労働安全コンサルタント試験 2022年 産業安全関係法令 問10

クレーンによる労働災害の防止




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2022年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2022年度(令和04年度) 問10 難易度 本問は、過去問に同種問題があり正答できなければならない問題である。
クレーンによる労働災害  3 

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問10 特定機械等であるクレーン等による危険を防止するために事業者が講ずべき措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、定められていないものはどれか。

(1)クレーンについて1年以内ごとに1回行う定期自主検査における荷重試験は、クレーンに定格荷重に相当する荷重の荷をつって、つり上げ、走行、旋回等の作動を定格速度により行わなければならない。

(2)地盤が軟弱であること、埋設物その他地下に存する工作物が損壊するおそれがあること等により移動式クレーンが転倒するおそれのある場所においては、当該場所において、移動式クレーンの転倒を防止するため必要な広さ及び強度を有する鉄板等が敷設され、その上に移動式クレーンを設置しているときを除き、移動式クレーンを用いて作業を行ってはならない。

(3)クレーン、移動式クレーン又はデリックの玉掛用具であるフック又はシャックルの安全係数については、5以上でなければ使用してはならない。

(4)ゴンドラを使用して作業を行うときは、その日の作業を開始する前に、ワイヤロープ及び緊結金具類の損傷及び腐食の状態並びに突りょう、昇降装置等とワイヤロープとの取付け部の状態及びライフラインの取付け部の状態について点検を行わなければならない。

(5)荷をつった状態で移動式クレーンを走行させる作業を行うときは、あらかじめ当該作業に係る場所の地形、地盤の状態等に応じた移動式クレーンの制限速度を定めるとともに、誘導者を配置し、その者に当該移動式クレーンを誘導させなければならない。

正答(5)

【解説】

問10試験結果

試験解答状況
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(1)定められている。クレーン則第 34 条第4項により、クレーンについて1年以内ごとに1回行う定期自主検査における荷重試験は、クレーンに定格荷重に相当する荷重の荷をつって、つり上げ、走行、旋回等の作動を定格速度により行わなければならない。

なお、落成検査では定格荷重を超える荷をつって検査をするが、このことと混同してはならない。最近のクレーンには安全装置が取り付けられているため、定格荷重よりも重い荷をつった状態では動かないことが多い。そのため、定期自主検査で定格荷重よりも重い荷をつらせることなど現実にはできるものではない。

【クレーン等安全規則】

(落成検査)

第6条 クレーンを設置した者は、法第38条第3項の規定により、当該クレーンについて、所轄労働基準監督署長の検査を受けなければならない。ただし、所轄労働基準監督署長が当該検査の必要がないと認めたクレーンについては、この限りでない。

 前項の規定による検査(以下この節において「落成検査」という。)においては、クレーンの各部分の構造及び機能について点検を行なうほか、荷重試験及び安定度試験を行なうものとする。ただし、天井クレーン、橋形クレーン等転倒するおそれのないクレーンの落成検査においては、荷重試験に限るものとする。

 前項の荷重試験は、クレーンに定格荷重の1.25倍に相当する荷重(定格荷重が200トンをこえる場合は、定格荷重に50トンを加えた荷重)の荷をつつて、つり上げ、走行、旋回、トロリの横行等の作動を行なうものとする。

 第2項の安定度試験は、クレーンに定格荷重の1.27倍に相当する荷重の荷をつつて、当該クレーンの安定に関し最も不利な条件で地切りすることにより行なうものとする。この場合において、逸走防止装置、レールクランプ等の装置は、作用させないものとする。

5及び6 (略)

(定期自主検査)

第34条 事業者は、クレーンを設置した後、1年以内ごとに1回、定期に、当該クレーンについて自主検査を行なわなければならない。ただし、1年をこえる期間使用しないクレーンの当該使用しない期間においては、この限りでない。

 (略)

 事業者は、前2項の自主検査においては、荷重試験を行わなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当するクレーンについては、この限りでない。

一及び二 (略)

 前項の荷重試験は、クレーンに定格荷重に相当する荷重の荷をつつて、つり上げ、走行、旋回、トロリの横行等の作動を定格速度により行なうものとする。

(2)定められている。クレーン則第 70 条の3により、地盤が軟弱であること、埋設物その他地下に存する工作物が損壊するおそれがあること等により移動式クレーンが転倒するおそれのある場所においては、当該場所において、移動式クレーンの転倒を防止するため必要な広さ及び強度を有する鉄板等が敷設され、その上に移動式クレーンを設置しているときを除き、移動式クレーンを用いて作業を行ってはならない。

【クレーン等安全規則】

(使用の禁止)

第70条の3 事業者は、地盤が軟弱であること、埋設物その他地下に存する工作物が損壊するおそれがあること等により移動式クレーンが転倒するおそれのある場所においては、移動式クレーンを用いて作業を行つてはならない。ただし、当該場所において、移動式クレーンの転倒を防止するため必要な広さ及び強度を有する鉄板等が敷設され、その上に移動式クレーンを設置しているときは、この限りでない。

(3)定められている。クレーン則第 214 条第1項により、クレーン、移動式クレーン又はデリックの玉掛用具であるフック又はシャックルの安全係数については、5以上でなければ使用してはならない。

【クレーン等安全規則】

(玉掛け用フツク等の安全係数)

第214条 事業者は、クレーン、移動式クレーン又はデリツクの玉掛用具であるフツク又はシヤツクルの安全係数については、五以上でなければ使用してはならない。

 (略)

(4)定められている。ゴンドラ則第 22 条第1項により、ゴンドラを使用して作業を行うときは、その日の作業を開始する前に、ワイヤロープ及び緊結金具類の損傷及び腐食の状態並びに突りょう、昇降装置等とワイヤロープとの取付け部の状態及びライフラインの取付け部の状態について点検を行わなければならない。

【ゴンドラ安全規則】

(作業開始前の点検)

第22条 事業者は、ゴンドラを使用して作業を行なうときは、その日の作業を開始する前に、次の事項について点検を行なわなければならない。

 ワイヤロープ及び緊結金具類の損傷及び腐食の状態

 手すり等の取りはずし及び脱落の有無

 突りよう、昇降装置等とワイヤロープとの取付け部の状態及びライフラインの取付け部の状態

 巻過防止装置その他の安全装置、ブレーキ及び制御装置の機能

 昇降装置の歯止めの機能

 ワイヤロープが通つている箇所の状態

 (略)

(5)定められていない。法令では、荷をつった状態で移動式クレーンを走行させることは禁止されてはいないが、厚生労働省の指導通達で移動式クレーンに荷をつったまま移動してはならないというものがある。すなわち、そもそも荷をつった状態で移動式クレーンを移動させるということが想定されていないのである。

もっとも、ほとんどの建設機械メーカーは、移動式クレーンで荷をつったまま移動する機能を設けている(※1)。このような状況から、日本クレーン協会は、移動式クレーンに荷をつった状態で移動する場合のガイドラインを定めている。このため、前期通達は有名無実化している実態にある(※2)

※1 そもそもラフテレーンクレーンは、不整地で荷をつったまま移動できることがメリットであり、これを禁止されるとラフテレーンクレーンの意味がなくなると指摘する製造メーカの関係者もいる。

※2 大手建設会社などでは、移動式クレーンで荷をつったままでの移動を禁止している例もある。

なお、本問は、過去問 2013 年問 10 に同種問題がある。