労働安全コンサルタント試験 2023年 産業安全一般 問18

感電防止対策




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2023年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

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2023年度(令和05年度) 問18 難易度 感電防止は、例年、平易な問題が出題されるが、本年はやや詳細な肢があったためか、正答率は低かった。
感電防止対策

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問18 感電防止に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)交流アーク溶接機の外箱への漏電による危険に対しては、入力側回路に漏電遮断器を設置し、溶接機外箱を確実に接地しておくことが必要である。

(2)漏電遮断器は、一般に、地絡検出機構、引外し機構、開閉機構、試験ボタンなどを絶縁物の容器に一体に組み込んだ構造であり、漏れ電流が大地に流れることによって生ずる電路電流の不平衡分を零相変流器で検出することによって動作するものである。

(3)低圧のキャブタイヤケーブルには、外装の絶縁物の種類及びケーブルの構造によって、ゴムキャブタイヤケーブル、クロロプレンキャブタイヤケーブル、クロロスルホン化ポリエチレンキャブタイヤケーブル等の種類がある。

(4)短絡接地器具は、一般に高圧以上の停電した電路などにおいて、誤通電、他の電路との混触等により不意に充電される場合に備えて短絡と接地を行うものである。

(5)ネオン発光式の検電器は、絶縁電線被覆の上からも検電できる。

正答(5)

【解説】

問18試験結果

試験解答状況
図をクリックすると拡大します

(1)適切である。交流アーク溶接機に限らず、電気製品の外箱(きょう体)への漏電による危険に対しては、入力側回路に漏電遮断器を設置し、溶接機外箱を確実に接地しておくことが原則である。

入力側回路に漏電遮断器を設置しておけば、作業者が感電して電流が身体から大地へ流れれば、これは漏電と同じことであるから漏電遮断器によって電源を遮断できるのである。また、外箱を設置しておけば、外箱は大地と同じ電位になるので作業者が感電することはなくなる(※)

※ 外箱を接地した状態で、電路が外箱へ接触する等により漏電すると、電路から接地線を通して大電流が大地へ流れる可能性があるが、漏電遮断器やブレーカ等が作動することにより、回路は守られる。

漏電しゃ断装置(IEC規格対応)の原理

図をクリックすると拡大します(※)

(2)適切である。漏電遮断器は、一般に、地絡検出機構、引外し機構、開閉機構、試験ボタンなどを絶縁物の容器に一体に組み込んだ構造であり、漏れ電流が大地に流れることによって生ずる電路電流の不平衡分を零相変流器で検出することによって動作するものである。

※ 図は、宮本秀樹「漏電遮断器の適用と動向」(電気設備学会誌 2013年 Vol.33 No.4)の図を一部修正し、配色した。

(3)適切である。関東経済産業局ゴム系絶縁電線類の「ゴム系絶縁電線類」のシートに、絶縁体の主材料として、以下の8点が挙げられている。

  • 天然ゴム混合物のもの
  • ブチルゴム混合物のもの
  • クロロプレンゴム混合物のもの
  • エチレンプロピレンゴム混合物のもの
  • クロロスルホン化ポリエチレンゴム混合物のもの
  • けい素ゴム混合物のもの(機械的強度を強化したものを除く。)
  • けい素ゴム混合物のもの(機械的強度を強化したものに限る。)
  • その他のもの

本肢に挙げられているキャブタイヤケーブルが主なキャブタイヤケーブル化と言われればやや疑問はある。また、クロロブレンキャブタイヤケーブルは正確には、クロロブレンゴムキャブタイヤケーブルであろう。しかし、誤りとまではいえない。

表:主なキャブタイヤケーブルの種類及び記号

略号 被覆材 グレード等
絶縁体 シース(外装)
ビニル絶縁キャブタイヤケーブル VCT
VCT-F
ビニル ビニル 600V以下
300V以下
ゴムキャブタイヤケーブル 2PNCT
3PNCT
EPゴム
(エチレンプロピレン)
クロロプレンゴム
(ネオプレン)
2種
3種
1CT
2CT
3CT
天然ゴム 天然ゴム 1種
2種
3種
2RNCT
3RNCT
天然ゴム クロロプレンゴム
(ネオプレン)
1種
2種
3種

(4)適切である。短絡接地器具は、一般に高圧以上の停電した電路などにおいて、誤通電、他の電路との混触等により不意に充電される場合に備えて短絡と接地を行うものである。

【労働安全衛生規則】

(停電作業を行なう場合の措置)

第339条 事業者は、電路を開路して、当該電路又はその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業を行なうときは、当該電路を開路した後に、当該電路について、次に定める措置を講じなければならない。当該電路に近接する電路若しくはその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業又は当該電路に近接する工作物(電路の支持物を除く。以下この章において同じ。)の建設、解体、点検、修理、塗装等の作業を行なう場合も同様とする。

一及び二 (略)

 開路した電路が高圧又は特別高圧であつたものについては、検電器具により停電を確認し、かつ、誤通電、他の電路との混触又は他の電路からの誘導による感電の危険を防止するため、短絡接地器具を用いて確実に短絡接地すること。

 (略)

(5)適切ではない。電源と信号を増幅する回路を内蔵している交流用検電器は絶縁電線被覆の上からも検電できるが、ネオン発光式の検電器は電源を内蔵しているわけではなく、通常は絶縁電線被覆の上からでは検電できない。

なお、直流用検電器は、原理的に絶縁電線被覆の上からでは検電できない。なお、ネオン発光式の検電器は直接導体に触れることが前提で、ネオン管は直流でも作動するため交流でも直流でも使用可能である。

2023年12月30日執筆