労働安全コンサルタント試験 2023年 産業安全一般 問16

各種の安全装置




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2023年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2023年度(令和05年度) 問16 難易度 安全装置に関する基本的な知識問題だが、問題文にあいまいさがあり、結果的に正答率は高くはなかった。
各種の安全装置

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問16 安全装置に関する次のイ~ニの記述について、適切でないもののみを全て挙げたものは(1)~(5)のうちどれか。

イ アーク溶接機の自動電撃防止装置は、アークの発生時に溶接機の出力側の電圧を下げることによって、感電を防止するものである。

ロ 手押しかんな盤の固定式接触予防装置は、加工材の幅に応じて覆いを調整し、切削に必要な刃部のみを残して覆う構造のものである。

ハ 動カプレスの急停止機構は、危険その他の異常な状態を発見した場合に、プレス作業者が急停止ボタンを押してスライドの作動を停止させるための装置である。

ニ 温水ボイラーの逃がし弁は、設定圧力に達するとボイラー水の膨張分を逃がして内部の圧力上昇を抑制する弁であり、逃がし管を設けない場合や膨張タンクを密閉形とした場合に用いられる。

(1)イ  ロ  ハ

(2)イ  ハ

(3)イ  ニ

(4)ロ  ハ  ニ

(5)ロ  ニ

正答(2)

【解説】

問16試験結果

試験解答状況
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本問も正答の肢より、誤った肢に解答した受験者の方が多くなってしまった。これは、やや詳細な知識を問う肢が一部に含まれていたということもあるが、日本語としてあいまいな肢があり、そのために誤ったという面もあるのではないか。

このような設問は望ましいものとは言えないだろう。試験協会には、もう少し問題文を精査して欲しいと思う。

アーク溶接装置の自動電撃防止装置の動作

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イ 適切ではない。アーク溶接機の自動電撃防止装置は、アークを切った後、一定時間後に溶接機の出力側の電圧を下げることによって、感電を防止するものである。アーク発生時に電圧を下げたのでは溶接ができなくなってしまう。なぜ、こういう非常識な設問をするのか疑問。

本肢を正しいと答えた受験者は、おそらく「アーク発生時」を「アークを切った後」と誤読又は誤解したものであろう。あまりにも非常識な内容なので、誤読したのだろうが、このようなひっかけが、コンサルタントとしての能力を図る試験問題として適切なのか、疑問を感じざるを得ない。

ロ 試験協会は適切であるとしている。「手押しかんな盤及びその刃の接触予防装置の構造規格」(昭和47年9月30日労働省告示第87号(改正:平成12年1月31日労働省告示第2号))第2章第13条によれば、「可動式接触予防装置」とは、「そのおおいが加工材の送給に応じて自動的に開閉する刃の接触予防装置」であるとされている。

※ 同構造規格には、固定式接触予防装置についての記述はない。なお、平成6年10月24日基発第656号「手押しかんな盤等の構造、使用等に関する安全上のガイドライン等の策定について」の2の(6)によれば「固定式の刃の接触予防装置にあっては、加工材の切削幅に応じて調節することのできるものであること」とされており、作業者が加工材の切削幅に応じて調節するものとされている。

【手押しかんな盤及びその刃の接触予防装置の構造規格】

(抜け止め)

第13条 可動式接触予防装置(そのおおいが加工材の送給に応じて自動的に開閉する刃の接触予防装置をいう。以下同じ。)のヒンジの部のボルト、ピン等は、抜け止めが施されているものでなければならない。

おそらく出題者はこの記述の可動式接触予防装置を固定式接触予防装置に変更し、さらに「自動的に」の文字を落として、主語と述語を共に逆の意味にしたのだから適切であると考えたのであろう。確かに、本肢の「加工材の幅に応じて覆いを調整し」の「調整」は、自動的に調整されるとは書かれていない。しかし、作業者が調整するとも書かれていないのである。従って、どちらともとれるので欠陥問題と言うべきである

作業者が調整するというのなら出題者が考えたように適切かもしれないが、自動的に調整されるという趣旨であれば適切ではないのである。

むしろ、問題文を普通に読めば、機械の側で自動的に調整されるという趣旨にしか読めないのではなかろうか。少なくとも筆者は、正答予測を行ったとき、本肢がどちらの意味かについて迷ったが、日本文の意味として、本肢は不適切と判断した。このような日本語として迷うような問題を出題するのは国家試験として、それこそ「不適切」であろう。

ハ 適切ではない。平成23年2月18日基発0218第3号「動力プレス機械構造規格の一部を改正する件及びプレス機械又はシャーの安全装置構造規格の一部を改正する件の適用について」の第2の1の(2)によれば、動カプレスの急停止機構は、危険その他の異常な状態が検出された場合に、検出機構からの信号によって、プレス作業者等の意思にかかわらずスライドの作動を停止させる機構である。

【動力プレス機械構造規格の一部を改正する件及びプレス機械又はシャーの安全装置構造規格の一部を改正する件の適用について】

第2 留意事項

1 動力プレス機械構造規格関係

(2) 第2条関係

 「急停止機構」とは、危険その他の異常な状態が検出された場合に、検出機構からの信号によって、動力プレスを使用して作業する労働者(以下「プレス作業者」という。)等の意思にかかわらずスライドの作動を停止させる機構をいうこと。なお、急停止機構には、スライドが下降するものにあっては、スライドを急上昇させる装置が含まれること。

※ 平成23年2月18日基発0218第3号「動力プレス機械構造規格の一部を改正する件及びプレス機械又はシャーの安全装置構造規格の一部を改正する件の適用について

ニ 適切である。逃がし弁は、その名の通り設定圧力に達するとボイラー水の膨張分を逃がして内部の圧力上昇を抑制する安全弁である。一定の場合には逃がし管を設ければ逃し弁を取り付ける必要はない。また、密閉形膨張タンクを用いる場合に、破裂事故を防ぐために安全弁を設けるべきことは当然である。

【ボイラー構造規格】

(温水ボイラーの逃がし弁又は安全弁)

第65条 水の温度が百二十度以下の温水ボイラーには、圧力が最高使用圧力に達すると直ちに作用し、かつ、内部の圧力を最高使用圧力以下に保持することができる逃がし弁を備えなければならない。ただし、水の温度が百二十度以下の温水ボイラーであって、容易に検査ができる位置に内部の圧力を最高使用圧力以下に保持することができる逃がし管を備えたものについては、この限りでない。

 水の温度が百二十度を超える温水ボイラーには、内部の圧力を最高使用圧力以下に保持することができる安全弁を備えなければならない。

2023年12月29日執筆