問8 電気による労働災害を防止するために事業者が講ずべき措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。
ただし、記述中にある電気機械器具、配線等は、いずれも、対地電圧が50ボルトを超えるものであるものとする。
(1)低圧の仮設の配線又は移動電線については、当該配線又は移動電線の上を車両その他の物が通過すること等による絶縁被覆の損傷のおそれのない状態で使用するときを除き、通路面において使用してはならない。
(2)移動電線に接続する手持型の電灯、仮設の配線又は移動電線に接続する架空つり下げ電灯等には、口金に接触することによる感電の危検及び電球の破損による危険を防止するため、ガードを取り付けなければならない。
(3)アーク溶接(自動溶接を除く。)の作業に使用する溶接棒等のホルダーについては、感電の危険を防止するため必要な絶縁効力及び耐熱性を寄するものでなければ、使用してはならない。
(4)低圧の充電電路の点検、修理等当該充電電路を取り扱う作業を行う場合において、当該作業に従事する労働者について感電の危険が生ずるおそれのあるときは、当該労働者に絶縁用保護具を着用させ、かつ、活線作業用器具を使用させなければならない。
(5)船舶の二重底の内部で著しく狭あいなところにおいて、交流アーク溶接(自動溶接を除く。)の作業を行うときは、交流アーク溶接機用自動電撃防止装置を使用しなければならない。
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、2022年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2022年度(令和04年度) | 問08 | 難易度 | 例年、電気災害防止は平易な問題である。本年も基本的な内容であった。 |
---|---|---|---|
感電災害の防止 | 2 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問8 電気による労働災害を防止するために事業者が講ずべき措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。
ただし、記述中にある電気機械器具、配線等は、いずれも、対地電圧が50ボルトを超えるものであるものとする。
(1)低圧の仮設の配線又は移動電線については、当該配線又は移動電線の上を車両その他の物が通過すること等による絶縁被覆の損傷のおそれのない状態で使用するときを除き、通路面において使用してはならない。
(2)移動電線に接続する手持型の電灯、仮設の配線又は移動電線に接続する架空つり下げ電灯等には、口金に接触することによる感電の危検及び電球の破損による危険を防止するため、ガードを取り付けなければならない。
(3)アーク溶接(自動溶接を除く。)の作業に使用する溶接棒等のホルダーについては、感電の危険を防止するため必要な絶縁効力及び耐熱性を寄するものでなければ、使用してはならない。
(4)低圧の充電電路の点検、修理等当該充電電路を取り扱う作業を行う場合において、当該作業に従事する労働者について感電の危険が生ずるおそれのあるときは、当該労働者に絶縁用保護具を着用させ、かつ、活線作業用器具を使用させなければならない。
(5)船舶の二重底の内部で著しく狭あいなところにおいて、交流アーク溶接(自動溶接を除く。)の作業を行うときは、交流アーク溶接機用自動電撃防止装置を使用しなければならない。
正答(4)
【解説】
労働安全衛生コンサルタント試験の法令の条文問題で、問題文が「○○しなければならない」、又は「○○してはならない」となっている場合、それが安全のために必要なことであれば、正しい肢であると判断してよい。
厚労省の所管する試験で、安全のために必要だが法定されていないようなことを問題にするわけがないのである。
また、問題文に「○○の場合を除き」となっている場合、除外されるのが「危険がない場合」、「安全に作業が行える場合」であれば、正しいと考えてよい。
もし、その肢が間違っているとすれば、その法令は無意味な規制をかけていることになる。そのような問題も出題されるはずがないと考えてよい。
(1)正しい。安衛則第338条により、低圧の仮設の配線又は移動電線については、当該配線又は移動電線の上を車両その他の物が通過すること等による絶縁被覆の損傷のおそれのない状態で使用するときを除き、通路面において使用してはならない。
通路面で使用していれば危険であるから、「通路面において使用してはならない」としていることは正しい。問題は、「当該配線又は移動電線の上を車両その他の物が通過すること等による絶縁被覆の損傷のおそれのない状態で使用するときを除き」の部分だが「おそれがない」のであるから、とりあえず「正しい」と当たりを付けておく。
【労働安全衛生規則】
(仮設の配線等)
第338条 事業者は、仮設の配線又は移動電線を通路面において使用してはならない。ただし、当該配線又は移動電線の上を車両その他の物が通過すること等による絶縁被覆の損傷のおそれのない状態で使用するときは、この限りでない。
(2)正しい。安衛則第330条により、移動電線に接続する手持型の電灯、仮設の配線又は移動電線に接続する架空つり下げ電灯等には、口金に接触することによる感電の危検及び電球の破損による危険を防止するため、ガードを取り付けなければならない。
安全のために必要なことであるから、本肢は正しい。
【労働安全衛生規則】
(手持型電灯等のガード)
第330条 事業者は、移動電線に接続する手持型の電灯、仮設の配線又は移動電線に接続する架空つり下げ電灯等には、口金に接触することによる感電の危険及び電球の破損による危険を防止するため、ガードを取り付けなければならない。
2 事業者は、前項のガードについては、次に定めるところに適合するものとしなければならない。
一 電球の口金の露出部分に容易に手が触れない構造のものとすること。
二 材料は、容易に破損又は変形をしないものとすること。
(3)正しい。安衛則第331条により、アーク溶接(自動溶接を除く。)の作業に使用する溶接棒等のホルダーについては、感電の危険を防止するため必要な絶縁効力及び耐熱性を寄するものでなければ、使用してはならない。
これも、安全のために寄与することであるから、本肢は正しい。
【労働安全衛生規則】
(溶接棒等のホルダー)
第331条 事業者は、アーク溶接等(自動溶接を除く。)の作業に使用する溶接棒等のホルダーについては、感電の危険を防止するため必要な絶縁効力及び耐熱性を有するものでなければ、使用してはならない。
(4)誤り。安衛則第346条第1項は、低圧の充電電路の点検、修理等当該充電電路を取り扱う作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者について感電の危険が生ずるおそれのあるときは、当該労働者に絶縁用保護具を着用させ、又は活線作業用器具を使用させなければならないとしている。
本肢は、一見、安全のために寄与することなので正しいと思えるかもしれない。しかし、法律には、必要のない規制はかけない(※)という原則があることについて考える必要がある。
※ ただし、これは法律的な価値判断において「必要がない」ということである。実務においては、二重の対策を行うことは奨励されるし、むしろ行うべきである。ひとつの対策が何らかの原因で効力を失ったとき、もうひとつの対策が効果を発揮するからである。ドイツの諺にあるように「二重縫いは長持ちする」のである。
感電防止対策は、基本的(例外はある)に何か一つ行っておけばよいとされているのである。このことは覚えておくこと。条文を全て覚えることは不可能であるから、こういう例外を覚えておくことが合格の早道になる。
【労働安全衛生規則】
(低圧活線作業)
第346 事業者は、低圧の充電電路の点検、修理等当該充電電路を取り扱う作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者について感電の危険が生ずるおそれのあるときは、当該労働者に絶縁用保護具を着用させ、又は活線作業用器具を使用させなければならない。
2 (略)
(5)正しい。安衛則第332条の規定により、船舶の二重底の内部で著しく狭あいなところにおいて、交流アーク溶接(自動溶接を除く。)の作業を行うときは、交流アーク溶接機用自動電撃防止装置を使用しなければならない。
これも、安全のために寄与することである(※)から、本肢は正しい。
※ なお、実務においては交流アーク溶接を行う場合は、常に自動電撃防止装置を使用する必要がある。
【労働安全衛生規則】
(交流アーク溶接機用自動電撃防止装置)
第332条 事業者は、船舶の二重底若しくはピークタンクの内部、ボイラーの胴若しくはドームの内部等導電体に囲まれた場所で著しく狭あいなところ又は墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある高さが二メートル以上の場所で鉄骨等導電性の高い接地物に労働者が接触するおそれがあるところにおいて、交流アーク溶接等(自動溶接を除く。)の作業を行うときは、交流アーク溶接機用自動電撃防止装置を使用しなければならない。