問6 クレーン及び移動式クレーンに関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)移動式クレーンの箱型構造ジブの場合は、ジブを伸ばすとフックブロックが巻上げの状態になる。
(2)クレーンの巻上装置に主巻と補巻を設ける場合、定格荷重の大きい方を主巻、小さい方を補巻と呼び、一般には巻上速度は補巻の方が速い。
(3)ジブクレーンでは、つり荷の地切りの時にはマストやジブのたわみによるフック及びつり荷のずれを考慮して、巻上げのみではなくジブ上げ(起こし)を併用する。
(4)移動式クレーンの後方安定度は、ジブの起こし過ぎにより後方に転倒しないための安定度合を示す。
(5)クローラクレーンは、一般に、前方領域に比べ、側方領域及び後方領域の定格総荷重が小さい。
このページは、2021年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。
他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。
柳川に著作権があることにご留意ください。
2021年度(令和03年度) | 問06 | 難易度 | クレーン等に関する基本的な知識問題だが、意外に難問だったようだ。知識がないと正答できない。 |
---|---|---|---|
クレーン等 | 5 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問6 クレーン及び移動式クレーンに関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)移動式クレーンの箱型構造ジブの場合は、ジブを伸ばすとフックブロックが巻上げの状態になる。
(2)クレーンの巻上装置に主巻と補巻を設ける場合、定格荷重の大きい方を主巻、小さい方を補巻と呼び、一般には巻上速度は補巻の方が速い。
(3)ジブクレーンでは、つり荷の地切りの時にはマストやジブのたわみによるフック及びつり荷のずれを考慮して、巻上げのみではなくジブ上げ(起こし)を併用する。
(4)移動式クレーンの後方安定度は、ジブの起こし過ぎにより後方に転倒しないための安定度合を示す。
(5)クローラクレーンは、一般に、前方領域に比べ、側方領域及び後方領域の定格総荷重が小さい。
正答(5)
【解説】
(1)適切であるとしておくが疑問。通常の移動式クレーンでは、箱型構造ジブの場合は、ジブを伸ばすとフックブロックが巻上げの状態になる。ただし、近年では移動式クレーンの自動制御化が進んでおり、ジブを伸ばしてもフックが上昇しないものも販売されている。そのため、やや疑問はあるが、(5)が明らかに誤っているので、こちらは適切としておく。おそらく出題者が最新のクレーンの技術事情に詳しくなかったのであろう。
なお、ジブを伸縮させると、作業半径が変化し、つり上げ性能およびクレーンの安定度も変化する。そのため、油圧式のジブでは、荷をつったままの伸縮操作は基本的に行わないようにする。
(2)適切である。移動式クレーンには、積載形トラッククレーンを除き、一般に、巻上装置が2個装備されているものが多い。巻上用ワイヤロープの掛数を増やした重荷重用の巻上装置を「主巻」、単索(一本掛け)で荷をつる補助用のものを「補巻」という。
すなわち、定格荷重の大きい方が主巻、小さい方が補巻であり、巻上速度は補巻の方が速い。
(3)適切である。ジブクレーンでは、つり荷を地切りすると、マストやジブがたわむため作業半径が増し、荷が外側に振れるのである。そのため、フック及びつり荷がずれないように、巻上げと同時にわずかにジブの上げ(起こし)操作をすると荷が揺れなくなる。
なお、ブーム上げのみで地切りをすると、過負荷でも自動停止しないため危険なので行ってはならない。
(4)適切である。後方安定度とは、移動式クレーンの後方への転倒に対する安定性を示したものである。
なお、移動式クレーン構造規格第13条に、荷をつらない状態でアウトリガを使用せず、ジブの長さを最短、傾斜角を最大にした時、ジブ側の転倒支点に移動式クレーンの質量に重力加速度を乗じた値の15%以上が残っていなくてはならないと定められている(※)。
※ ただし、アウトリガの張出幅を自動的に検出し、ジブの傾斜角や旋回角度を制限して後方安定度を確保できる安全装置を備えている移動式クレーンについては、アウトリガを使用した状態で計算した値である。
(5)適切ではない。クローラクレーン(クローラ式のクレーン機能付き油圧ショベルを含む)の作業領域は、全周同じ性能で、定格総荷重も全周同じ値に設定する(※)。これは、ラフテレーンクレーンで、全てのアウトリガーを最大張出しにした場合も同じで、全周同じ性能となる。
※ 日本クレーン協会「クローラクレーン災害と安全ポイント」の「2.クローラクレーンの基礎知識」の(2)を参照されたい。
なお、定格総荷重とは、クレーン等の所定の状態において、その構造、材料及びジブの傾斜角等に応じて負荷させることのできる最大の荷重である。この値はフックとつり具とつり荷の合計質量である(※)。
※ なお、平成30年2月26日基発0226第1号「クレーン又は移動式クレーンの過負荷防止装置構造規格等の一部改正について」の記のⅡの第2の6の(1)を参照されたい。