労働安全コンサルタント試験 2022年 産業安全関係法令 問07

爆発、火災等の防止のための措置




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2022年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

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2022年度(令和04年度) 問07 難易度 コンサルタント試験で初の個数問題。細かな条文問題ということもあり、難問である。
爆発・火災災害の防止

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問7 爆発、火災等の防止のために事業者が講じた措置に関する次のイ~ホの記述のうち、労働安全衛生法令上、違反となるものの数は(1)~(5)のうちどれか。

イ 換気が不十分な地下室内で溶接作業を行う際、酸素を換気のために使用することとしたが、火災等による危険を防止するため、当該作業の指揮者を選任し、その者の指揮の下に作業を実施させた。

ロ 引火性の油類が残存する密閉されたドラム缶を溶断する際、当該油類が危険物ではないことを確認したので、ドラム缶から残存する油類を除去せず、また、爆発又は火災の妨止のための措置を講じることなく作業させた。

ハ ガス溶接に使用する溶解アセチレン容器は、容器の温度を40度以下に保つとともに、転倒による衝撃や破損事故等を防止するため横置きとし、立てて使用することを禁止した。

ニ 危険物を取り扱う作業場に非常の場合に容易に避難することができる2箇所の出入口を設け、当該出入口の戸は内開戸にした。

ホ 小麦粉のふるい分けを行う設備の稼働中は静電気による火災等の危険があるので、監視人を配置し、当該設備に近接した場所に必要な数の消火器を設置したが、設備稼働中に発生する静電気を除去するための措置は講じなかった。

(1)一つ

(2)二つ

(3)三つ

(4)四つ

(5)五つ

正答(5)

【解説】

問7試験結果

試験解答状況
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労働安全衛生コンサルタント試験の歴史において、初めての個数問題である。司法試験などではよく出題されて受験生から嫌がられているが、旧労働省関係の試験ではこれまでは避けてきたはずだが・・・。試験協会の考え方が変わったのか、行政の担当者の考え方が変わったのか。これまでの常識は通じなくなってきたようだ。

イ 違反となる。安衛則第286条第2項により、本肢の場合はそもそも酸素を換気に用いてはならない。

本肢で、作業指揮者を選任して指揮をさせたこと自体は違反になりようがない。そして、「酸素を換気のために使用することとした」とされているので、この部分も正誤の要素となっていると気付かなければならない。

そして、本問は爆発・火災の防止に関する問題であって、酸素欠乏症に関する問題ではないのだから、ここが怪しいと気付かなければならない。なお、純酸素が、爆発・火災災害防止の観点から、きわめて危険な物質であることは知っておく必要がある。

【労働安全衛生規則】

(通風等の不十分な場所での溶接等)

第286条 事業者は、通風又は換気が不十分な場所において、溶接、溶断、金属の加熱その他火気を使用する作業又は研削といしによる乾式研ま、たがねによるはつりその他火花を発するおそれのある作業を行なうときは、酸素を通風又は換気のために使用してはならない。

 (略)

ロ 違反となる。安衛則第285条により、危険物以外のものであっても、本肢のようなことをしてはならない場合があると気付かなければならない。危険物ではないことを確認したのみでは、本肢のようなことをしてはならない。

【労働安全衛生規則】

(油類等の存在する配管又は容器の溶接等)

第285条 事業者は、危険物以外の引火性の油類若しくは可燃性の粉じん又は危険物が存在するおそれのある配管又はタンク、ドラムかん等の容器については、あらかじめ、これらの危険物以外の引火性の油類若しくは可燃性の粉じん又は危険物を除去する等爆発又は火災の防止のための措置を講じた後でなければ、溶接、溶断その他火気を使用する作業又は火花を発するおそれのある作業をさせてはならない。

 (略)

ハ 違反となる。安衛則第263条(第八号)により、溶解アセチレンの容器は、立てて置く必要がある。なお、高圧ガス保安法で高圧ガスは35℃以下の場所で保管しなければならないと定められていることと混同しないこと。

アセチレンガスは、不安定な物質なので、そのまま高圧でボンベに充填させると危険なのである。そのため、他のガスとはボンベの内部の構造が大きく異なっている。アセチレンガス用のボンベは、ボンベ内にアセトン又はN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を浸潤させた多孔質の固体(マス)を内蔵しているのである。

アセチレンの充填は、マスに浸潤されたアセトンやDMFに溶融させる方法で行われる。このため、アセチレンボンベを横倒しにすると、マスからアセトンやDMFが漏れ出す恐れがあるので、原則として立てておく必要がある。転倒してしまったときは、立ててからすぐに使用せず、しばらく待ってから使用するようにする。また、アセチレンの使用済みのボンベも横倒しにしないようにする。

【労働安全衛生規則】

(ガス等の容器の取扱い)

第263条 事業者は、ガス溶接等の業務(令第20条第十号に掲げる業務をいう。以下同じ。)に使用するガス等の容器については、次に定めるところによらなければならない。

 (略)

 容器の温度を40度以下に保つこと。

三~七 (略)

 溶解アセチレンの容器は、立てて置くこと。

 (略)

ニ 違反となる。安衛則第546条第2項により、本肢の出入口に設ける戸は、引戸又は外開戸でなければならない。このように規定している理由は、内側に開く扉は、緊急のときに人が殺到すると、後ろから押されて開くことができなくなるからである。

【労働安全衛生規則】

(危険物等の作業場等)

第546条 事業者は、危険物その他爆発性若しくは発火性の物の製造又は取扱いをする作業場及び当該作業場を有する建築物の避難階(直接地上に通ずる出入口のある階をいう。以下同じ。)には、非常の場合に容易に地上の安全な場所に避難することができる2以上の出入口を設けなければならない。

 前項の出入口に設ける戸は、引戸又は外開戸でなければならない。

ホ 違反となる。安衛則第287条(第五号)により、本肢の場合は、静電気を除去するための措置を講ずる必要がある。そもそも爆発災害の防止のために監視人を置いてもさしたる意味はないと気付かなければならない。

【労働安全衛生規則】

(静電気の除去)

第287条 事業者は、次の設備を使用する場合において、静電気による爆発又は火災が生ずるおそれのあるときは、接地、除電剤の使用、湿気の付与、点火源となるおそれのない除電装置の使用その他静電気を除去するための措置を講じなければならない。

一~四 (略)

 可燃性の粉状の物のスパウト移送、ふるい分け等を行なう設備

 (略)

2022年11月13日執筆