装置を設けるときは、この限りでない。

(3)ボイラーの胴の内部等導電体に囲まれた場所で著しく狭あいなところにおいて交流アーク溶接等(自動溶接を除く。)の作業を行うときは、交流アーク溶接機用自動電撃防止装置を使用しなければならない。

(4)高圧の電路又はその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業を行うときは、作業の指揮者を定め、労働者にあらかじめ作業の方法及び順序を周知させ、かつ、作業を直接指揮させなければならない。ただし、当該電路を開路して当該作業を行うときはこの限りでない。

(5)低圧活線作業において、労働者に着用させる絶縁用保護具、又は使用させる活線作業用器具で、直流で750ボルト以下又は交流で300ボルト以下の充電電路に対して用いられるものにあっては、当該充電電路の電圧に応じた絶縁効力を有するものを使用させなければならない。

正答(4)

【解説】

問8試験結果

試験解答状況
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(1)正しい。安衛則第353条に適合している。電気機械器具の充電部分に設けた感電を防止するための囲い又は絶縁覆いについては、毎月1回以上、その損傷の有無を点検し、異常を認めたときは、直ちに補修しなければならない。

【労働安全衛生規則】

(電気機械器具の囲い等))

第329条 事業者は、電気機械器具の充電部分(電熱器の発熱体の部分、抵抗溶接機の電極の部分等電気機械器具の使用の目的により露出することがやむを得ない充電部分を除く。)で、労働者が作業中又は通行の際に、接触(導電体を介する接触を含む。以下この章において同じ。)し、又は接近することにより感電の危険を生ずるおそれのあるものについては、感電を防止するための囲い又は絶縁覆いを設けなければならない。ただし、配電盤室、変電室等区画された場所で、事業者が第三十六条第四号の業務に就いている者(以下「電気取扱者」という。)以外の者の立入りを禁止したところに設置し、又は電柱上、塔上等隔離された場所で、電気取扱者以外の者が接近するおそれのないところに設置する電気機械器具については、この限りでない。

(電気機械器具の囲い等の点検等)

第353条 事業者は、第329条の囲い及び絶縁覆おおいについて、毎月1回以上、その損傷の有無を点検し、異常を認めたときは、直ちに補修しなければならない。

(2)正しい。安衛則第 340 条により、高圧の電路の開開器で、負荷電流を遮断するためのものでないものを開路するときは、当該開閉器の誤操作を防止するため、当該電路が無負荷であることを示すためのパイロットランプ等により、当該操作を行う労働者に当該電路が無負荷であることを確認させなければならない。ただし、当該開開器に、当該電路が無負荷でなければ開路することができない緊錠装置を設けるときは、この限りでない。

【労働安全衛生規則】

(断路器等の開路)

第340条 事業者は、高圧又は特別高圧の電路の断路器、線路開閉器等の開閉器で、負荷電流をしや断するためのものでないものを開路するときは、当該開閉器の誤操作を防止するため、当該電路が無負荷であることを示すためのパイロツトランプ、当該電路の系統を判別するためのタブレツト等により、当該操作を行なう労働者に当該電路が無負荷であることを確認させなければならない。ただし、当該開閉器に、当該電路が無負荷でなければ開路することができない緊錠装置を設けるときは、この限りでない。

(3)正しい。安衛則第 332 条により、ボイラーの胴の内部等導電体に囲まれた場所で著しく狭あいなところにおいて交流アーク溶接等(自動溶接を除く。)の作業を行うときは、交流アーク溶接機用自動電撃防止装置を使用しなければならない。

【労働安全衛生規則】

(交流アーク溶接機用自動電撃防止装置)

第332条 事業者は、船舶の二重底若しくはピークタンクの内部、ボイラーの胴若しくはドームの内部等導電体に囲まれた場所で著しく狭あいなところ又は墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある高さが2メートル以上の場所で鉄骨等導電性の高い接地物に労働者が接触するおそれがあるところにおいて、交流アーク溶接等(自動溶接を除く。)の作業を行うときは、交流アーク溶接機用自動電撃防止装置を使用しなければならない。

(4)誤り。安衛則第350条は、安衛則第339条(停電作業)の場合であっても、作業の指揮者を定め、労働者にあらかじめ作業の方法及び順序を周知させ、かつ、作業を直接指揮させなければならないとしている。

【労働安全衛生規則】

(電気工事の作業を行なう場合の作業指揮等)

第339条 事業者は、電路を開路して、当該電路又はその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業を行なうときは、当該電路を開路した後に、当該電路について、次に定める措置を講じなければならない。当該電路に近接する電路若しくはその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業又は当該電路に近接する工作物(電路の支持物を除く。以下この章において同じ。)の建設、解体、点検、修理、塗装等の作業を行なう場合も同様とする。

一~三 (略)

 (略)

(電気工事の作業を行なう場合の作業指揮等)

第350条 事業者は、第339条、第341第1項、第342条第1項、第344条第1項又は第345条第1項の作業を行なうときは、当該作業に従事する労働者に対し、作業を行なう期間、作業の内容並びに取り扱う電路及びこれに近接する電路の系統について周知させ、かつ、作業の指揮者を定めて、その者に次の事項を行なわせなければならない。

一~三 (略)

 (略)

(5)正しい。安衛則第348条第2項により、低圧活線作業において、労働者に着用させる絶縁用保護具、又は使用させる活線作業用器具で、直流で750ボルト以下又は交流で300ボルト以下の充電電路に対して用いられるものにあっては、当該充電電路の電圧に応じた絶縁効力を有するものを使用させなければならない。

なぜ、このような規定があるかといえば、絶縁用保護具と活線作業用器具は、安衛法第42条(安衛法別表第2第十三号(絶縁用保護具)及び安衛令第3項第六号(活線作業用器具))による構造規格の対象なのだが、絶縁用保護具は安衛令第13条第5項により、また、活線作業用器具は同条第3項第六号により、直流 750 V、交流 300 V 以下の充電電路に用いられるものが除かれているため、安衛則第348条第2項によって手当てしたのである。

この規定がないと、絶縁用保護具と活線作業用器具は、直流 750 V、交流 300 V 以下の充電電路に用いられるものは何でもよいということになってしまう。

【労働安全衛生法】(参考)

(譲渡等の制限等)

第42条 特定機械等以外の機械等で、別表第二に掲げるものその他危険若しくは有害な作業を必要とするもの、危険な場所において使用するもの又は危険若しくは健康障害を防止するため使用するもののうち、政令で定めるものは、厚生労働大臣が定める規格又は安全装置を具備しなければ、譲渡し、貸与し、又は設置してはならない。

別表第2 (第四十二条関係)

一~十二 (略)

十三 絶縁用保護具

十四 絶縁用防具

十五及び十六 (略)

【労働安全衛生法施行令】(参考)

(厚生労働大臣が定める規格又は安全装置を具備すべき機械等)

第13条 (第1項及び第2項 略)

一~四 (略)

 活線作業用装置(その電圧が、直流にあつては七百五十ボルトを、交流にあつては六百ボルトを超える充電電路について用いられるものに限る。)

 活線作業用器具(その電圧が、直流にあつては七百五十ボルトを、交流にあつては三百ボルトを超える充電電路について用いられるものに限る。)

 絶縁用防護具(対地電圧が五十ボルトを超える充電電路に用いられるものに限る。)

八~三十四 (略)

 法第四十二条の政令で定める機械等は、次に掲げる機械等(本邦の地域内で使用されないことが明らかな場合を除く。)とする。

 (略)

 次の表の上欄に掲げる機械等には、それぞれ同表の下欄に掲げる機械等を含まないものとする。

(略) (略)
法別表第二第十三号に掲げる絶縁用保護具 その電圧が、直流にあつては七百五十ボルト、交流にあつては三百ボルト以下の充電電路について用いられる絶縁用保護具
法別表第二第十四号に掲げる絶縁用防具 その電圧が、直流にあつては七百五十ボルト、交流にあつては三百ボルト以下の充電電路に用いられる絶縁用防具
(略) (略)

【労働安全衛生規則】

(低圧活線作業)

第346条 事業者は、低圧の充電電路の点検、修理等当該充電電路を取り扱う作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者について感電の危険が生ずるおそれのあるときは、当該労働者に絶縁用保護具を着用させ、又は活線作業用器具を使用させなければならない。

 (略)

(低圧活線近接作業)

第347条 事業者は、低圧の充電電路に近接する場所で電路又はその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者が当該充電電路に接触することにより感電の危険が生ずるおそれのあるときは、当該充電電路に絶縁用防具を装着しなければならない。ただし、当該作業に従事する労働者に絶縁用保護具を着用させて作業を行なう場合において、当該絶縁用保護具を着用する身体の部分以外の部分が当該充電電路に接触するおそれのないときは、この限りでない。

2及び3 (略)

(絶縁用保護具等)

第348条 事業者は、次の各号に掲げる絶縁用保護具等については、それぞれの使用の目的に適応する種別、材質及び寸法のものを使用しなければならない。

一~四 (略)

 第三百四十六条及び第三百四十七条の絶縁用保護具及び活線作業用器具並びに第三百四十七条の絶縁用防具

 事業者は、前項第五号に掲げる絶縁用保護具、活線作業用器具及び絶縁用防具で、直流で七百五十ボルト以下又は交流で三百ボルト以下の充電電路に対して用いられるものにあつては、当該充電電路の電圧に応じた絶縁効力を有するものを使用しなければならない。

2023年12月08日執筆