労働安全コンサルタント試験 2022年 産業安全関係法令 問09

ボイラによる労働災害の防止




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 このページは、2022年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2022年度(令和04年度) 問09 難易度 本年のボイラに関する問題は、過去問に比してひねってある。しかし、考えて正答できる問題である。
ボイラによる労働災害

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問9 特定機械等であるボイラーについて、事業者が講ずべき措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、正しいものはどれか。

(1)ボイラーの逃がし管については、凍結しないように保温その他の措置を講じなければならない。

(2)最高使用圧力が2メガパスカル以上のボイラーの取扱いの業務については、特級ボイラー技士免許又は一級ボイラー技士免許を受けた者でなければ当該業務につかせてはならない。

(3)ボイラーの吹出しを行うときは、1人で同時に2以上のボイラーの吹出しを行わせてはならない。ただし、所轄労働基準監督署長の認定を受けたときは、この限りでない。

(4)ボイラー室には、2以上の出入口を設けなければならない。ただし、当該ボイラ一室に設置するボイラーの伝熱面積の合計が10平方メートル以下であるときは、この限りでない

(5)ボイラーの温度計の目もりには、当該ボイラーの最高使用温度を示す位置に、見やすい表示をしなければならない。

正答(1)

【解説】

問9試験結果

試験解答状況
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本問について、知識だけで解けなかった場合はどのように考えるべきだろうか。

まず、(1)だけは、誤りとする要素がない。ボイラーの逃がし管については、凍結しないように保温その他の措置を講じなければならないのは、安全上必要なことなのである。

これに対し、(3)と(4)は但し書きがあり、誤りと考え得る要素が含まれている。また、(2)は、正しいか誤っているか不明という要素がある(他の資格の可能性もあろう)。

ここまでで、(1)か(5)が正答ではないかと絞り込むことができる。

そして、逃がし弁が凍結すれば、逃がし弁の機能が失われてしまうため、内部の圧力が上昇しかねず極めて危険であるが、温度は圧力ほどには気にしなくてもよいと気づけば正答できるのではないだろうか。

逃がし弁のような、安全装置の機能が正常に動作するようにしておくことは、何よりも必要なことなのである。

(1)正しい。ボイラ則第28条第1項(第三号)により、ボイラーの逃がし管については、凍結しないように保温その他の措置を講じなければならない。

【ボイラー及び圧力容器安全規則】

(附属品の管理)

第28条 事業者は、ボイラーの安全弁その他の附属品の管理について、次の事項を行なわなければならない。

一及び二 (略)

 逃がし管は、凍結しないように保温その他の措置を講ずること。

四~八 (略)

 (略)

(2)誤り。ボイラー関連の就業制限に関しては、ボイラ則第23条に定められている。そして、本肢の「最高使用圧力が2メガパスカル以上のボイラー」の取扱いの業務は、同規則第23条第1項の対象である安衛令第20条第三号の「ボイラー(小型ボイラーを除く。)の取扱いの業務」に該当する(※)

※ 「最高使用圧力が2メガパスカル以上」のボイラーは令第20条第五号の小型ボイラーには該当しない。なお、法令には「使用圧力」という用語は用いられないが、法令でいうゲージ圧のことだと思えばよい。ここに、ゲージ圧とは、絶対圧力と大気圧の差のことである。

しかし、その取扱いの業務については、特級ボイラー技士免許、一級ボイラー技士免許又は二級ボイラー技士免許を受けた者であればよい。

特級ボイラー技士免許又は一級ボイラー技士免許を受けた者でなければ当該業務につかせてはならないという規定はない。

【労働安全衛生法】

(就業制限)

第61条 事業者は、クレーンの運転その他の業務で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の当該業務に係る免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う当該業務に係る技能講習を修了した者その他厚生労働省令で定める資格を有する者でなければ、当該業務に就かせてはならない。

2~4 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(定義)

第1条 この政令において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一~三 (略)

 小型ボイラー ボイラーのうち、次に掲げるボイラーをいう。

 ゲージ圧力0.1メガパスカル以下で使用する蒸気ボイラーで、伝熱面積が1平方メートル以下のもの又は胴の内径が300ミリメートル以下で、かつ、その長さが600ミリメートル以下のもの

 伝熱面積が3.5平方メートル以下の蒸気ボイラーで、大気に開放した内径が25ミリメートル以上の蒸気管を取り付けたもの又はゲージ圧力0.05メガパスカル以下で、かつ、内径が25ミリメートル以上のU形立管を蒸気部に取り付けたもの

 ゲージ圧力0.1メガパスカル以下の温水ボイラーで、伝熱面積が8平方メートル以下のもの

 ゲージ圧力0.1メガパスカル以下の温水ボイラーで、伝熱面積が2平方メートル以下のもの

 ゲージ圧力1メガパスカル以下で使用する貫流ボイラー(管寄せの内径が150ミリメートルを超える多管式のものを除く。)で、伝熱面積が10平方メートル以下のもの(気水分離器を有するものにあつては、当該気水分離器の内径が300ミリメートル以下で、かつ、その内容積が0.07立方メートル以下のものに限る。)

五~十一 (略)

(就業制限に係る業務)

第20条 法第61条第1項の政令で定める業務は、次のとおりとする。

一及び二 (略)

 ボイラー(小型ボイラーを除く。)の取扱いの業務

 (略)

 ボイラー(小型ボイラー及び次に掲げるボイラーを除く。)又は第6条第十七号の第一種圧力容器の整備の業務

 胴の内径が750ミリメートル以下で、かつ、その長さが1,300ミリメートル以下の蒸気ボイラー

 伝熱面積が3平方メートル以下の蒸気ボイラー

 伝熱面積が14平方メートル以下の温水ボイラー

 伝熱面積が30平方メートル以下の貫流ボイラー(気水分離器を有するものにあつては、当該気水分離器の内径が400ミリメートル以下で、かつ、その内容積が0.4立方メートル以下のものに限る。)

六~十六 (略)

【ボイラー及び圧力容器安全規則】

(就業制限)

第23条 事業者は、令第20条第三号の業務については、特級ボイラー技士免許、一級ボイラー技士免許又は二級ボイラー技士免許を受けた者(以下「ボイラー技士」という。)でなければ、当該業務につかせてはならない。ただし、安衛則第42条に規定する場合は、この限りでない。

 事業者は、前項本文の規定にかかわらず、令第20条第五号イからニまでに掲げるボイラーの取扱いの業務については、ボイラー取扱技能講習を修了した者を当該業務に就かせることができる。

(3)誤り。ボイラ則第31条第1項(第一号)の規定により、ボイラーの吹出しを行うときは、1人で同時に2以上のボイラーの吹出しを行わせてはならない。監督署長の認定による除外規定はない。

【ボイラー及び圧力容器安全規則】

(吹出し)

第31条 事業者は、ボイラーの吹出しを行なうときは、次に定めるところによらなければならない。

 一人で同時に二以上のボイラーの吹出しを行なわないこと。

 吹出しを行なう間は、他の作業を行なわないこと。

 (略)

(4)誤り。ボイラ則第19条は、2以上の出入口を設けなければならないとし、ボイラーを取り扱う労働者が緊急の場合に避難するのに支障がないボイラー室について除外している。ボイラーの伝熱面積の合計が10平方メートル以下であるときを除外してはいない。

【ボイラー及び圧力容器安全規則】

(ボイラー室の出入口)

第19条 事業者は、ボイラー室には、2以上の出入口を設けなければならない。ただし、ボイラーを取り扱う労働者が緊急の場合に避難するのに支障がないボイラー室については、この限りでない。

(5)誤り。温度計の目もりには、当該ボイラーの最高使用温度を示す位置に、見やすい表示をしなければならないとする規定はない。なお、ボイラ則第28条第1項(第五号)は、圧力計又は水高計の目もりには、当該ボイラーの最高使用圧力を示す位置に、見やすい表示をすることを定めている。

【ボイラー及び圧力容器安全規則】

(附属品の管理)

第28条 事業者は、ボイラーの安全弁その他の附属品の管理について、次の事項を行なわなければならない。

一~四 (略)

 圧力計又は水高計の目もりには、当該ボイラーの最高使用圧力を示す位置に、見やすい表示をすること。

六~八 (略)

 (略)

2022年11月15日執筆