機械・設備の安全点検

問１１　機械設備の安全点検に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

（１）安全点検は、職場の機械設備など物的条件に不安全な状態がないかどうか点検するものであるため、職場の事情に最も精通した生産ライン担当者によって実施する。

（２）機械設備は使用時間の経過とともに腐食・摩耗などの損耗を起こすことから、点検の対象、作業内容、安全面からみた緊要度などに応じて、安全点検を一定の期間ごとに行う。

（３）安全点検の結果によって発見された不安全な状態などは、全て直ちに監督者の責任においてその場で是正する。

（４）安全点検は、安全関係法規で定められている基準にとどまらず、各事業場や関連団体で制定されている自主的な安全基準に基づいて実施する。

（５）安全点検の結果により一つの設備で発見された不安全な状態が、他の同種の設備にもないかをチェックする。

正答（３）

【解説】

１　本問への疑問

（１）選択肢（１）について

本問は（１）か（３）かで解答が割れた。（１）の文章は、機械設備の安全点検は「職場の事情に最も精通した生産ライン担当者」が行い、他の者には行わせてはならないと読めるのである。

そのように理解すると、機械・設備の安全点検は、安全管理者や作業主任者が行うべき場合もあるだろうし、他の専門的な知識を有している者が行うべき場合もあるので、どう考えても適切とはいえない。

（２）選択肢（３）について

一方、（３）についても、「安全点検の結果によって発見された不安全な状態などは、全て直ちに監督者の責任においてその場で是正する」ことが適切だとは考えられない。

例えば、点検の結果、機械設備のプログラムに問題がある場合や、スイッチ類に不備^（※）がある場合、また、適切な改善のためには高額の費用や時間が必要な場合があったとしたらどうだろうか。その様な場合、現場に専門知識を有する者や改善に必要な資格者がいないこともあるだろう。

※　例えば、自動＝各個操作の切り替え用キースイッチのキーが自動側で抜けるようになっていた、非常停止ボタンが埋頭型であったなど。

そのようなときまで「全て直ちに監督者の責任においてその場で是正」させることなどできるわけがないし、無理矢理にやらせればかえって危険な状況になりかねないのである。

２　当サイトの正答予測と設問の妥当性

試験協会の正答公表までの、当サイトの正答予測では（３）としたが、結果的に正しい予測であった。（１）は他の専門家が別途必要な点検を行うことを否定まではしていないとも読め、また（３）は「全て」「直ちに」「監督者の責任」「その場で」と４重に限定されている。これは、試験協会の正答の公表後に、受験者からこれも正しいではないかと抗議を受けたとき、試験協会の担当者が反論するための保険をかけたのではないかとも思えたからである。

いずれにせよ、このような労働安全の知識とは異なることで受験生を迷わせるような出題は、不適切ではないかと指摘しておきたい。

３　各選択肢への判断

（１）不適切とも考えられるが（３）の方がより不適切なので適切としておく。なお、機械設備の安全点検は、職場の機械設備など物的条件に不安全な状態がないかどうか点検するものであるとしていることは必ずしも誤りではない。

一方、職場の事情に最も精通した生産ライン担当者によって実施するとしている点については、他の専門家等が点検をするべき場合もあるので適切ではない。しかし、（３）の方がより不適切であり、また、本肢の文章は他の専門家等が点検をすることを否定してまではいないと解する余地もないわけではないので、これを正答とはしない。

（２）適切である。「機械設備は使用時間の経過とともに腐食・摩耗などの損耗を起こす」こと自体は正しいことであり、不適切と考える余地がない。

（３）不適切である。安全点検の結果によって発見される不安全な状態などは、「全て直ちに監督者の責任においてその場で是正する」ことができるものばかりではない。上述した通り。

（４）適切である。不適切と考える余地がない。

（５）適切である。不適切と考える余地がない。

2021年11月17日執筆