労働安全コンサルタント試験 2023年 産業安全一般 問29

機械の包括的な安全基準に関する指針




問題文
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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2023年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

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2023年度(令和05年度) 問29 難易度 包括的機械安全指針に関する問題は毎年出題されている。指針の内容を記憶していないと正答は難しい。
機械安全

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問29 厚生労働省の「機械の包括的な安全基準に関する指針」に示された事項に関する次の文中の A  D に入る語句として、適切なものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

 A とは、 B により示される C が予定している機械の使用をいう。

 B とは、安全で、かつ、正しい機械の使用を確実にするために、 C が提供する指示事項等の情報をいう。

 D とは、 C が意図していない機械の使用であって、容易に予見できる人間の挙動から行われるものをいう。

(1) 機械の意図する使用 安全使用情報 製造等を行う者 合理的に予見可能な省略行動
(2) 機械の意図する使用 安全使用情報 作業手順の整備を行う者 合理的に予見可能な省略行動
(3) 機械の意図する使用 使用上の情報 製造等を行う者 合理的に予見可能な誤使用
(4) 機械の安全な使用 安全使用情報 製造等を行う者 合理的に予見可能な誤使用
(5) 機械の安全な使用 使用上の情報 作業手順の整備を行う者 合理的に予見可能な誤使用

正答(3)

【解説】

問29試験結果

試験解答状況
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本問は、問題文にもあるように「機械の包括的な安全基準に関する指針」(以下、本問の解説において「指針」という。)(平成19年7月31日基発第 0731001 号「「機械の包括的な安全基準に関する指針」の改正について」)に関する問題である。

本問は、指針の「3 用語の定義」からの出題である。

下記指針からの引用の(8)にあるように、[機械の意図する使用]とは、[使用上の情報]により示される[製造等を行う者]が予定している機械の使用をいう。

また、(6)にあるように、[使用上の情報]とは、安全で、かつ、正しい機械の使用を確実にするために、[製造等を行う者]が提供する指示事項等の情報をいう。

さらに(9)にあるように、[合理的に予見可能な誤使用]とは、[製造等を行う者]が意図していない機械の使用であって、容易に予見できる人間の挙動から行われるものをいう。

従って、A:機械の意図する使用  B:使用上の情報  C:製造等を行う者  D:合理的に予見可能な誤使用  となる。

【機械の包括的な安全基準に関する指針】

第1 趣旨等

3 用語の定義

  本指針において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1)~(5) (略)

(6) 使用上の情報 安全で、かつ正しい機械の使用を確実にするために、製造等を行う者が、標識、警告表示の貼付、信号装置又は警報装置の設置、取扱説明書等の交付等により提供する指示事項等の情報をいう。

(7) (略)

(8) 機械の意図する使用 使用上の情報により示される、製造等を行う者が予定している機械の使用をいい、設定、教示、工程の切替え、運転、そうじ、保守点検等を含むものであること。

(9) 合理的に予見可能な誤使用 製造等を行う者が意図していない機械の使用であって、容易に予見できる人間の挙動から行われるものをいう。

※ 「機械の包括的な安全基準に関する指針」(平成19年7月31日基発第 0731001 号)

なお、本問の(4)(5)の肢に「機械の安全な使用」という用語が示されているが、このような概念はおかしいと気付く必要がある。機械は安全装置を含めて必ず故障するし、ヒューマンエラーも起こり得る。事故は必ず起こるのであって、あり得るのは「製造者の意図する使用」であって「安全な使用」ではない

安全な使用がないからこそ、リスクアセスメントによって許容可能なレベルまでリスクを落とすという考えが成り立つのである。「災害はあってはならない」というのは理想論としては美しい言葉だが、それを現実に当てはめてしまうと、どこかで誰かがリスクに目をつぶることになる。そして、どのレベルで目をつぶるかは、誰にも言わずに恣意的に定めてしまう。

リスクアセスメントとは、理想論を現実論に変えようということである。誤解を恐れずに言えば、その目をつぶるリスクの程度をきちんと、社会的な合意(あるいは当事者の合意)の下で定めようということなのである。

2024年01月13日執筆