問22 可燃性ガスの爆発に関する次のイ~ニの記述について、適切でないものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。
イ 可燃性ガスの爆発範囲は、ガスの種類によって異なる。
ロ 電気機械器具の内圧防爆構造は、可燃性ガスが容器の内部に侵入して爆発を生じた場合に、その容器が爆発圧力に耐え、かつ、爆発による火炎がその容器の外部の可燃性ガスに点火しないようにしたものである。
ハ 可燃性ガスの発火に必要な最小エネルギーは、可燃性ガスと空気の混合比率によって変化する。
ニ 可燃性ガスの爆発を防ぐために加える不活性ガスは、比熱が小さい方が爆発を防ぐ効果が大きい。
(1)イ ロ
(2)イ ハ
(3)ロ ハ
(4)ロ ニ
(5)ハ ニ
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、2022年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。
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2022年度(令和04年度) | 問22 | 難易度 | 可燃性ガスの爆発に関する基本的な知識問題。難易度は4に近い3だが、正答して欲しい問題。 |
---|---|---|---|
可燃性ガスの爆発 | 3 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問22 可燃性ガスの爆発に関する次のイ~ニの記述について、適切でないものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。
イ 可燃性ガスの爆発範囲は、ガスの種類によって異なる。
ロ 電気機械器具の内圧防爆構造は、可燃性ガスが容器の内部に侵入して爆発を生じた場合に、その容器が爆発圧力に耐え、かつ、爆発による火炎がその容器の外部の可燃性ガスに点火しないようにしたものである。
ハ 可燃性ガスの発火に必要な最小エネルギーは、可燃性ガスと空気の混合比率によって変化する。
ニ 可燃性ガスの爆発を防ぐために加える不活性ガスは、比熱が小さい方が爆発を防ぐ効果が大きい。
(1)イ ロ
(2)イ ハ
(3)ロ ハ
(4)ロ ニ
(5)ハ ニ
正答(4)
【解説】
イ 適切である。可燃性ガスの爆発範囲は、ガスの種類のみならず、酸素の濃度、混合ガスの圧力によっても変化する。また、温度によっても、若干、変化する。
次表に各種のガスの空気1気圧の下での爆発限界を示す。爆発下限値の小さなガスは、少ない量で爆発範囲に達するため、より危険であると言える。
なお、アセチレン、エチレンオキシド(酸化エチレン)は爆発上限界が100 vol%となっている。すなわち、酸素がなくても分解反応によって爆発する。
ガス及び蒸気 | 分子式 | 燃焼(爆発)範囲[vol%] | |
---|---|---|---|
爆発下限界 | 爆発上限界 | ||
アセチレン | C2H2 | 25 | 100 |
水素 | H2 | 4.0 | 75 |
エチレン | C2H4 | 2.7 | 36 |
エチレンオキシド | C2H4O | 3.6 | 100 |
プロパン | C3H8 | 2.1 | 9.5 |
プロピレン | C3H6 | 2.0 | 11 |
n-ブタン | C4H10 | 1.6 | 8.5 |
i-ブタン | C4H10 | 1.8 | 8.4 |
LPG(i-ブタン基準) | - | イソブタン基準 | |
メタン | CH4 | 5.0 | 15 |
都市ガス | - | メタン基準 |
労働安全衛生総合研究所「工場電気設備防爆指針」(2006)による。ただし、i-ブタンは同指針に記述がないため国際化学物質安全性カードによった。
ロ 適切ではない。電気機械器具防爆構造規格第1条(第四号)により、電気機械器具の内圧防爆構造とは、容器の内部に保護気体を圧入して、外部の圧力を超える値に内圧を保つことによって爆発性ガスが侵入するのを防止した防爆構造である。
本肢は、同条第三号の耐圧防爆構造の説明である。
【電気機械器具防爆構造規格】
第1条 この告示において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一及び二 (略)
三 耐圧防爆構造 全閉構造であつて、可燃性のガス(以下「ガス」という。)又は引火性の物の蒸気(以下「蒸気」という。)が容器の内部に侵入して爆発を生じた場合に、当該容器が爆発圧力に耐え、かつ、爆発による火炎が当該容器の外部のガス又は蒸気に点火しないようにしたものをいう。
四 内圧防爆構造 容器の内部に空気、窒素、炭酸ガス等の保護ガスを送入し、又は封入することにより、当該容器の内部にガス又は蒸気が侵入しないようにした構造をいう。
五 安全増防爆構造 電気機械器具を構成する部分(電気を通じない部分を除く。)であつて、当該電気機械器具が正常に運転され、又は通電されている場合に、火花若しくはアークを発せず、又は高温となつて点火源となるおそれがないものについて、絶縁性能並びに温度の上昇による危険及び外部からの損傷等に対する安全性を高めた構造をいう。
六 油入防爆構造 電気機械器具を構成する部分であつて、火花若しくはアークを発し、又は高温となつて点火源となるおそれがあるものを絶縁油の中に収めることにより、ガス又は蒸気に点火しないようにした構造をいう。
七 本質安全防爆構造 電気機械器具を構成する部分の発生する火花、アーク又は熱が、ガス又は蒸気に点火するおそれがないことが点火試験等により確認された構造をいう。
八 樹脂充てん防爆構造 電気機械器具を構成する部分であつて、火花若しくはアークを発し、又は高温となつて点火源となるおそれがあるものを樹脂の中に囲むことにより、ガス又は蒸気に点火しないようにした構造をいう。
九 非点火防爆構造 電気機械器具を構成する部分が、火花若しくはアークを発せず、若しくは高温となつて点火源となるおそれがないようにした構造又は火花若しくはアークを発し、若しくは高温となつて点火源となるおそれがある部分を保護することにより、ガス若しくは蒸気に点火しないようにした構造(第三号から前号までに規定する防爆構造を除く。)をいう。
十 特殊防爆構造 第三号から前号までに規定する防爆構造以外の防爆構造であつて、ガス又は蒸気に対して防爆性能を有することが試験等により確認されたものをいう。
十一 粉じん防爆普通防じん構造 接合面にパッキンを取り付けること、接合面の奥行きを長くすること等の方法により容器の内部に粉じんが侵入し難いようにし、かつ、当該容器の温度の上昇を当該容器の外部の可燃性の粉じん(爆燃性の粉じんを除く。)に着火しないように制限した構造をいう。
十二 粉じん防爆特殊防じん構造 接合面にパッキンを取り付けること等により容器の内部に粉じんが侵入しないようにし、かつ、当該容器の温度の上昇を当該容器の外部の爆燃性の粉じんに着火しないように制限した構造をいう。
一三~二十三 (略)
ハ 適切である。最小着火エネルギーは、可燃性ガスの濃度、混合気の温度、混合気の圧力によって変化(※)する。なお、イの解説にも示したが、可燃性ガスの発火に必要な最小エネルギーは、純酸素の中では空気中よりも2桁程度小さくなることも覚えておく必要がある。
※ 最小着火エネルギーは、メタンでは当量比0.9、エタン当量比1.2程度で最少となる。可燃性ガスの濃度がそれより大きくても小さくても最小着火エネルギーは大きくなる。
また、最小着火エネルギー H は、混合ガスの初期温度T0との関係は H=Cexp(kT0)(C及びkは可燃性物質による定数)、圧力Pとの関係は H・Pb = 一定(bは物質によって定まり、炭化水素類は一般に2程度だが一定ではない)となる。
ニ 適切ではない。不活性ガスの比熱が小さければ、簡単に温度が上がってしまい、温度を下げることによる消化の効果が期待できなくなる。比熱が大きい方が熱による温度上昇を低くすることができる。