問10 ヒューマンェラーの対策などに関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)システム又はこれを構成する要素が故障しても、これに起因して労働災害が発生することのないように、あらかじめ定められた安全側の状態に固定し、故障の環境を限定することにより、作業者の安全を確保する仕組みをフール・プルーフという。
(2)人間の意識レベルを、フェーズ0(無意識)、フェーズⅠ(subnormal)、フェーズⅡ(normal、relaxed)、フェーズⅢ(normal、clear)及びフェーズⅣ(hypernormal、excited)の5段階に分けているモデルでは、人間が最もエラーを起こしにくいのはフェーズⅢのときである。
(3)ヒューマンエラーの発生確率を下げる対策として、作業者の技能を確保するため、当該作業に就くために必要な資格を定めることがある。
(4)計器の表示方法としては、アナログ表示はデジタル表示と比べると、連続的な変化の傾向や程度が分かりやすい。
(5)事故原因の分析に用いられることがあるSHELモデルは、ヒューマンファクターの重要性を説明するために提案されたものであり、SHELはそれぞれ、S(ソフトウェア)、H(ハードウェア)、E(環境)及びL(ライブウェア(人間))を意味している。
このページは、2021年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。
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2021年度(令和03年度) | 問10 | 難易度 | ヒューマンエラーの対策に関する基本的な知識問題。正答できなければならない。 |
---|---|---|---|
ヒューマンエラーへの対策 | 2 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問10 ヒューマンェラーの対策などに関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)システム又はこれを構成する要素が故障しても、これに起因して労働災害が発生することのないように、あらかじめ定められた安全側の状態に固定し、故障の環境を限定することにより、作業者の安全を確保する仕組みをフール・プルーフという。
(2)人間の意識レベルを、フェーズ0(無意識)、フェーズⅠ(subnormal)、フェーズⅡ(normal、relaxed)、フェーズⅢ(normal、clear)及びフェーズⅣ(hypernormal、excited)の5段階に分けているモデルでは、人間が最もエラーを起こしにくいのはフェーズⅢのときである。
(3)ヒューマンエラーの発生確率を下げる対策として、作業者の技能を確保するため、当該作業に就くために必要な資格を定めることがある。
(4)計器の表示方法としては、アナログ表示はデジタル表示と比べると、連続的な変化の傾向や程度が分かりやすい。
(5)事故原因の分析に用いられることがあるSHELモデルは、ヒューマンファクターの重要性を説明するために提案されたものであり、SHELはそれぞれ、S(ソフトウェア)、H(ハードウェア)、E(環境)及びL(ライブウェア(人間))を意味している。
正答(1)
【解説】
(1)適切ではない。本肢はフェールセーフについての説明である。フールプルーフとは、人間の誤判断、誤操作等がシステムに悪影響を与えたり危険な状態にならないようにすることをいう。2017年問9の(3)に同種問題がある。
(2)適切である。正しい、人間の緊張のレベルは高すぎても低すぎてもエラーを起こしやすいとされており、意識レベルを5段階に分ける本肢のモデルでは、フェーズⅢのときが最もエラーを起こしにくいとされている。2017年問9の(5)に同種問題がある。
(3)やや疑問はあるが、適切であるとしておく。資格があればヒューマンエラーを起こさないという発想にはやや疑問も感じる。
しかし、近道行動、無知による不安全行動、訓練不足による不安全行動もヒューマンエラーであると考えれば、ヒューマンエラーの発生確率を下げる対策として、作業者の技能を確保するため、当該作業に就くために必要な資格を定めることはあり得よう。
(4)適切である。計器のデジタルとアナログのメリット、デメリットを挙げるとき、デジタルは正確に読み取れるが「連続的な変化の傾向と程度」を感覚的に理解するには適していない。2017年問9の(1)に同種問題がある。
(5)適切である。エドワーズが1972年に提唱したSHELモデルは、当初は航空パイロットのヒューマンエラーを説明するためのモデルであった。
SHELはそれぞれ、S(Software)、H(Hardware)、E(Environment)及びL(Liveware(人間))を意味している(※)。
※ 例えば、(独法)情報処理推進機構「情報処理システム高信頼化教訓集(IT サービス編)PART Ⅲ:障害分析手法」(2017年)などを参照。
※ 図は、厚生労働省「患者誤認事故防止方策に関する検討会報告書」(1999年)より
なお、近年ではm(management)を追加したm-SHELモデルや、医療現場向けにさらにP(patient:患者)を追加したPm-SHELモデルも用いられる。