問4 はい付け、はいくずし等の作業における労働災害を防止するため事業者が講じた措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、違反となるものはどれか。
(1)高さが2メートルのはいのはい付け又ははいくずしの作業を行うとき、荷役機械の運転者のみによって行われる作業であったので、はい作業主任者を選任しなかった。
(2)はいの上で作業を行うとき、作業箇所の高さが床面から2メートルであったが、当該はいを構成する荷によって安全に昇降することができたので、床面と当該作業箇所との間を昇降するための設備を設けなかった。
(3)容器等が袋である荷により構成される床面からの高さが6メートルのはいのはいくずしの作業を行うとき、中抜きは行わずにひな段状にくずし、ひな段の各段の高さを2メートルとした。
(4)はい付けの作業が行われている箇所の周囲で、はいの崩壊又は荷の落下により労働者に危険を及ぼすおそれのないところに、関係労働者以外の労働者を立ち入らせた。
(5)高さが2メートルのはいのはい付け又ははいくずしの作業を行うとき、はいの上における作業がなく、物体の飛来及び落下のおそれがなかったので、当該作業に従事する労働者に保護帽の着用を指示しなかった。
このページは、2021年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2021年度(令和03年度) | 問04 | 難易度 | あまり出題されない分野だが、はい作業の基本的な問題である。合否を分けるレベルだろうか。 |
---|---|---|---|
はい付け、はいくずし等 | 5 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問4 はい付け、はいくずし等の作業における労働災害を防止するため事業者が講じた措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、違反となるものはどれか。
(1)高さが2メートルのはいのはい付け又ははいくずしの作業を行うとき、荷役機械の運転者のみによって行われる作業であったので、はい作業主任者を選任しなかった。
(2)はいの上で作業を行うとき、作業箇所の高さが床面から2メートルであったが、当該はいを構成する荷によって安全に昇降することができたので、床面と当該作業箇所との間を昇降するための設備を設けなかった。
(3)容器等が袋である荷により構成される床面からの高さが6メートルのはいのはいくずしの作業を行うとき、中抜きは行わずにひな段状にくずし、ひな段の各段の高さを2メートルとした。
(4)はい付けの作業が行われている箇所の周囲で、はいの崩壊又は荷の落下により労働者に危険を及ぼすおそれのないところに、関係労働者以外の労働者を立ち入らせた。
(5)高さが2メートルのはいのはい付け又ははいくずしの作業を行うとき、はいの上における作業がなく、物体の飛来及び落下のおそれがなかったので、当該作業に従事する労働者に保護帽の着用を指示しなかった。
正答(3)
【解説】
はい作業に関する問題であるが、(1)と(3)を除けば、「形式的には危険な業務だが、安全に作業を行える場合」について、その危険性について安全対策をとる必要がないというものである。
もし、これらが違反だとすると、各条文は必要のないことを罰則付きで禁止しているということになる。そのような条文があるわけがないし、あったとしても厚生労働省が所轄する試験に問題として出すはずがないだろう(※)。そこに気づかなければならない。
※ 例えば「車両系建設機械をリモートで運転する場合で、当該車両系建設機械の周囲には労働者が立ち入るおそれがなく、安全に作業ができる場合であっても、それらの機械を運転するためには、必要な資格を有しているものでなければ行ってはならない」という問題があったとしよう。その解答は、現行の法令の下では「正しい」となる。
しかし、そのような法令は現状に追いついていないのであって、「刑事法は謙抑的でなければならない(必要のないことに刑事罰を科すべきではない)」という原則に反しているのである。そのような問題を厚生労働省の担当者が出題しようと思うだろうか?
(1)違反とはならない。安衛法第14条第1項の規定により作業主任者を選任しなければならない作業は安衛令第6条に定められている。高さが2メートルのはいのはい付け又ははいくずしの作業は、同条第12号に定められているが、荷役機械の運転者のみによって行われる作業については同号のカッコ書きによって除かれている。
【労働安全衛生法】
(作業主任者)
第14条 事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。
【労働安全衛生法施行令】
(作業主任者を選任すべき作業)
第6条 法第14条の政令で定める作業は、次のとおりとする。
一~十一 (略)
十二 高さが2メートル以上のはい(倉庫、上屋又は土場に積み重ねられた荷(小麦、大豆、鉱石等のばら物の荷を除く。)の集団をいう。)のはい付け又ははい崩しの作業(荷役機械の運転者のみによつて行われるものを除く。)
十三~二十三 (略)
(2)違反とはならない。はいの上で作業を行う場合であって、作業箇所の高さが床面から1.5メートルを超えるときは、安衛則第427条の規定により、原則として昇降設備を設けなければならない。しかし、同条但書により、はいを構成する荷によって安全に昇降することができるときは、昇降設備を設けなくとも違反とはならない。
【労働安全衛生規則】
(はいの昇降設備)
第427条 事業者は、はい(倉庫、上屋又は土場に積み重ねられた荷(小麦、大豆、鉱石等のばら物の荷を除く。)の集団をいう。以下同じ。)の上で作業を行なう場合において、作業箇所の高さが床面から1.5メートルをこえるときは、当該作業に従事する労働者が床面と当該作業箇所との間を安全に昇降するための設備を設けなければならない。ただし、当該はいを構成する荷によつて安全に昇降できる場合は、この限りでない。
2 (略)
(3)違反となる。安衛則第431条第1項(第二号)の規定により、容器等が袋である荷により構成される床面からの高さが6メートルのはいのはいくずしの作業を行うときは、ひな段の各段の高さを1.5メートル以下としなければならない。
安衛則第 518 条は、高さが2メートル以上の箇所では作業床を設ける等墜落防止のための措置を義務付けているのである。仮に各段の高さが2メートルの高さが許されるとすると、はいの上で作業をする作業者は、高所における墜落防止措置をとらなければならなくなる。明らかにおかしいと気付かなければならない。
【労働安全衛生規則】
(はいくずし作業)
第431条 事業者は、床面からの高さが2メートル以上のはいについて、はいくずしの作業を行なうときは、当該作業に従事する労働者に次の事項を行なわせなければならない。
一 中抜きをしないこと。
二 容器が袋、かます又は俵である荷により構成されるはいについては、ひな段状にくずし、ひな段の各段(最下段を除く。)の高さは1.5メートル以下とすること。
2 (略)
(4)違反とはならない。安衛則第433条は、はい付けの作業が行われている箇所の周囲で、はいの崩壊又は荷の落下により労働者に危険を及ぼすおそれのあるところに関係労働者以外の労働者を立ち入らせてはならないと定めている。
従って、労働者に危険を及ぼすおそれのないところに立ち入らせても違反とはならない。
【労働安全衛生規則】
(立入禁止)
第433条 事業者は、はい付け又ははいくずしの作業が行なわれている箇所で、はいの崩壊又は荷の落下により労働者に危険を及ぼすおそれのあるところに、関係労働者以外の労働者を立ち入らせてはならない。
(5)違反とはならない。安衛則第 435 条に保護帽の着用に関する規定があるが、この条文は、はいの上における作業がない場合は適用がない。
ただし、実務においては、法令に違反するかどうかにかかわりなく、荷の落下の危険がある場所で作業を行う場合には保護帽を着用させることは当然である。
【労働安全衛生規則】
(保護帽の着用)
第435条 事業者は、はいの上における作業(作業箇所の高さが床面から2メートル以上のものに限る。)を行なうときは、墜落による労働者の危険を防止するため、当該作業に従事する労働者に保護帽を着用させなければならない。
2 (略)