労働安全コンサルタント試験 2023年 産業安全一般 問02

日常的な安全衛生活動




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2023年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

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2023年度(令和05年度) 問02 難易度 安全衛生活動に関するごく初歩的な知識問題。初学の受験者以外は正答できるだろう。
安全衛生活動

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問2 事業場における安全活動に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)ヒヤリハット活動は、詳細かつ多数の報告件数を集めることを主眼とし、集められた報告については中長期的に対策を進めていく。

(2)日常的な安全活動の4Sのうち、「整理」とは、必要なものと不要なものを分けて、不要なものを処分することをいい、「整頓」とは、必要なときに必要な物をすぐ取り出せるように、わかりやすく安全な状態で配置、収納することをいう。

(3)ツールボックスミーティングは、作業開始前や作業の切替え時に、短時間で監督者を中心にその日の作業の範囲、段取り、分担、安全衛生のポイントなどを現場で話し合う活動である。

(4)安全パトロールでは、その場限りの指摘だけに終わらせずに、安全パトロール実施後に、問題点の背後要因、基本的な原因を追跡・調査分析し、本質的な解決に結びつける。

(5)危険予知活動は、危険への感受性を高め、集中力・解決意欲の向上を図るともに、作業を安全に遂行する能力を高めるために効果がある。

正答(1)

【解説】

問2試験結果

試験解答状況
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(1)適切ではない。ヒヤリハット活動では、詳細かつ多数の報告件数を集めることを主眼とするのではない。詳細な報告を求めれば、提出する側の負担を増してしまい、報告を躊躇させることとなる。また、多数の報告を求めれば、報告のための報告が提出されるようになり、ヒヤリハット事例に対する対策への熱意を損ない、また事務量が増加して本当に必要な対策に事務量を傾注できなくなる。

また、内容によっては直ちに対策を取る必要のある場合もある。すべてのヒヤリハット事例を中長期的に対策を進めてよいわけがない。

(2)適切である。職場の安全サイト「安全キーワード」の4S(整理、整頓、清掃、清潔)活動によれば、4Sとは、「安全で、健康な職場づくり、そして生産性の向上をめざす活動で、整理(Seiri)、整頓(Seiton)、清掃(Seiso)、清潔(Seiketsu)を行う事」とされている。また、整理とは「必要なものと不要なものを区分し、不要、不急なものを取り除くこと」とされ、整頓とは「必要なものを、決められた場所に、決められた量だけ、いつでも使える状態に、容易に取り出せるようにしておくこと」とされている。

表:厚生労働省サイトと本肢の表現
  厚労省サイト 本肢
整理 必要なものと不要なものを区分し、不要、不急なものを取り除くことです。要るもの、要らないものに分けるためには、何らかの判断の基準が必要になります。現場の作業方法では必要と認められていても、その場所にその物が必要か、それだけの量が必要かなどの改善の余地はないかを検討し、よりよい方法が見つかればそれを新しい判断の基準、すなわち作業標準として定めてゆくことが出来ます。 必要なものと不要なものを分けて、不要なものを処分すること
整頓 必要なものを、決められた場所に、決められた量だけ、いつでも使える状態に、容易に取り出せるようにしておくことです。工具・用具のみならず資材・材料を探す無駄を無くすことが出来ます。安全に配慮した置き方をすることが大事です。 必要なときに必要な物をすぐ取り出せるように、わかりやすく安全な状態で配置、収納すること

過去問でも同種問題は多く、本肢を適切ではないとした受験者はほとんどいなかった。

(3)適切である。ツールボックスミーティングは、作業開始前や作業の切替え時に短時間で、監督者を中心にその日の作業の範囲、段取り、分担、安全衛生のポイントなどを現場で話し合う活動である。現場で、ツールボックス(工具箱)に腰かけて(※)行うイメージから名づけられた。

※ ツール・ボックスに腰掛けるべきではないということからか、最近では、「ツールボックスの近くで」とか「ツールボックスを囲んで」と説明されることが多い。

本問も過去問での同種問題は多い。本肢を適切ではないとした受験者が、若干いたが、(1)を正しいと判断したためだろうか。

(4)適切である。本肢には誤っていると考える要素がない。試験協会によるサービス問題である。

(5)適切である。本肢には誤っていると考える要素がない。実をいえば、本肢が述べていることについて科学的な根拠があるとは思えないが、危険予知活動は厚労省が推進しているものである。厚労省の主催する国家試験で、このようなことを間違いだとするはずがないだろう。

なお、高橋他(※)は危険予知活動の目的について、「KY 活動の主な目的は当該作業の実施に関わる危険を抽出することであるが、その活動に伴って作業者の危険認知能力が向上することも副次的効果として期待できる」とし、「タブレット端末式 KY は、危険認知能力が上がり、普段の不安全行動に関する自己評価が安全側に変化する効果が認められた」などとしている。

※ 高橋明子他「経験の浅い作業者の危険予知訓練による危険認知能力と自己評価の変化」(労働科学 2016年 Vol.92 No.3/4)

2023年12月20日執筆