労働安全コンサルタント試験 2021年 産業安全一般 問19

感電災害防止用の器具、装置




問題文
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試験を受ける女性

 このページは、2021年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

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2021年度(令和03年度) 問19 難易度 感電防止用の器具、装置に関する基本的な問題。試験場で考えて正答できなければならない。
感電防止用の器具、装置

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問19 感電防止装置などに関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)停電作業において、接地の取付けに際しては、通電能力の確かめられた専用の接地用具を使用する。

(2)作業区域内又は近傍に、作業者が作業中に接触するおそれのある充電部分があるときは、あらかじめその充電部分に絶縁用防具を装着する。

(3)電気用ゴム手袋は使用する前にピンホールなどのないことを確かめる。

(4)交流アーク溶接機用自動電撃防止装置は、アークの発生が停止したときに出力側の回路を遮断して溶接棒と被溶接物との間の電圧をゼロにするものである。

(5)交流アーク溶接機用自動電撃防止装置を作動させ、交流アーク溶接機のアークの発生を停止させた時から主接点が開路されるまでの時間を、遅動時間という。

正答(4)

【解説】

問19試験結果

試験解答状況
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(1)適切である。停電作業においては、安衛則第339条第1項(第三号)により、停電作業時は短絡接地用具で短絡接地をしなければならない。

短絡接地用具の取付けに際して、通電能力の確かめられた専用の短絡接地用具を使用することが不適切なわけがないであろう。

【労働安全衛生規則】

(停電作業を行なう場合の措置)

第339条 事業者は、電路を開路して、当該電路又はその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業を行なうときは、当該電路を開路した後に、当該電路について、次に定める措置を講じなければならない。当該電路に近接する電路若しくはその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業又は当該電路に近接する工作物(電路の支持物を除く。以下この章において同じ。)の建設、解体、点検、修理、塗装等の作業を行なう場合も同様とする。

一及び二 (略)

 開路した電路が高圧又は特別高圧であつたものについては、検電器具により停電を確認し、かつ、誤通電、他の電路との混触又は他の電路からの誘導による感電の危険を防止するため、短絡接地器具を用いて確実に短絡接地すること。

 (略)

(2)適切である。出題の意図がはっきりしないが、「作業区域内又は近傍に、作業者が作業中に接触するおそれのある充電部分があるときは、あらかじめその充電部分に絶縁用防具を装着する」ということが不適切なわけがなかろう。

【労働安全衛生規則】

(高圧活線作業)

第341条 事業者は、高圧の充電電路の点検、修理等当該充電電路を取り扱う作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者について感電の危険が生ずるおそれのあるときは、次の各号のいずれかに該当する措置を講じなければならない。

 労働者に絶縁用保護具を着用させ、かつ、当該充電電路のうち労働者が現に取り扱つている部分以外の部分が、接触し、又は接近することにより感電の危険が生ずるおそれのあるものに絶縁用防具を装着すること。

二及び三 (略)

 (略)

(高圧活線近接作業)

第342条 事業者は、電路又はその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者が高圧の充電電路に接触し、又は当該充電電路に対して頭上距離が三十センチメートル以内又は躯く側距離若しくは足下距離が六十センチメートル以内に接近することにより感電の危険が生ずるおそれのあるときは、当該充電電路に絶縁用防具を装着しなければならない。ただし、当該作業に従事する労働者に絶縁用保護具を着用させて作業を行なう場合において、当該絶縁用保護具を着用する身体の部分以外の部分が当該充電電路に接触し、又は接近することにより感電の危険が生ずるおそれのないときは、この限りでない。

 (略)

(絶縁用防具の装着等)

第347条 事業者は、低圧の充電電路に近接する場所で電路又はその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者が当該充電電路に接触することにより感電の危険が生ずるおそれのあるときは、当該充電電路に絶縁用防具を装着しなければならない。ただし、当該作業に従事する労働者に絶縁用保護具を着用させて作業を行なう場合において、当該絶縁用保護具を着用する身体の部分以外の部分が当該充電電路に接触するおそれのないときは、この限りでない。

2及び3 (略)

(3)適切である。これも「電気用ゴム手袋は使用する前にピンホールなどのないことを確かめる」こと自体が不適切なわけがない。

絶縁手袋については、外面を目視検査で、ヒビ、割れ、破れ等の有無を点検するとともに、乾燥状態を確認する。また、法令には明記されていないが、内部に圧縮空気を加えて空気の抜ける音をチェックすることによりピンホールなど有無を確認する(※)。ピンホールを通して通電することがあるからである。

※ 例えば、産業安全研究所「感電の基礎と過去30年間の死亡災害の統計」(2009年)の67ページを参照されたい。

【労働安全衛生規則】

(電気機械器具等の使用前点検等)

第352条 事業者は、次の表の上欄に掲げる電気機械器具等を使用するときは、その日の使用を開始する前に当該電気機械器具等の種別に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる点検事項について点検し、異常を認めたときは、直ちに、補修し、又は取り換えなければならない。

電気機械器具等の種別 点検事項
(略) (略)
第三百四十一条から第三百四十三条までの絶縁用保護具 ひび、割れ、破れその他の損傷の有無及び乾燥状態
(略)
第三百四十六条及び第三百四十七条の絶縁用保護具及び活線作業用器具並びに第三百四十七条の絶縁用防具
交流アーク溶接機用自動電撃防止装置

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(4)適切ではない。溶接棒と非溶接物(母材)の間の電圧をゼロにすると、溶接作業を再開することができない。そのため交流アーク溶接機用自動電撃防止装置では、アークを出していないときは安全電圧(構造規格では30ボルト以下、JISでは25ボルト以下と定められ、実際には20ボルト程度のものが多い)まで低下させる。

これについては過去問に、さまざまに形を変えた類似問題が多い。「労働安全コンサルタント試験 産業安全一般」で確認しておくこと。

(5)適切である。「交流アーク溶接機用自動電撃防止装置の接続及び使用の安全基準に関する技術上の指針」とJIS C 9311:2011「交流アーク溶接電源用電撃防止装置」で微妙に定義が異なるが、「交流アーク溶接機用自動電撃防止装置を作動させ、交流アーク溶接機のアークの発生を停止させた時から主接点が開路されるまでの時間」は技術上の指針の遅動時間の定義である。

なお、アークが止まったと同時に電圧を下げるとタック溶接(※)ができにくくなるので、いきなり電圧を下げず、若干の遅延時間をもたせるのである。

※ 本溶接の前に、母材同士を仮に固定するために、最終的に溶接する部分のうち、数点を予め溶接すること

2021年11月19日執筆