労働安全コンサルタント試験 2020年 産業安全一般 問23

マグネシウムの危険性と災害防止




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合格

 このページは、2020年の労働安全コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と正答を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2020年度(令和02年度) 問23 難易度 マグネシウムの危険性についての知識問題。化学安全以外の受験者にはやや難問だったか。
マグネシウムの危険性

問23 マグネシウムに関する次のイ~ニの記述について、正しいものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

イ 燃焼中のマグネシウムに水が触れると水素と酸素が発生して激しく燃焼する。

ロ マグネシウム粉が空気中に浮遊すると、着火源により粉じん爆発を起こすことがある。

ハ 空気中の燃焼によって炭酸マグネシウムを生成する。

ニ 火災が起きた場合には、水をかけて消火する。

(1)イ   ロ

(2)イ   ハ

(3)ロ   ハ

(4)ロ   ニ

(5)ハ   ニ

正答(1)

【解説】

マグネシウムは、沸騰した水や二酸化炭素中で燃焼する。水や二酸化炭素の酸素を奪って燃焼するのである。

Mg+2H2OH2+Mg(OH)2 (水中)

2Mg+CO22MgO+C   (二酸化炭素中)

※ 私が中学生のとき、物理の先生が生徒を教室の前に集めて、マグネシウムリボンに火をつけて見せた。当然のことだが、それは激しく燃え上がった。

次に、冷えた気体の二酸化炭素をビーカの中に注ぎ込み、「火のついたマグネシウムリボンをこのビーカの中に入れたらどうなるかな」と私たちに尋ねられた。

私たちは、酸素がなければ物は燃えないと“知っていた”ので、一斉に「火が消える」と声を合わせたものだ。すると先生は、黙って火のついたマグネシウムリボンをビーカに差し入れた。

驚くべきことに、マグネシウムリボンは発光色を変えたものの、そのまま燃え続けたのである。先生は「なぜだ、火は消えるんじゃなかったのか」とだけ私たちに尋ねた。

私は「二酸化炭素を還元して、燃えたんじゃないですか」と答えた。その答えは不完全なものだったらしく、先生は、さらに「それはどういう意味か」と聞かれた。「マグネシウムが二酸化炭素の酸素を奪ったのだと思います」と答えたところ、「ではビーカの中にできた黒い粉は何か」と尋ねられたので「炭素です」と答えたら、先生は満足したらしく「その通りだ」と言われた。

そのとき隣にいた女子生徒が、「すごい」という雰囲気で私を見たので、どきっとしたのを今でも覚えている。

マグネシウムによる災害事例として、2018年10月の福岡県小竹町での酸化マグネシウムを製造するタンクの爆発事故(死亡1名)や、2014年5月の東京都町田市でのマグネシウム合金を加工する工場での火災事故(死亡1、負傷6)などがある。

本問は、ロが正しく、ハが誤っていることはすぐに分かるだろう。イとニで迷った受験者が多かったようだが、マグネシウム火災で水をかけてはならないことは知っておかねばならない。

イ 正しい。上記に示した通り。

ロ 正しい。解説する必要はないだろう。

ハ 誤り。どこから炭素が出てくる!

ニ 誤り。金属マグネシウムには水をかけてはならない。そのためマグネシウムを扱う工場の火災では消火が難しい。イの解説参照。

※ 山田暢司氏のブログ(らくらく理科教室)に「マグネシウムの燃焼」というコンテンツがアップされていて参考になる。

2020年11月22日執筆