問23 燃焼などに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)室内の局所的な火災が、数秒から数十秒のごく短時間に、部屋全域に拡大する現象をフラッシュオーバーという。
(2)酸化重合するペンキのしみ込んだウエスは、自然発火することがあるので、水を十分に入れた容器に沈めて蓋をする。
(3)熱可塑性プラスチックが燃焼する場合には、熱分解して発生した可燃性ガスが燃焼する。
(4)密閉状態の室内で有機物が燃焼すると、一酸化炭素が発生する危険性がある。
(5)固体の自然発火は、物質固有の特定の温度で起こり、固体の状態や加熱速度などによって影響を受けない。
このページは、2021年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。
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2021年度(令和03年度) | 問23 | 難易度 | 燃焼及び爆発に関するごく初歩的な知識問題である。これは正答できなければならない。 |
---|---|---|---|
燃焼による災害防止 | 1 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問23 燃焼などに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)室内の局所的な火災が、数秒から数十秒のごく短時間に、部屋全域に拡大する現象をフラッシュオーバーという。
(2)酸化重合するペンキのしみ込んだウエスは、自然発火することがあるので、水を十分に入れた容器に沈めて蓋をする。
(3)熱可塑性プラスチックが燃焼する場合には、熱分解して発生した可燃性ガスが燃焼する。
(4)密閉状態の室内で有機物が燃焼すると、一酸化炭素が発生する危険性がある。
(5)固体の自然発火は、物質固有の特定の温度で起こり、固体の状態や加熱速度などによって影響を受けない。
正答(5)
【解説】
(1)正しい。フラッシュオーバーという用語に、学問的(又は公的)な定義があるわけではない。しかし、文字通り、部屋内の局所的な火災が、数秒~数十秒のごく短時間に、部屋全域に拡大する現象の総称である。
消防研究センターの「『バックドラフト』と『フラッシュオーバー』の違い」によれば、「局所的な火災によって熱せられた天井や煙層からの放射熱によって、局所火源そのもの、あるいはその他の可燃物が外部加熱を受け、それによって急速な延焼拡大が引き起こされ全面火災に至る
」ものだとされている。
(2)正しい。酸化重合するペンキのしみ込んだウエスは、塗料やワックスなどの油類が、酸化反応によって発熱して発火することがある。
そのため、塗料を拭き取って染み込んだ布などは、水を入れた容器の中に沈め、蓋をしっかり閉めて水が蒸発しないようにする。
(3)正しい。熱可塑性プラスチックは加熱させると溶融し、さらに高温にすると蒸発又は熱分解し、可燃性ガスとして空中に放出されて着火燃焼する(※)。
春山鴻「プラスチックスの燃焼」(環境技術 Vol.1 No.8 1972年)等を参照されたい。
(4)正しい。これは解説するまでもないであろう。密閉状態の室内で有機物が燃焼すると酸素が不足し、不完全燃焼によって一酸化炭素が発生する危険性がある。
「建設業における一酸化炭素中毒予防のためのガイドライン」(平成10年6月1日基発第329の1号)によれば、地下室に持ち込んだ内燃機関、コンクリート養生のための練炭などを原因として一酸化炭素中毒になる例が散見される現状にある。
(5)誤っている。本肢にいう固体の自然発火とは、自然発火性のある固体(ウラニウム、リンなど)の自然発火のことではなく、可燃性の固体の温度を上昇させていったときに発火することだと思われる。
そうだとすれば、発火はその物体が、ペレット状か、フィルム状か、粉状かによって異なる。また、周囲の酸素濃度によっても異なる。また、加熱速度がゆるければ、物体の内部へ十分に熱が伝わるからより低い温度で発火する。