労働安全コンサルタント試験 2021年 産業安全一般 問20

個人用保護具




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試験を受ける女性

 このページは、2021年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

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2021年度(令和03年度) 問20 難易度 個人用保護具に関するごく初歩的な問題である。これが正答できないようでは合格は覚束ない。
個人用保護具

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:40%未満 4:40%以上50%未満 3:50%以上60%未満 2:60%以上70%未満 1:70%以上

問20 保護具に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)墜落時保護用の保護帽と飛来・落下物用の保護帽の構造上の大きな違いは、衝撃吸収ライナーの有無である。

(2)保護帽の耐用年数は、FRPなどの熱硬化性樹脂製のものに比較して、ポリカーボネート、ABSなどの熱可塑性樹脂製のものの方が長い。

(3)墜落制止用器具には、使用可能な最大質量が定められているので、器具を使用する者の体重と装備品の合計の質量が使用可能な最大質量を超えないように器具を選定する。

(4)フルハーネス型墜落制止用器具を着用する者が墜落時に地面に到達するおそれがある場合には、胴ベルト型墜落制止用器具の使用が認められる。

(5)一度でも落下時の衝撃を受けた墜落制止用器具は取り替える。

正答(2)

【解説】

問20試験結果

試験解答状況
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(1)適切である。「保護帽の規格」第2条によれば、衝撃吸収ライナーとは、「発ぽうスチロール又はこれと同等以上(※)の衝撃吸収性能を有するもの」である。

※ かつては衝撃吸収ライナーは、ほとんどが発泡スチロール製であったが、最近では熱中症の予防のために発泡スチロール製でないものも開発されている。そのため、実務において、発泡スチロールがないからといって、墜落時保護用ではないと即断はできないことに留意すること。

保護帽の規格第5条により、墜落時保護用の保護帽には衝撃吸収ライナーを有していなければならない。一方、同第4条によれば、飛来・落下物用の保護帽には、構造上、衝撃吸収ライナーを有する必要はない。その意味では本肢は適切である。

ただし、墜落時保護用の保護帽は、すべて飛来・落下物用の保護帽を兼ねている。なお、2018年問18の(1)に類問がある。

(2)適切ではない。日本ヘルメット工業会の「保護帽の取り扱いマニュアル」は、保護帽の廃棄・交換規準について、ABS、PC、PE製(熱可塑性樹脂)については「異常が認められなくても3年以内」、FRP製(熱硬化性樹脂)については「異常が認められなくても5年以内」としている。2018年問18の(1)に類問がある。

(3)適切である。「墜落制止用器具の規格」第2条第2項によれば、「墜落制止用器具の着用者の体重及びその装備品の質量の合計に耐えるものでなければならない」とされ、同第8条第6項によれば、フルハーネスは一〇〇キログラム又は八五キログラムのトルソー(錘り)で試験をすることとなっている。に類問がある。

なお、現実には85 kg の墜落制止用器具は製造されておらず、メーカーによって130 kg 等用のものが開発されて販売されている。

【墜落制止用器具の規格】

(使用制限)

第2条 (第1項略)

 墜落制止用器具は、当該墜落制止用器具の着用者の体重及びその装備品の質量の合計に耐えるものでなければならない。

 (略)

(耐衝撃性等)

第8条 フルハーネスは、トルソーを使用し、日本産業規格T八一六五(墜落制止用器具)に定める落下試験の方法又はこれと同等の方法による試験を行った場合において、当該トルソーを保持できるものでなければならない。

2~5 (略)

 第一項及び前項のトルソー、第三項及び第四項の重り並びに前項の砂のうは、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。

 (略)

 質量は、一〇〇キログラム又は八五キログラムであること。ただし、特殊の用途に使用する墜落制止用器具にあっては、この限りではない。

(表示)

第9条 (略)

 ショックアブソーバは、見やすい箇所に、当該ショックアブソーバの種別、当該ショックアブソーバを使用する場合に前条第三項の表に定める基準を満たす自由落下距離のうち最大のもの、使用可能な着用者の体重と装備品の質量の合計の最大値、標準的な使用条件の下で使用した場合の落下距離が表示されているものでなければならない。

(4)適切である。「墜落制止用器具の規格」第2条第1項によれば、作業床が 6.75 メートル以下の場合はフルハーネス型とすることを要しないとされている。また、「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン」は、ワークポジショニング作業を伴わない場合について、胴ベルト型が使用可能な高さの目安を5m 以下としている。

これらは、墜落制止用器具を着用する者が墜落時に地面に到達するおそれがある場合には、胴ベルト型墜落制止用器具の使用を認めるという観点から定められている。2020年問20の(3)に類問がある。

【墜落制止用器具の規格】

(使用制限)

第2条 六・七五メートルを超える高さの箇所で使用する墜落制止用器具は、フルハーネス型のものでなければならない。

2及び3 (略)

(5)適切である。「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン」の「第7 廃棄基準」は「一度でも落下時の衝撃がかかったものは使用しないこと」としている。なお、墜落制止用器具の製造メーカーは「外見上の変形がなくても、一度でも大きな荷重が加わったものは、再び落下すると衝撃荷重が大きくなり、身体に損傷を及ぼすばかりか、墜落制止できないおそれがあ(※)るとしている。

※ 藤井電工「フルハーネス型使用上の注意事項

2021年11月19日執筆 2022年08月23日一部修正