労働安全コンサルタント試験 2022年 産業安全一般 問03

各種材料の特性




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2022年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

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2022年度(令和04年度) 問03 難易度 各種材料の特性に関する基本的な知識問題である。合否を分けるレベルの問題。
各種材料の特性

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問3 各種材料の特性に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)炭素鋼の主成分は鉄であるが、炭素、けい素、マンガン、りん及び硫黄が含まれており、この中でりん及び硫黄は炭素鋼のじん性や溶接性を損なう元素である。

(2)ステンレス鋼は、鉄にクロムなどを含有させた合金鋼で、表面に不動態被膜という非常に薄い保護被膜を形成し、びにくくいつまでも美しい表面状態を維持する。

(3)樹脂(プラスチック)は熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂に大別され、熱硬化性樹脂は熱や触媒によって硬化すると加熱されても軟化することはないが、熱可塑性樹脂はいったん硬化していても、再度加熱されると軟化し、冷却されると硬化する。

(4)コンクリートは、セメント、砂、砂利又は砕石を適当な割合で混ぜ、水と練り合わせて硬化させたもので、強さは通常、圧縮強度によって表され、水セメント比が大きいほど圧縮強度は小さい。

(5)黄銅は銅とスズとの合金、青銅は銅と亜鉛との合金であり、一般に黄銅の方が青銅よりも耐食性が高い。

正答(5)

【解説】

問3試験結果

試験解答状況
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本問は2013年の問4と類似している肢がいくつかある。過去問を学習することの重要性がここからも分かる。

(1)適切でないとはいえない。炭素鋼の主成分が鉄であることは当然であるが、炭素、けい素、マンガン、りん及び硫黄が含まれている。これは、「鋼の5元素」と呼ばれており、鉄鉱石の成分に含まれていた成分で、鋼の中には必ず含まれている。

この中でりんは、対候性を改善する効果があるものの、粒界に偏析しやすく強度、靭性、溶接性を低下させるため、できるだけ除去することが望ましい。また、硫黄も偏析しやすく、靭性、溶接性、加工性などに悪影響を及ぼすので、できるだけ取り除くことが普通であるが、マンガンと結合して被削性を改善させるために添加される(硫黄快削鋼)こともある。

(2)適切でないとはいえない。ステンレス鋼は、炭素が1.2%以下、クロムが10.5%以上含む合金鋼である。ステンレス(さびない)という名の通り、クロムが酸化して表面に不動態被膜という1 nm 程度の非常に薄い保護被膜を形成するため、錆に強い性質を有する。

(3)適切でないとはいえない。熱可塑性樹脂とは高温になると何度でも柔らかくなる樹脂である。我々の身の回りの多くのプラスチックは熱可塑性である。

一方、熱硬化性樹脂とは、一度、高温にして柔らかくして形成すると、再び高温にしても柔らかくならないものをいう。ICのパッケージに使用される樹脂は熱硬化性である。本肢は、言葉の意味から本肢は正しいと分かるだろう。

(4)適切でないとはいえない。なお、水セメント比とは、水とセメントの比率である。本肢については、2013年の問4を参照して欲しい。

(5)適切ではない。黄銅と青銅の説明が逆になっている。正しくは、黄銅(真鍮しんちゅう)は主に銅(65%)と亜鉛(35%)の合金である。青銅(砲金)は、銅と錫の合金であるすず青銅と、銅と錫とリンの合金であるリン青銅がある。また、一般に青銅の方が黄銅よりも耐食性が高い。

2022年11月29日執筆