問29 厚生労働省の「機械の包括的な安全基準に関する指針」における安全防護の方法に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)機械の正常な運転において、安全防護領域に進入する必要があり、かつ、危険性又は有害性となる運動部分の動作を停止させることにより安全防護を行うことが作業遂行上適切でない場合は、調整式ガード等の当該運動部分の露出を最小限とする手段を設ける。
(2)機械の正常な運転において、安全防護領域に進入する必要がない場合は、当該安全防護領域の全周囲を固定式ガード、インターロック付き可動式ガード等で囲む。
(3)機械に蓄積されたエネルギー等により機械の運動部分の動作を停止させた状態が維持できないとリスクの増加を生じるおそれのあるときは、当該運動部分の停止状態を確実に保持できる機械的拘束装置を備える。
(4)調整式ガードは、特殊な工具等を使用することなく調整でき、かつ、特定の運転中は安全防護領域を覆うか又は当該安全防護領域を可能な限り囲うことができるものとする。
(5)保護装置は、容易に無効とすることができないものとし、この装置を取り外さなければ、工作機械の刃等の工具の交換の作業が行えないようにする。
このページは、2020年の労働安全コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と正答を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2020年度(令和02年度) | 問29 | 難易度 | 機械の包括的な安全基準に関する指針は、毎年出題される。確実に正答できるようにしておきたい。 |
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機械の包括的な安全基準 | 2 |
問29 厚生労働省の「機械の包括的な安全基準に関する指針」における安全防護の方法に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)機械の正常な運転において、安全防護領域に進入する必要があり、かつ、危険性又は有害性となる運動部分の動作を停止させることにより安全防護を行うことが作業遂行上適切でない場合は、調整式ガード等の当該運動部分の露出を最小限とする手段を設ける。
(2)機械の正常な運転において、安全防護領域に進入する必要がない場合は、当該安全防護領域の全周囲を固定式ガード、インターロック付き可動式ガード等で囲む。
(3)機械に蓄積されたエネルギー等により機械の運動部分の動作を停止させた状態が維持できないとリスクの増加を生じるおそれのあるときは、当該運動部分の停止状態を確実に保持できる機械的拘束装置を備える。
(4)調整式ガードは、特殊な工具等を使用することなく調整でき、かつ、特定の運転中は安全防護領域を覆うか又は当該安全防護領域を可能な限り囲うことができるものとする。
(5)保護装置は、容易に無効とすることができないものとし、この装置を取り外さなければ、工作機械の刃等の工具の交換の作業が行えないようにする。
正答(5)
【解説】
本問の「機械の包括的な安全基準に関する指針」(以下、本問の解説中において「指針」と略す。)の安全防護は、「別表第3 安全防護の方法」に定められている。
(1)適切である。指針別表第3の3(2)ウのままである。
受験者の中で、安全防護領域に進入することが誤りとして本肢を正答と考えたケースがあるようだ。しかし、修理作業等の場合は「安全防護領域に進入する必要があり、かつ、危険性又は有害性となる運動部分の動作を停止させることにより安全防護を行うことが作業遂行上適切でない」ケースがでてくるのである。本肢は、その場合の対応に関するものである。
【機械の包括的な安全基準に関する指針/別表第3 安全防護の方法】
3 ガード又は保護装置の設置は、機械に労働者が関わる作業に応じ、次に定めるところにより行うこと。
(2)動力伝導部分以外の運動部分に安全防護を行う場合は、次に定めるところによること。
ウ 機械の正常な運転において、安全防護領域に進入する必要があり、かつ、危険性又は有害性となる運動部分の動作を停止させることにより安全防護を行うことが作業遂行上適切でない場合は、調整式ガード(全体が調整できるか、又は調整可能な部分を組み込んだガードをいう。)等の当該運動部分の露出を最小限とする手段を設けること。
(2)適切である。指針別表第3の3(2)ウのままである。機械の正常な運転において、安全防護領域に進入する必要がないのであれば、固定式ガード、インターロック付き可動式ガード等で囲むことで安全を確保するべきである。
【機械の包括的な安全基準に関する指針/別表第3 安全防護の方法】
3 ガード又は保護装置の設置は、機械に労働者が関わる作業に応じ、次に定めるところにより行うこと。
(2)動力伝導部分以外の運動部分に安全防護を行う場合は、次に定めるところによること。
ア 機械の正常な運転において、安全防護領域に進入する必要がない場合は、当該安全防護領域の全周囲を固定式ガード、インターロック付き可動式ガード等のガード又は光線式安全装置、圧力検知マット等の身体の一部の進入を検知して機械を停止させる保護装置で囲むこと。
(3)適切である。指針別表第3の6のままである。やたらに分かりにくい表現をしているが、機械を停止させたときに、機械が惰性や重力等によって動いて危険が生じるおそれがあるなら、機械的なブレーキで固定しろというのである。
【機械の包括的な安全基準に関する指針/別表第3 安全防護の方法】
6 機械に蓄積されたエネルギー、位置エネルギー、機械の故障若しくは誤動作又は誤操作等により機械の運動部分の動作を停止させた状態が維持できないとリスクの増加を生じるおそれのあるときは、当該運動部分の停止状態を確実に保持できる機械的拘束装置を備えること。
(4)適切である。指針別表第3の4(4)のままである。これも分かりにくい表現だが、調整式ガードは、ドライバや六角レンチなどありふれた工具で調整でき、かつ、運転中はできるだけ危険な場所を囲えと言っている。
【機械の包括的な安全基準に関する指針/別表第3 安全防護の方法】
4 ガードについては、次によること。
(4)調整式ガードは、特殊な工具等を使用することなく調整でき、かつ、特定の運転中は安全防護領域を覆うか又は当該安全防護領域を可能な限り囲うことができるものとすること。
(5)適切ではない。指針別表第3の5(4)により、保護装置は、容易に無効とすることができないものとし、この装置を取外すことなしに、工作機械の刃等の工具の交換の作業が行えないようにする。
当然であろう。刃等の工具の交換の作業を行うときに、保護装置を取外したら、かえって危険だろう。そのことに気が付けば、指針の内容を知らなくとも正答できる。試験協会のサービス問題である。
【機械の包括的な安全基準に関する指針/別表第3 安全防護の方法】
5 保護装置については、次に定めるところによるものとすること。
(4)取外すことなしに、工具の交換、そうじ、給油及び調整等の作業が行えるよう設けられること。