問1 安全管理体制についての労働安全衛生法令の規定に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)事業者は、総括安全衛生管理者及び安全管理者を選任したときは電子情報処理組織を使用して、所定の事項を労働基準監督署長に報告しなければならないとされているが、安全衛生推進者を選任したときの報告についての規定はない。
(2)事業者は、常時 10 人以上 50 人未満の労働者を使用する事業場では安全衛生推進者又は衛生推進者を選任しなければならないとされており、安全管理者を選任しなければならない業種の事業場では安全衛生推進者を、それ以外の業種の事業場では衛生推進者を選任することとされている。
(3)事業者は、一定の業種及び規模の事業場ごとに安全委員会を設けなければならないとされているが、輸送用機械器具製造業と鉄鋼業では安全委員会を設けなければならない事業場の規模は同じとなっている。
(4)都道府県労働局長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは総括安全衛生管理者の業務の執行について事業者に勧告することができるとされているが、都道府県労働局長が総括安全衛生管理者の解任を命ずることについての規定はない。
(5)事業者は、その事業場に専属の者でない労働安全コンサルタントを安全衛生推進者に選任することはできるが、その事業場に専属の者でない労働衛生コンサルタントを安全衛生推進者に選任することはできないとされている。
※ 本問は、出題後の法令改正に合わせて、問題文を一部修正している。

このページは、2021年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2021年度(令和03年度) | 問01 | 難易度 | 安全管理体制は基本中の基本。本問は正答できる必要がある。 |
---|---|---|---|
労働安全管理体制 | 3 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問1 安全管理体制についての労働安全衛生法令の規定に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)事業者は、総括安全衛生管理者及び安全管理者を選任したときは電子情報処理組織を使用して、所定の事項を労働基準監督署長に報告しなければならないとされているが、安全衛生推進者を選任したときの報告についての規定はない。
(2)事業者は、常時 10 人以上 50 人未満の労働者を使用する事業場では安全衛生推進者又は衛生推進者を選任しなければならないとされており、安全管理者を選任しなければならない業種の事業場では安全衛生推進者を、それ以外の業種の事業場では衛生推進者を選任することとされている。
(3)事業者は、一定の業種及び規模の事業場ごとに安全委員会を設けなければならないとされているが、輸送用機械器具製造業と鉄鋼業では安全委員会を設けなければならない事業場の規模は同じとなっている。
(4)都道府県労働局長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは総括安全衛生管理者の業務の執行について事業者に勧告することができるとされているが、都道府県労働局長が総括安全衛生管理者の解任を命ずることについての規定はない。
(5)事業者は、その事業場に専属の者でない労働安全コンサルタントを安全衛生推進者に選任することはできるが、その事業場に専属の者でない労働衛生コンサルタントを安全衛生推進者に選任することはできないとされている。
※ 本問は、出題後の法令改正に合わせて、問題文を一部修正している。
正答(5)
【解説】
本問は、すべての肢が基本的な内容である。こんな基本的な問を間違えてはならない。
(1)正しい。総括安全衛生管理者については安衛則第2条第2項により、安全管理者については同規則第4条第3項により、それぞれ選任したときは電子情報処理組織を使用して、所定の事項を労働基準監督署長に報告しなければならないと定められている。しかし、安全衛生推進者にはこのような規定はない。
※ 本肢は出題当時は「事業者は、総括安全衛生管理者及び安全管理者を選任したときは所定の様式による報告書を労働基準監督署長に提出しなければならないとされているが、安全衛生推進者を選任したときの報告書の提出についての規定はない。」とされ、当時の法令の下で正しい肢であった。
現在は、法令が改正されたので、問題文を一部修正している。
【労働安全衛生法】
(総括安全衛生管理者)
第10条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。
一~五 (略)
2及び3 (略)
(安全管理者)
第11条 事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、安全管理者を選任し、その者に前条第1項各号の業務(第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第1項各号の措置に該当するものを除く。)のうち安全に係る技術的事項を管理させなければならない。
2 (略)
(安全衛生推進者等)
第12条の2 事業者は、第11条第1項の事業場及び前条第1項の事業場以外の事業場で、厚生労働省令で定める規模のものごとに、厚生労働省令で定めるところにより、安全衛生推進者(第11条第1項の政令で定める業種以外の業種の事業場にあつては、衛生推進者)を選任し、その者に第10条第1項各号の業務(第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第1項各号の措置に該当するものを除くものとし、第11条第1項の政令で定める業種以外の業種の事業場にあつては、衛生に係る業務に限る。)を担当させなければならない。
【労働安全衛生規則】
(総括安全衛生管理者の選任)
第2条 (第1項 略)
2 事業者は、総括安全衛生管理者を選任したときは、遅滞なく、情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(平成14年法律第151号)第6条第1項に規定する電子情報処理組織(以下「電子情報処理組織」という。)を使用して、次に掲げる事項を、当該事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長(以下「所轄労働基準監督署長」という。)に報告しなければならない。
一~八 (略)
(安全管理者の選任)
第4条 (第1項 略)
2 第3条の規定は、安全管理者について準用する。
3 事業者は、安全管理者を選任したときは、遅滞なく、電子情報処理組織を使用して、次に掲げる事項を、次条第一号の研修その他所定の研修を修了した者であることにつき証明することができる電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)等必要な電磁的記録を添えて、所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。
一~八 (略)
(安全衛生推進者等の選任)
第12条の3 法第12条の2の規定による安全衛生推進者又は衛生推進者(以下「安全衛生推進者等」という。)の選任は、都道府県労働局長の登録を受けた者が行う講習を修了した者その他法第10条第1項各号の業務(衛生推進者にあつては、衛生に係る業務に限る。)を担当するため必要な能力を有すると認められる者のうちから、次に定めるところにより行わなければならない。
一 安全衛生推進者等を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任すること。
二 その事業場に専属の者を選任すること。ただし、労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタントその他厚生労働大臣が定める者のうちから選任するときは、この限りでない。
2 次に掲げる者は、前項の講習の講習科目(安全衛生推進者に係るものに限る。)のうち厚生労働大臣が定めるものの免除を受けることができる。
一 第5条各号に掲げる者
二 第10条各号に掲げる者
※ 報告に関する安衛則の規定は、本問出題当時は以下のようになっていた。現在は、2025 年1月1日施行の改正により上記のようになっている。
(総括安全衛生管理者の選任)
第2条 (第1項 略)
2 事業者は、総括安全衛生管理者を選任したときは、遅滞なく、様式第三号による報告書を、当該事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長(以下「所轄労働基準監督署長」という。)に提出しなければならない。
(安全管理者の選任)
第4条 (第1項 略)
2 第2条第2項及び第3条の規定は、安全管理者について準用する。
(2)正しい。安衛法第 12 条の2(及び安衛則第12条の2)により事業者は、常時 10 人以上 50 人未満の労働者を使用する事業場では安全衛生推進者又は衛生推進者を選任しなければならない。そして、安衛法第12条の2カッコ書き(及び同第11条第1項)により、安全管理者を選任しなければならない業種の事業場では安全衛生推進者を、それ以外の業種の事業場では衛生推進者を選任しなければならない。
【労働安全衛生法】
(安全管理者)
第11条 事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、安全管理者を選任し、その者に前条第1項各号の業務(第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第1項各号の措置に該当するものを除く。)のうち安全に係る技術的事項を管理させなければならない。
2 (略)
(安全衛生推進者等)
第12条の2 事業者は、第11条第1項の事業場及び前条第1項の事業場以外の事業場で、厚生労働省令で定める規模のものごとに、厚生労働省令で定めるところにより、安全衛生推進者(第11条第1項の政令で定める業種以外の業種の事業場にあつては、衛生推進者)を選任し、その者に第10条第1項各号の業務(第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第1項各号の措置に該当するものを除くものとし、第11条第1項の政令で定める業種以外の業種の事業場にあつては、衛生に係る業務に限る。)を担当させなければならない。
【労働安全衛生法施行令】
(総括安全衛生管理者を選任すべき事業場)
第2条 労働安全衛生法(以下「法」という。)第10条第1項の政令で定める規模の事業場は、次の各号に掲げる業種の区分に応じ、常時当該各号に掲げる数以上の労働者を使用する事業場とする。
一 林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業 百人
二 製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゆう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゆう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 300人
三 その他の業種 1,000人
(安全管理者を選任すべき事業場)
第3条 法第11条第1項の政令で定める業種及び規模の事業場は、前条第一号又は第二号に掲げる業種の事業場で、常時50人以上の労働者を使用するものとする。
【労働安全衛生規則】
(安全衛生推進者等を選任すべき事業場)
第12条の2 法第12条の2の厚生労働省令で定める規模の事業場は、常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場とする。
(3)正しい。安衛法第 17 条により、事業者は、一定の業種及び規模の事業場ごとに安全委員会を設けなければならない。その業種ごとの規模は、安衛令第8条に定められているが、輸送用機械器具製造業と鉄鋼業はともに、安全委員会を設けなければならない事業場の規模は同じ(50人)となっている。
【労働安全衛生法】
(安全委員会)
第17条 事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、安全委員会を設けなければならない。
一~三 (略)
2~5 (略)
【労働安全衛生法施行令】
(安全委員会を設けるべき事業場)
第8条 法第17条第1項の政令で定める業種及び規模の事業場は、次の各号に掲げる業種の区分に応じ、常時当該各号に掲げる数以上の労働者を使用する事業場とする。
一 林業、鉱業、建設業、製造業のうち木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、金属製品製造業及び輸送用機械器具製造業、運送業のうち道路貨物運送業及び港湾運送業、自動車整備業、機械修理業並びに清掃業 50人
二 第2条第一号及び第二号に掲げる業種(前号に掲げる業種を除く。) 100人
(4)正しい。安衛法第 10 条の規定により、都道府県労働局長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは総括安全衛生管理者の業務の執行について事業者に勧告することができるとされている。しかし、都道府県労働局長が解任を命ずることについての規定はない。
なお、労働基準監督署長による解任規定は、安全管理者については同第11条第2項に定められており、衛生管理者及び元方安全衛生管理者に準用されているが、総括安全衛生管理者については規定されていない。
総括安全衛生管理者は事業場のトップが就任するものなので、解任してしまうと、他に総括安全衛生管理者になれるものはいないので、空席になってしまうので解任できないのである。
【労働安全衛生法】
(総括安全衛生管理者)
第10条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。
一~五 (略)
2 (略)
3 都道府県労働局長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、総括安全衛生管理者の業務の執行について事業者に勧告することができる。
(安全管理者)
第11条 (第1項 略)
2労働基準監督署長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、事業者に対し、安全管理者の増員又は解任を命ずることができる。
(衛生管理者)
第12条 (第1項 略)
2前条第2項の規定は、衛生管理者について準用する。
(元方安全衛生管理者)
第15条の2 (第1項 略)
2第11条第2項の規定は、元方安全衛生管理者について準用する。この場合において、同項中「事業者」とあるのは、「当該元方安全衛生管理者を選任した事業者」と読み替えるものとする。
(5)誤り。安衛則第12条の3第1項(第二号)により、原則としてその事業場に専属の者でない者を安全衛生推進者に選任することはできないが、労働安全コンサルタント又は労働衛生コンサルタントについては非専属のものを(1名に限り)選任することができる。
安全衛生推進者の専属要件について、安全コンサルタントと衛生コンサルタントで区別をするわけがないだろう。
【労働安全衛生法】
(安全衛生推進者等)
第12条の2 事業者は、第11条第1項の事業場及び前条第1項の事業場以外の事業場で、厚生労働省令で定める規模のものごとに、厚生労働省令で定めるところにより、安全衛生推進者(第11条第1項の政令で定める業種以外の業種の事業場にあつては、衛生推進者)を選任し、その者に第10条第1項各号の業務(第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第1項各号の措置に該当するものを除くものとし、第11条第1項の政令で定める業種以外の業種の事業場にあつては、衛生に係る業務に限る。)を担当させなければならない。
【労働安全衛生規則】
(安全衛生推進者等の選任)
第12条の3 法第12条の2の規定による安全衛生推進者又は衛生推進者(以下「安全衛生推進者等」という。)の選任は、都道府県労働局長の登録を受けた者が行う講習を修了した者その他法第10条第1項各号の業務(衛生推進者にあつては、衛生に係る業務に限る。)を担当するため必要な能力を有すると認められる者のうちから、次に定めるところにより行わなければならない。
一 (略)
二 その事業場に専属の者を選任すること。ただし、労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタントその他厚生労働大臣が定める者のうちから選任するときは、この限りでない。
2 (略)