労働安全コンサルタント試験 2022年 産業安全関係法令 問06

建設機械等による労働災害の防止措置




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 このページは、2022年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2022年度(令和04年度) 問06 難易度 建設機械による危険の防止についての細かな条文問題である。本問は正答できる必要がある。
建設機械災害の防止  3 

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問6 建設機械等による労働災害を防止するために事業者が講ずべき措置に関する次の記述のうち労働安全衛生法令上定められていないものはどれか。

(1)車両系建設機械の運転について誘導者を置くときは、一定の合図を定め、誘導者に当該合図を行わせなければならない。

(2)車両系建設機械を用いて作業を行うときは、その日の作業を開始する前に、ワイヤロープ、チェーン、操作装置及び作業装置の異常の有無について点検を行わなければならない。

(3)高所作業車を用いて作業を行うときは、高所作業車の転倒又は転落による労働者の危険を防止するため、アウトリガーを張り出すこと、地盤の不同沈下を防止すること、路肩の崩壊を防止すること等必要な措置を講じなければならない。

(4)コンクリートポンプ車を用いて作業を行う場合において、輸送管等の組立て又は解体を行うときは、作業の方法、手順等を定め、これらを労働者に周知させ、かつ、作業を指揮する者を指名して、その直接の指揮の下に作業を行わせなければならない。

(5)くい打機、くい抜機若しくはボーリングマシンのみぞ車若しくは滑車装置又はこれらの取付部の破損によって、ワイヤロープがはね、又はみぞ車、滑車装置等が飛来する危険を防止するため、運転中のくい打機、くい抜機又はボーリングマシンの巻上げ用ワイヤロープの屈曲部の内側に労働者を立ち入らせてはならない。

正答(2)

【解説】

問6試験結果

試験解答状況
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(1)定められている。安衛則第159条第1項の規定により、車両系建設機械の運転について誘導者を置くときは、一定の合図を定め、誘導者に当該合図を行わせなければならない。

合図を個々の事業者が個別に定めなければならないのは、国内で統一された合図が存在していないためである。本来は、JIS のような統一的な規格が合図等についても存在していればよいのだが、これまでその必要性が感じられなかったためであろう。

【労働安全衛生規則】

(合図)

第159条 事業者は、車両系建設機械の運転について誘導者を置くときは、一定の合図を定め、誘導者に当該合図を行なわせなければならない。

 (略)

安衛則について、一定の合図を定めなければならないのは、次のような場合である。

なお、クレーン則等でも、合図に関する規定はあるので、留意して欲しい。

  • 機械の運転を開始する場合において、労働者に危険を及ぼすおそれのあるとき
  • 車両系荷役運搬機械等について誘導者を置くとき
  • 車両系木材伐出機械について誘導者を置くとき
  • 林業架線作業を行うとき(電話、電鈴等の装置を設け、又は一定の合図を定める。)
  • 簡易林業架線作業を行うとき(電話、電鈴等の装置を設け、又は一定の合図を定める。)
  • 車両系建設機械の運転について誘導者を置くとき
  • パワー・ショベルによる荷のつり上げの作業を行う場合
  • コンクリートポンプ車を用いて作業を行うとき(電話、電鈴等の装置を設け、又は一定の合図を定める。)
  • 高所作業車を用いて作業を行う場合で、作業床以外の箇所で作業床を操作するとき
  • 高所作業車(作業床において走行の操作をする構造のものを除く。)を、平坦で堅固な場所において作業床に労働者を乗せて走行させるとき
  • 揚貨装置を用いて作業を行なうとき(揚貨装置の運転について)
  • 伐木の作業を行なうとき(伐倒について)
  • コンクリート造の工作物(その高さが五メートル以上であるものに限る。)の解体又は破壊の作業を行う場合において、外壁、柱等の引倒し等の作業を行うとき(引倒し等について)
  • 特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われる場合において、当該作業がクレーン等(クレーン、移動式クレーン、デリック、簡易リフト又は建設用リフトで、クレーン則の適用を受けるものをいう。以下同じ。)を用いて行うものであるときは、当該クレーン等の運転について
表:安衛則において合図を定めるべき場合
対象の作業 義務者 目的 合図の対象 義務の内容 合図等実施者 条文
機械の運転を開始する場合において、労働者に危険を及ぼすおそれのあるとき 事業者 一定の合図を定める。 事業者が指名 安衛則
第104条
車両系荷役運搬機械等について誘導者を置くとき 事業者 一定の合図を定める 誘導者 安衛則
第151条の8
車両系木材伐出機械について誘導者を置くとき 事業者 一定の合図を定める 誘導者 安衛則
第151条の94
林業架線作業を行うとき 事業者 機械集材装置又は運材索道の運転者と荷掛け又は荷外しをする者との間の連絡を確実にするため 電話、電鈴等の装置を設け、又は一定の合図を定める 事業者が指名 安衛則
第151条の141
簡易林業架線作業を行うとき 事業者 簡易架線集材装置の運転者と荷掛け又は荷外しをする者との間の連絡を確実にするため 電話、電鈴等の装置を設け、又は一定の合図を定める 事業者が指名 安衛則
第151条の156
車両系建設機械の運転について誘導者を置くとき 事業者 一定の合図を定める 誘導者 安衛則
第159条
パワー・ショベルによる荷のつり上げの作業を行う場合 事業者 労働者とつり上げた荷との接触、つり上げた荷の落下又は車両系建設機械の転倒若しくは転落による労働者の危険を防止するため 荷のつり上げの作業について 一定の合図を定める 事業者が指名 安衛則
第164条
コンクリートポンプ車を用いて作業を行うとき 事業者 作業装置の操作を行う者とホースの先端部を保持する者との間の連絡を確実にするため 電話、電鈴等の装置を設け、又は一定の合図を定める 事業者が指名 安衛則
第171条の2
高所作業車を用いて作業を行う場合で、作業床以外の箇所で作業床を操作するとき 事業者 作業床上の労働者と作業床以外の箇所で作業床を操作する者との間の連絡を確実にするため 一定の合図を定める 事業者が指名 安衛則
第194条の12
平坦で堅固な場所において、高所作業車(作業床において走行の操作をする構造のものを除く。)の作業床に労働者を乗せて走行させるとき 事業者 一定の合図を定める 高所作業車を誘導する誘導者 安衛則
第194条の20
揚貨装置を用いて作業を行なうとき 事業者 揚貨装置の運転について 一定の合図を定める 揚貨装置ごとに事業者が指名 安衛則
第467条
伐木の作業を行なうとき 伐倒について 一定の合図を定め、作業に関係がある労働者に周知する 安衛則
第479条
コンクリート造の工作物(その高さが五メートル以上であるものに限る。)の解体又は破壊の作業を行う場合において、外壁、柱等の引倒し等の作業を行うとき 事業者 引倒し等について 一定の合図を定め、作業に関係がある労働者に周知する 安衛則
第517条の16
その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われる場合で、その作業がクレーン等(クレーン、移動式クレーン、デリック、簡易リフト又は建設用リフトで、クレーン則の適用を受けるものをいう。)を用いて行うものであるとき 特定元方事業者 クレーン等の運転について 合図を統一的に定め、関係請負人に周知する 安衛則
第639条

(2)定められていない。安衛則第 170 条により、車両系建設機械を用いて作業を行うときは、その日の作業を開始する前に、ブレーキ及びクラツチの機能について点検を行わなければならない。

一方、「ワイヤロープ、チェーン、操作装置及び作業装置の異常の有無」については、定期自主検査の月次検査の点検項目となっている(※)

※ ワイヤロープやチェーンは、簡単に損傷するようなものではないので、月に一度で十分だと考えられたのであろう。もっとも厚労省の「建設業に従事する外国人労働者向け教材」の「【建設機械施工業務】 建設機械の基本と点検等」の中で、操作装置(ブレーキ、クラッチ等)及び作業装置(リフトアームやブーム、バケットなど)の異常の有無については作業の開始前に点検をすることとされている。

また、鳥取市が「営繕工事に係る工事書式集」として発注先企業向けに「車輌系建設機械作業開始前点検表」を公表しているが、ここには作業装置とワイヤロープの点検を行うこととされている。北海道建設業協会も「建設工事現場安全関係参考書式集」の「8 点検表」に「車両系建設機械始業前・月例点検表」を公表しているが、作業装置の点線が含まれている。

確かに、法令では「ワイヤロープ、チェーン、操作装置及び作業装置の異常の有無」については作業開始前点検の対象とはなっていないが、実務では点検を行うこととした方がよさそうだ。

ただし、車両系建設機械で「ワイヤロープ又はチェーン」が使われているものは、ないとはいわないが多くはない。たとえば、ブル・ドーザーやほとんどのパワー・シヨベルにワイヤロープやチェーンは使用されていない。

【労働安全衛生規則】

第168条 事業者は、車両系建設機械については、1月以内ごとに1回、定期に、次の事項について自主検査を行わなければならない。ただし、1月を超える期間使用しない車両系建設機械の当該使用しない期間においては、この限りでない。

 ブレーキ、クラツチ、操作装置及び作業装置の異常の有無

 ワイヤロープ及びチエーンの損傷の有無

 バケツト、ジツパー等の損傷の有無

 第百七十一条の四の特定解体用機械にあつては、逆止め弁、警報装置等の異常の有無

 事業者は、前項ただし書の車両系建設機械については、その使用を再び開始する際に、同項各号に掲げる事項について自主検査を行わなければならない。

(作業開始前点検)

第170条 事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、その日の作業を開始する前に、ブレーキ及びクラツチの機能について点検を行なわなければならない。

表:安衛則において点検するべき項目
点検の対象 作業開始前点検 定期自主検査
月次 年次
以下「建設機械等」
車両系建設機械 ブレーキ及びクラツチの機能

一 ブレーキ、クラツチ、操作装置及び作業装置の異常の有無

二 ワイヤロープ及びチエーンの損傷の有無

三 バケツト、ジツパー等の損傷の有無

四 第171条の4の特定解体用機械にあつては、逆止め弁、警報装置等の異常の有無

一 圧縮圧力、弁すき間その他原動機の異常の有無

二 クラツチ、トランスミツシヨン、プロペラシヤフト、デフアレンシヤルその他動力伝達装置の異常の有無

三 起動輪、遊動輪、上下転輪、履帯、タイヤ、ホイールベアリングその他走行装置の異常の有無

四 かじ取り車輪の左右の回転角度、ナツクル、ロツド、アームその他操縦装置の異常の有無

五 制動能力、ブレーキドラム、ブレーキシユーその他ブレーキの異常の有無

六 ブレード、ブーム、リンク機構、バケツト、ワイヤロープその他作業装置の異常の有無

七 油圧ポンプ、油圧モーター、シリンダー、安全弁その他油圧装置の異常の有無

八 電圧、電流その他電気系統の異常の有無

九 車体、操作装置、ヘツドガード、バツクストツパー、昇降装置、ロツク装置、警報装置、方向指示器、灯火装置及び計器の異常の有無

高所作業車 制動装置、操作装置及び作業装置の機能

一 制動装置、クラッチ及び操作装置の異常の有無

二 作業装置及び油圧装置の異常の有無

三 安全装置の異常の有無

一 圧縮圧力、弁すき間その他原動機の異常の有無

二 クラッチ、トランスミッション、プロペラシャフト、デファレンシャルその他動力伝達装置の異常の有無

三 起動輪、遊動輪、上下転輪、履帯、タイヤ、ホイールベアリングその他走行装置の異常の有無

四 かじ取り車輪の左右の回転角度、ナックル、ロッド、アームその他操縦装置の異常の有無

五 制動能力、ブレーキドラム、ブレーキシューその他制動装置の異常の有無

六 ブーム、昇降装置、屈折装置、平衡装置、作業床その他作業装置の異常の有無

七 油圧ポンプ、油圧モーター、シリンダー、安全弁その他油圧装置の異常の有無

八 電圧、電流その他電気系統の異常の有無

九 車体、操作装置、安全装置、ロック装置、警報装置、方向指示器、灯火装置及び計器の異常の有無

以下「車両系荷役運搬機械等」
フオークリフト

一 制動装置及び操縦装置の機能

二 荷役装置及び油圧装置の機能

三 車輪の異常の有無

四 前照灯、後照灯、方向指示器及び警報装置の機能

一 制動装置、クラツチ及び操縦装置の異常の有無

二 荷役装置及び油圧装置の異常の有無

三 ヘツドガード及びバツクレストの異常の有無

一 圧縮圧力、弁すき間その他原動機の異常の有無

二 デフアレンシヤル、プロペラシヤフトその他動力伝達装置の異常の有無

三 タイヤ、ホイールベアリングその他走行装置の異常の有無

四 かじ取り車輪の左右の回転角度、ナツクル、ロツド、アームその他操縦装置の異常の有無

五 制動能力、ブレーキドラム、ブレーキシユーその他制動装置の異常の有無

六 フオーク、マスト、チエーン、チエーンホイールその他荷役装置の異常の有無

七 油圧ポンプ、油圧モーター、シリンダー、安全弁その他油圧装置の異常の有無

八 電圧、電流その他電気系統の異常の有無

九 車体、ヘツドガード、バツクレスト、警報装置、方向指示器、灯火装置及び計器の異常の有無

シヨベルローダー等

一 制動装置及び操縦装置の機能

二 荷役装置及び油圧装置の機能

三 車輪の異常の有無

四 前照灯、後照灯、方向指示器及び警報装置の機能

一 制動装置、クラツチ及び操縦装置の異常の有無

二 荷役装置及び油圧装置の異常の有無

三 ヘツドガードの異常の有無

一 原動機の異常の有無

二 動力伝達装置及び走行装置の異常の有無

三 制動装置及び操縦装置の異常の有無

四 荷役装置及び油圧装置の異常の有無

五 電気系統、安全装置及び計器の異常の有無

ストラドルキヤリヤー

一 制動装置及び操縦装置の機能

二 荷役装置及び油圧装置の機能

三 車輪の異常の有無

四 前照灯、後照灯、方向指示器及び警報装置の機能

一 制動装置、クラツチ及び操縦装置の異常の有無

二 荷役装置及び油圧装置の異常の有無

一 原動機の異常の有無

二 動力伝達装置及び走行装置の異常の有無

三 制動装置及び操縦装置の異常の有無

四 荷役装置及び油圧装置の異常の有無

五 電気系統、安全装置及び計器の異常の有無

不整地運搬車

一 制動装置及び操縦装置の機能

二 荷役装置及び油圧装置の機能

三 履帯又は車輪の異常の有無

四 前照灯、尾灯、方向指示器及び警報装置の機能

一 制動装置、クラッチ及び操縦装置の異常の有無

二 荷役装置及び油圧装置の異常の有無

一 圧縮圧力、弁すき間その他原動機の異常の有無

二 クラッチ、トランスミッション、ファイナルドライブその他動力伝達装置の異常の有無

三 起動輪、遊動輪、上下転輪、履帯、タイヤ、ホイールベアリングその他走行装置の異常の有無

四 ロッド、アームその他操縦装置の異常の有無

五 制動能力、ブレーキドラム、ブレーキシューその他制動装置の異常の有無

六 荷台、テールゲートその他荷役装置の異常の有無

七 油圧ポンプ、油圧モーター、シリンダー、安全弁その他油圧装置の異常の有無

八 電圧、電流その他電気系統の異常の有無

九 車体、警報装置、方向指示器、灯火装置及び計器の異常の有無

(3)定められている。安衛則第194条の11の規定により、高所作業車を用いて作業を行うときは、高所作業車の転倒又は転落による労働者の危険を防止するため、アウトリガーを張り出すこと、地盤の不同沈下を防止すること、路肩の崩壊を防止すること等必要な措置を講じなければならない。

【労働安全衛生規則】

(転落等の防止)

第194条の11 事業者は、高所作業車を用いて作業を行うときは、高所作業車の転倒又は転落による労働者の危険を防止するため、アウトリガーを張り出すこと、地盤の不同沈下を防止すること、路肩の崩壊を防止すること等必要な措置を講じなければならない。

(4)定められている。安衛則第171条の3の規定により、コンクリートポンプ車を用いて作業を行う場合において、輸送管等の組立て又は解体を行うときは、作業の方法、手順等を定め、これらを労働者に周知させ、かつ、作業を指揮する者を指名して、その直接の指揮の下に作業を行わせなければならない。

【労働安全衛生規則】

(作業指揮)

第171条の3 事業者は、輸送管等の組立て又は解体を行うときは、作業の方法、手順等を定め、これらを労働者に周知させ、かつ、作業を指揮する者を指名して、その直接の指揮の下に作業を行わせなければならない。

(5)定められている。安衛則第187条の規定により、くい打機、くい抜機若しくはボーリングマシンのみぞ車若しくは滑車装置又はこれらの取付部の破損によって、ワイヤロープがはね、又はみぞ車、滑車装置等が飛来する危険を防止するため、運転中のくい打機、くい抜機又はボーリングマシンの巻上げ用ワイヤロープの屈曲部の内側に労働者を立ち入らせてはならない。

【労働安全衛生規則】

(立入禁止)

第187条 事業者は、くい打機、くい抜機若しくはボーリングマシンのみぞ車若しくは滑車装置又はこれらの取付部の破損によつて、ワイヤロープがはね、又はみぞ車、滑車装置等が飛来する危険を防止するため、運転中のくい打機、くい抜機又はボーリングマシンの巻上げ用ワイヤロープの屈曲部の内側に労働者を立ち入らせてはならない。

2022年11月13日執筆