労働安全コンサルタント試験 2021年 産業安全関係法令 問12

機械等に関する安衛法令上の規制




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 このページは、2021年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2021年度(令和03年度) 問12 難易度 機械等の検査に関する基本的な問題である。正答できなければならない問題である。
機械等に関する規定

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問12 機械等の規制に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、正しいものはどれか。

(1)構造検査を受けた後1年以上設置されなかったボイラーを設置しようとする者は、労働基準監督署長の変更検査を受けなければならない。

(2)つり上げ荷重が1トンのスタッカー式クレーンを製造しようとする者は、その製造しようとするクレーンについて、あらかじめ、都道府県労働局長の許可を受けなければならない。ただし、既に許可を受けているクレーンと型式が同一であるクレーンについてはこの限りでない。

(3)ゴンドラを設置した者は、労働基準監督署長の落成検査を受けなければならない。

(4)第二種圧力容器を製造し、又は輸入した者は、登録型式検定機関の型式検定を受けなければならない。

(5)移動式クレーンを輸入した者は、当該移動式クレーンの構造が厚生労働大臣が定める基準に適合していることを指定外国検査機関が明らかにする書面を都道府県労働局長に提出すれば、都道府県労働局長の使用検査を受ける必要はない。

正答(2)

【解説】

問12試験結果

試験解答状況
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(1)誤り。構造検査を受けた後1年以上設置されなかったボイラーを設置しようとする者は、ボイラ則第 12 条第1項(第二号)の規定により、登録製造時等検査機関の使用検査を受けなければならない。労働基準監督署長の変更検査ではない。

ボイラに係る変更検査は、(文字通り)ボイラについて、法令で定める部分又は設備に変更を加えた者が受ける検査である。

【労働安全衛生法】

(製造時等検査等)

第38条 特定機械等を製造し、若しくは輸入した者、特定機械等で厚生労働省令で定める期間設置されなかつたものを設置しようとする者又は特定機械等で使用を廃止したものを再び設置し、若しくは使用しようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該特定機械等及びこれに係る厚生労働省令で定める事項について、当該特定機械等が、特別特定機械等(特定機械等のうち厚生労働省令で定めるものをいう。以下同じ。)以外のものであるときは都道府県労働局長の、特別特定機械等であるときは厚生労働大臣の登録を受けた者(以下「登録製造時等検査機関」という。)の検査を受けなければならない。ただし、輸入された特定機械等及びこれに係る厚生労働省令で定める事項(次項において「輸入時等検査対象機械等」という。)について当該特定機械等を外国において製造した者が次項の規定による検査を受けた場合は、この限りでない。

2及び3 (略)

【ボイラー及び圧力容器安全規則】

(使用検査)

第12条 次の者は、法第38条第1項の規定により、登録製造時等検査機関の検査を受けなければならない。

 (略)

 構造検査又はこの項の検査を受けた後1年以上(設置しない期間の保管状況が良好であると都道府県労働局長が認めたボイラーについては2年以上)設置されなかつたボイラーを設置しようとする者

 (略)

2~6 (略)

(変更届)

第41条 事業者は、ボイラーについて、次の各号のいずれかに掲げる部分又は設備を変更しようとするときは、法第88条第1項の規定により、ボイラー変更届(様式第二十号)にボイラー検査証及びその変更の内容を示す書面を添えて、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

一~四 (略)

(変更検査)

第42条 ボイラーについて前条各号のいずれかに掲げる部分又は設備に変更を加えた者は、法第38条第3項の規定により、当該ボイラーについて所轄労働基準監督署長の検査を受けなければならない。ただし、所轄労働基準監督署長が当該検査の必要がないと認めたボイラーについては、この限りでない。

2及び3 (略)

(2)正しい。つり上げ荷重が1トンのスタッカー式クレーンを製造しようとする者は、その製造しようとするクレーンについて、あらかじめ、都道府県労働局長の許可を受けなければならない。ただし、既に許可を受けているクレーンと型式が同一であるクレーンについてはこの限りでない。

製造許可(安衛法第 37 条)の対象となるものは、安衛令第12条第1項に定められているが、つり上げ荷重が1トン以上のスタツカー式クレーンは同項(第三号)の対象となっている。また、クレーン等安全規則第3条第1項ただし書により、既に許可を受けているクレーンと型式が同一であるクレーンについては除かれている。

【労働安全衛生法】

(製造の許可)

第37条 特に危険な作業を必要とする機械等として別表第一に掲げるもので、政令で定めるもの(以下「特定機械等」という。)を製造しようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、都道府県労働局長の許可を受けなければならない。

 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(特定機械等)

12条 法第37条第1項の政令で定める機械等は、次に掲げる機械等(本邦の地域内で使用されないことが明らかな場合を除く。)とする。

一及び二 (略)

 つり上げ荷重が3トン以上(スタツカー式クレーンにあつては、1トン以上)のクレーン

四~八 (略)

 (略)

【クレーン等安全規則】

(製造許可)

第3条 クレーン(令第12条第1項第三号のクレーンに限る。以下本条から第10条まで、第16条及び第17条並びにこの章第4節及び第5節において同じ。)を製造しようとする者は、その製造しようとするクレーンについて、あらかじめ、その事業場の所在地を管轄する都道府県労働局長(以下「所轄都道府県労働局長」という。)の許可を受けなければならない。ただし、既に当該許可を受けているクレーンと型式が同一であるクレーン(以下この章において「許可型式クレーン」という。)については、この限りでない。

 (略)

(3)誤り。ゴンドラの設置は、ほとんどの場合、それほど大掛かりなことをするわけではない。たんにビルの屋上にそのまま置いたり、簡単なレールを設置して置くだけのことである。そのため、ゴンドラ則第 10 条により、設置した者には、労働基準監督署長に設置届を提出することが義務付けられているのみである。

ゴンドラには落成検査という概念はなく、製造時の製造検査、輸入したり検査後一定の期間を経て設置する場合等の使用検査が定められている。

【ゴンドラ安全規則】

(製造検査)

第4条 ゴンドラを製造した者は、労働安全衛生法(以下「法」という。)第38条第1項の規定により、当該ゴンドラについて、所轄都道府県労働局長の検査を受けなければならない。

2~5 (略)

(使用検査)

第6条 次の者は、法第38条第1項の規定により、当該ゴンドラについて、都道府県労働局長の検査を受けなければならない。

 ゴンドラを輸入した者

 製造検査又はこの項若しくは次項の検査(以下「使用検査」という。)を受けた後設置しないで、1年以上(設置しない期間の保管状況が良好であると都道府県労働局長が認めたゴンドラについては2年以上)経過したゴンドラを設置しようとする者

 使用を廃止したゴンドラを再び設置し、又は使用しようとする者

2~6 (略)

(設置届)

第10条 事業者は、ゴンドラを設置しようとするときは、法第88条第1項の規定により、ゴンドラ設置届(様式第十号)にゴンドラ明細書(製造検査済又は使用検査済の印を押したもの)、ゴンドラ検査証及び次の事項を記載した書面を添えて、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

一~三 (略)

(4)誤り。型式検定(安衛法第44条の2)の対象となるのは、安衛令第14条の2に定められているが、第二種圧力容器は対象ではない。

【労働安全衛生法】

(型式検定)

第44条の2 第42条の機械等のうち、別表第四に掲げる機械等で政令で定めるものを製造し、又は輸入した者は、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣の登録を受けた者(以下「登録型式検定機関」という。)が行う当該機械等の型式についての検定を受けなければならない。ただし、当該機械等のうち輸入された機械等で、その型式について次項の検定が行われた機械等に該当するものは、この限りでない。

2~7 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(型式検定を受けるべき機械等)

14条の2 法第44条の2第1項の政令で定める機械等は、次に掲げる機械等(本邦の地域内で使用されないことが明らかな場合を除く。)とする。

一~十四 (略)

(5)誤り。クレーン則第 57 条第5項には、「移動式クレーンを輸入し、又は外国において製造した者が使用検査を受けようとするときは、前項の申請書に当該申請に係る移動式クレーンの構造が法第37条第2項の厚生労働大臣の定める基準(移動式クレーンの構造に係る部分に限る。)に適合していることを厚生労働大臣が指定する者(外国に住所を有するものに限る。)が明らかにする書面を添付することができる」とされている。

しかし、この制度は、外国で製造された機械等を日本に輸入する場合に、安衛法に基づく検査・検定を受ける必要はあるが、基準等適合証明書を添付することにより、検査・検定を迅速化・簡略化することが可能となる仕組みにすぎない(平成21年3月31日基安安発0331001号参照)。従って、使用検査を受ける必要はないとする本肢は誤りである。(2017年問12の(2)にボイラについてではあるが、同種の問題が出題されている。)

しかし、現実には使用検査は書類審査だけで済んでしまうので、実質的な意味での「検査」は行わないのである。このため、この規定ができたとき、日本での使用検査は必要がないという認識が広まっていたことも事実である。

個人的な経験だが、実はこの規定ができたとき、私は担当の係長だった。ある超大国の日本へ機械を輸出しようとしている企業の代理人弁護士から問い合わせを受けて、制度の説明をしたことがあるのだが、まったく理解されなかった。30分近く電話で説明をするということが数十回になり、さすがに辟易へきえきした。日本の輸出先に「使用検査は必要ない」と説明していたため、引っ込みがつかなかったらしい。

結局、日本の輸入元の代理人弁護士から電話があり、先述した通達の内容を説明した(この代理人は通達をあらかじめ入手していた)ところ、笑って「なるほど」と言ってあっさりとご理解を頂いた。実質的には必要がないようにするが、法律上の形式的な制度上は必要があるままにするという使い分けは、日本人には理解できても、国際的にはまったく理解されないようだ😅。

【労働安全衛生法】

(製造の許可)

第37条 特に危険な作業を必要とする機械等として別表第一に掲げるもので、政令で定めるもの(以下「特定機械等」という。)を製造しようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、都道府県労働局長の許可を受けなければならない。

 都道府県労働局長は、前項の許可の申請があつた場合には、その申請を審査し、申請に係る特定機械等の構造等が厚生労働大臣の定める基準に適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。

【クレーン等安全規則】

(使用検査)

第57条 (第1項~第4項 略)

 移動式クレーンを輸入し、又は外国において製造した者が使用検査を受けようとするときは、前項の申請書に当該申請に係る移動式クレーンの構造が法第37条第2項の厚生労働大臣の定める基準(移動式クレーンの構造に係る部分に限る。)に適合していることを厚生労働大臣が指定する者(外国に住所を有するものに限る。)が明らかにする書面を添付することができる。

 (以下略)

2021年11月13日執筆