労働安全コンサルタント試験 2023年 産業安全一般 問03

金属材料の処理と処理による材料の特性




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2023年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

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2023年度(令和05年度) 問03 難易度 金属材料処理と効果に関する知識問題。過去問に例がないこともあり、かなりの難問だったようだ。
金属材料処理と効果

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問3 金属材料の処理と処理による材料の特性に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)ガス浸炭法は、炭素を鋼の表面から浸透させて表面の硬度を高める処理であり、焼入れ温度より低い温度で処理するので、薄肉品などでも熱処理変形が起きにくい。

(2)高周波焼入れは、高周波誘導電流によって材料表面のみを加熱して焼入れ処理するもので、短時間で局所的な焼入れが可能であり、表面層の硬度が向上する。

(3)ショットピーニングは、鋼材の表面に鋼球等の硬い球をエアー圧力によつて高速で衝突させる処理であり、衝突により塑性変形した表面に圧縮残留応力が発生し、鋼材の疲労強度が高くなる。

(4)亜鉛めっきは、大別すると溶融めっきと電気めっきがあり、電気めっきの方が、めっき被膜層が薄く耐食性は劣るが、仕上がりの表面状態は優れている。

(5)溶射は、溶射材料を溶融させて金属表面に吹き付けることにより金属表面に溶射材料の被膜を付着形成させる表面処理であり、耐摩耗性の向上のほか、防食性、耐熱性を付与することができる。

正答(1)

【解説】

問3試験結果

試験解答状況
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本問は、解答状況を見ても分かるように、本問はほぼすべての肢に回答が分かれた。かなりの難問だったようだ。

(1)適切ではない。ガス浸炭法は、炭素を鋼の表面から浸透させて表面の硬度を高める処理であることは正しい。一酸化炭素を含む高温の雰囲気中で炭素を鋼の表面から浸透させ、その後焼入れ焼きなましを行う処理である。

しかし、浸炭は焼入れ温度より高い温度で処理する。このため、熱処理による変形や歪は、比較的低温で行える浸炭窒化に比べれば大きくなる。

(2)適切である。高周波誘導電流は、導体の内部には入り込めず表面を流れるので、材料表面のみを加熱して焼入れ処理が可能となる。炉加熱と違い必要な部分の選択加熱ができるので局所的な焼入れも可能である。

(3)適切である。ショットピーニングとは、無数の金属性の球体(ピーニング)を材料表面に打ち付け(ショット)ることにより、材料表面を加工硬化を引き起こす処理である。

この処理を施した材料は、疲労破壊の原因となる繰返し荷重に対して、表面層の圧縮残留応力が相殺する形で作用し、疲労強度が高くなるのである。

(4)適切である。溶融亜鉛めっつき(SGCC)とは、溶融亜鉛中に材料を浸漬(ドブ漬け)して表面に漬け亜鉛を金属結合させるめっき法であり、電気亜鉛めっき(SECC)とは、水溶液中の亜鉛イオンを電気エネルギーによって材料の表面に析出させて成膜するめっき法である。

このため、電気亜鉛めっきの方が、どうしても被膜層が薄くなり耐食性は劣りがちになる(※)。しかし、その成膜は原子レベルで行われるため、仕上がりの表面状態は優れている。

※ 現実には、電気亜鉛めっきは、合わせてクロメート処理を行うことが普通であり、クロメート処理を行えば耐食性は溶融亜鉛めっつきより高くなる。このため、電気亜鉛めっきの方が溶融亜鉛めっつきより耐食性が高いと記されている資料もある。

試験問題の正誤としては、クロメート処理を行わない場合について答えるべきであることは当然である。

(5)適切である。溶射の意味は本肢の通りである。溶射される材料の種類により、耐摩耗性、防食性、耐熱性のみならず、防錆性、硬度、防滑性、電気絶縁性、誘電性、熱伝導性、潤滑性、耐衝撃性など様々な性能向上に用いることができる。

2023年12月20日執筆