労働安全コンサルタント試験 2020年 産業安全一般 問24

労働災害の原因分析の技法等




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合格

 このページは、2020年の労働安全コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と正答を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2020年度(令和02年度) 問24 難易度 労働災害の原因分析技法は2019年に続いて2年連続の出題。過去問を深く踏み込むことで正答可能。
労働災害の原因分析技法

問24 労働災害の原因分析等に用いる技法等に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)特性要因図は、問題とする特性と、それに影響を及ぼしていると思われる要因との関連を整理して魚の骨のような図を体系的にまとめたものである。

(2)ETA(Event Tree Analysis:事象の木解析)は、機器の不具合やヒューマンエラーなどの初期(起因)事象からスタートして、最終的な労働災害(結果)に至るまでの各段階での問題点の分析に用いられる。

(3)HAZOP(Hazard and Operability:ハゾップ)スタディーズは、化学プラントのようなプロセスプラントに潜在する危険、特に設計仕様を逸脱して運転を行った場合の原因と危険事象の洗い出し及び解析に用いられる。

(4)FTA(Fault Tree Analysis:故障の木解析)のFTを作成する手順は、災害の直接原因となる不良状態や作業者のエラー(欠陥事象)を頂上事象として最上段に記述し、その下位事象として解析しようとする災害を記述して、両者の間をゲート記号(ANDゲート、ORゲート等)で結ぶ。

(5)FTAの分析で使用するゲート記号の中のANDゲートは、二つの入力事象がある場合に、両方の入力事象が共存する場合にのみ出力事象が発生することを意味している。

正答(4)

【解説】

(1)適切である。特性要因図(石川ダイアグラム/魚の骨図)(※)は、石川馨氏が考案されたとされる、結果(災害)に対する原因の相関をビジュアル化するための手法であり、本肢の記述の通りのものである。

※ 石川馨「品質管理入門 QCテキスト・シリーズ1」(日科技連出版社 1956年)

いわゆる「QC7つ道具」のひとつである。なお、近年では魚の骨図ではなく、表形式で表すこともあるようである。

Fault Tree Analysis

図をクリックすると拡大します

(2)適切である。右図は神奈川県の資料(※)から引用したETAの概念図であるが、「ある災害の原因となると考えられる事象」(図で「初期事象」とされている)から出発する。次にその事象が災害につながることを阻止するための手法(機能)を考え、それを「成功」と「失敗」の2通りに分岐させる。図では、2つの手法を考え、これの「成功」の確率をそれぞれP1とP2と考えている。

※ 神奈川県石油コンビナート等防災対策検討会「神奈川県石油コンビナート等防災アセスメント調査報告書」(2015年3月)

この方法で、イベントツリー(Event Tree)を作成し、最終的な事象である事故が発生する確率を算出する手法がETAである。

(3)適切である。HAZOPスタディーズは、英国のICI 社(Imperial Chemical Industry)が自社の化学プロセスの安全性評価のために開発した手法が基になっており、1977年に英国のCIA(Chemical Industries Association)がHAZOPという名称でガイドラインを公表した。我が国でも、多くの化学産業において新規プラントの安全性評価や、既設プラントの安全性の見直しに用いられている。

高木(※)によると「HAZOP は、設計意図通りの設計、運転操作がなされればプラントは安全であり、危険事象は設計意図からのずれが生じることにより発生するという考えに立っている。このため設計意図からのずれの原因を明らかにし、ずれの発生防止対策ならびにずれが発生したときの影響を緩和する防護対策を講じることによりプラントの安全性は確保されるという基本思想にもとづいている」とされている。

※ 高木伸夫「プロセス安全性評価における HAZOPの効率的運用」(安全工学 Vol.44 No.1 2005年)

(4)適切ではない。頂上事象と下位事象が逆である。FTAにおいては、災害などの結果を頂上事象(top event)とし、災害の直接原因となる不良状態や作業者のエラーは下位事象とする。

(5)適切である。FTA分析に限らず、ANDゲートとは、複数(2つとは限らない)の入力がある場合に、すべての入力が“ON”になった場合に出力が“ON”となる素子である。

2020年11月22日執筆