問5 建設機械等による労働災害を防止するため、事業者が講じた措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、違反となるものはどれか。
(1)車両系建設機械のアタッチメントの装着の作業を複数の労働者で行うとき、当該作業を指揮する者を定めないで作業を行わせた。
(2)車両系建設機械を用いた作業において、運転中の車両系建設機械に接触することにより労働者に危険が生じるおそれのある箇所に労働者を立ち入らせるとき、誘導者を配置し、その者に当該車両系建設機械を誘導させた。
(3)車両系建設機械を用いて作業を行うとき、車両系建設機械の転倒及び転落のおそれのない場所だったので、シートベルトを備えていない車両系建設機械を使用させた。
(4)作業床が接地面に対し垂直にのみ上昇し及び下降する構造の高所作業車を用いて作業を行うとき、当該高所作業車の作業床上の労働者に要求性能墜落制止用器具等の使用を指示しなかった。
(5)作業床の高さ(作業床を最も高く上昇させた場合におけるその床面の高さ)が5メートルの高所作業車の運転の業務について、高所作業車運転技能講習は修了していないが、当該業務に関する安全のための特別の教育を行った者に従事させた。
このページは、2021年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2021年度(令和03年度) | 問05 | 難易度 | 車両系建設機械に関するやや高度な知識問題である。合否を分けるレベルだろうか。 |
---|---|---|---|
車両系建設機械 | 4 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問5 建設機械等による労働災害を防止するため、事業者が講じた措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、違反となるものはどれか。
(1)車両系建設機械のアタッチメントの装着の作業を複数の労働者で行うとき、当該作業を指揮する者を定めないで作業を行わせた。
(2)車両系建設機械を用いた作業において、運転中の車両系建設機械に接触することにより労働者に危険が生じるおそれのある箇所に労働者を立ち入らせるとき、誘導者を配置し、その者に当該車両系建設機械を誘導させた。
(3)車両系建設機械を用いて作業を行うとき、車両系建設機械の転倒及び転落のおそれのない場所だったので、シートベルトを備えていない車両系建設機械を使用させた。
(4)作業床が接地面に対し垂直にのみ上昇し及び下降する構造の高所作業車を用いて作業を行うとき、当該高所作業車の作業床上の労働者に要求性能墜落制止用器具等の使用を指示しなかった。
(5)作業床の高さ(作業床を最も高く上昇させた場合におけるその床面の高さ)が5メートルの高所作業車の運転の業務について、高所作業車運転技能講習は修了していないが、当該業務に関する安全のための特別の教育を行った者に従事させた。
正答(1)
【解説】
(1)違反となる。安衛則第 165 条の規定により、車両系建設機械のアタッチメントの装着の作業を複数の労働者で行うとき、当該作業を指揮する者を定めなければならない。
なお、わざわざ本肢が「複数の労働者で行う」としているのは、この条文についてではないが、第 151 条の4の作業指揮者について、昭和 53 年2月 10 日基発第 78 号「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について」が「本条の作業指揮者は、単独作業を行う場合には、特に選任を要しないものであること
」としているためである。
この通達のこの解釈は、あくまでも同規則第 151 条の4についてのものではあるが、一人で作業をする場合に作業指揮者の選任が必要なわけがない。
【労働安全衛生規則】
(修理等)
第165条 事業者は、車両系建設機械の修理又はアタツチメントの装着若しくは取り外しの作業を行うときは、当該作業を指揮する者を定め、その者に次の措置を講じさせなければならない。
一 作業手順を決定し、作業を指揮すること。
二 次条第一項に規定する安全支柱、安全ブロツク等及び第166条の2第1項に規定する架台の使用状況を監視すること。
(2)違反とはならない。安衛則第 158 条の規定により、車両系建設機械を用いた作業において、運転中の車両系建設機械に接触することにより労働者に危険が生じるおそれのある箇所には、原則として労働者を立ち入らせてはならない。しかし、同条但書きにより、誘導者を配置し、その者に当該車両系建設機械を誘導させる場合は除かれている。
【労働安全衛生規則】
(接触の防止)
第158条 事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、運転中の車両系建設機械に接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのある箇所に、労働者を立ち入らせてはならない。ただし、誘導者を配置し、その者に当該車両系建設機械を誘導させるときは、この限りでない。
2 (略)
(3)違反とはならない。安衛則第 157 条の2は、車両系建設機械を用いて作業を行うとき、車両系建設機械の転倒及び転落のおそれのある場所について、シートベルトを備えている車両系建設機械を使用させるように努める必要があるとしている。
これが努力義務となった背景には、法令改正の当時、シートベルトを備えていない建設機械がかなり存在していたという事情がある。最近の新しい機械は、すべてシートベルトを備えており、シートベルトをしないと運転の操作ができないようになっているものもある。
試験合格後の実務においては、シートベルトのある機械を用いる場合は、必ずシートベルトをさせるようにするべきである。
本問の出題の意図は分からないが、労働安全の知識を問う問題として妥当なものなのか強い疑問を感じる。
【労働安全衛生規則】
第157条の2 事業者は、路肩、傾斜地等であつて、車両系建設機械の転倒又は転落により運転者に危険が生ずるおそれのある場所においては、転倒時保護構造を有し、かつ、シートベルトを備えたもの以外の車両系建設機械を使用しないように努めるとともに、運転者にシートベルトを使用させるように努めなければならない。
(4)違反とはならない。安衛則第194条の22は、作業床が接地面に対し垂直にのみ上昇し及び下降する構造の高所作業車を用いて作業を行うときには、要求性能墜落制止用器具等を使用させることを義務付けていない。
これは、垂直昇降式の高所作業車には作業床の面積の広いものがあり、作業床の上で移動する必要があることに配慮したことと、垂直昇降式の場合は振り落とされるおそれが少ないと考えられたためである。
試験合格後の実務においては、垂直昇降式の高所作業車であっても、要求性能墜落制止用器具を使用させるべきである。その場合、フックを掛けが付いている場合は、フック掛けにフックをかけ、ない場合は一番上の手すりにかける(※)。
※ 足元にフック掛けが備えられている高所作業車の場合は、第1種ショックアブソーバ付きのランヤードを使用しているときであっても、フック側にショックアブソーバが取り付けられているランヤードを除き、バケット等の内側から足元のフック掛けにかけること。この場合は、第1種ショックアブソーバだからといって、手すりにフックをかけてはならない。ただし、まれにランヤードでショックアブソーバがフック側に取り付けられているものがあるが、この場合は手すり側に取り付けるようにする。
なお、本問とは関係のないことであるが、安衛法上は高所作業車で移動しているときや昇降しているときは、墜落制止用器具の使用は義務付けられていない。しかし、その一方で、作業を行う場合は、2メートル未満の高さでも墜落制止用器具の使用が義務付けられているため(※)、ややちぐはぐな印象を受ける。
※ 安衛則の高所作業車に関する規定は、同規則第36条(第十号の五)及び安衛令第10条(第四号)により、作業床の高さ(作業床を最も高く上昇させた場合におけるその床面の高さをいう。)が2メートル以上の高所作業車のみに適用がある。
そのため、よく誤解されているが、少なくとも条文上では、作業床の高さが2メートル以上の高所作業車を用いて、2メートル未満の位置で作業を行う場合も墜落制止用器具の使用は義務付けられているのである。
しかし、高所作業車は、作業中よりも移動中の方が振り落とされる危険が高い。高所作業車は、乗ったらすぐに墜落制止用器具のフックをフック掛けにかけることを原則としたい。技能講習でもそのように教えている。
【労働安全衛生規則】
(要求性能墜落制止用器具等の使用)
第194条の22 事業者は、高所作業車(作業床が接地面に対し垂直にのみ上昇し、又は下降する構造のものを除く。)を用いて作業を行うときは、当該高所作業車の作業床上の労働者に要求性能墜落制止用器具等を使用させなければならない。
2 (略)
(5)違反とはならない。作業床の高さ(作業床を最も高く上昇させた場合におけるその床面の高さ)が5メートルの高所作業車の運転の業務は、安衛法第 61 条の就業制限業務に該当しない(安衛令第 20 条第十五号)(※)。したがって、違反とはならない。
※ 本問とは関係のないことであるが、作業床の高さが10メートル以上の高所作業車を用いて、10メートル未満の高さで作業を行う場合であっても技能講習を修了していることが必要であることに留意すること。
なお、この業務は安衛法第 59 条の特別の教育の対象となる(安衛則第36条第十号の五)。
【労働安全衛生法】
(安全衛生教育)
第59条 (第1項及び第2項 略)
3 事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。
(就業制限)
第61条 事業者は、クレーンの運転その他の業務で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の当該業務に係る免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う当該業務に係る技能講習を修了した者その他厚生労働省令で定める資格を有する者でなければ、当該業務に就かせてはならない。
2~4 (略)
【労働安全衛生法施行令】
(法第三十三条第一項の政令で定める機械等)
第10条 (柱書 略)
一~三 (略)
四 作業床の高さ(作業床を最も高く上昇させた場合におけるその床面の高さをいう。以下同じ。)が2メートル以上の高所作業車
(就業制限に係る業務)
第20条 法第61条第1項の政令で定める業務は、次のとおりとする。
一~十四 (略)
十五 作業床の高さが10メートル以上の高所作業車の運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務
十六 (略)
【労働安全衛生規則】
(特別教育を必要とする業務)
第36条 法第59条第3項の厚生労働省令で定める危険又は有害な業務は、次のとおりとする。
一~十の四 (略)
十の五 作業床の高さ(令第10条第四号の作業床の高さをいう。)が10メートル未満の高所作業車(令第10条第四号の高所作業車をいう。以下同じ。)の運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務
十一~四十一 (略)