問18 工場の機械設備に用いる安全装置の機能保持等に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)クレーンの電気式による巻過防止装置の巻過ぎを検出するリミットスイッチは、溶着による誤動作を防ぐため、接点が閉じることにより巻過ぎが防止される構造とする。
(2)機械の始動スイッチにはノーマルオープン型が用いられ、停止スイッチにはノーマルクローズ型が用いられるのは、スイッチの接触不良や配線の断線が危険側の故障にならないようにするためである。
(3)押しボタン式の非常停止装置は、押しボタンを押した力が直接働いて電気接点を開路する構造とする。
(4)安全上重要な機構や制御システムの故障等による危害を防止するために使用される非対称故障モードの構成品とは、複数の故障モードがある部品や回路において、特定の故障モードの発生確率が他より極端に高くなるような特性を持たせることにより、安全側に(一般的には機械が停止する側に)故障する確率を高くするようにしたものである。
(5)安全装置の回路を二重化するときには、共通原因による故障を防止するために、二つの回路の回路構成、部品の特性、素材等を異なったものとする。
このページは、2020年の労働安全コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と正答を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2020年度(令和02年度) | 問18 | 難易度 | 機械設備に用いる安全装置の機能保持等に関する知識問題。かなりの難問だったようだ。 |
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安全装置の機能保持等 | 5 |
問18 工場の機械設備に用いる安全装置の機能保持等に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)クレーンの電気式による巻過防止装置の巻過ぎを検出するリミットスイッチは、溶着による誤動作を防ぐため、接点が閉じることにより巻過ぎが防止される構造とする。
(2)機械の始動スイッチにはノーマルオープン型が用いられ、停止スイッチにはノーマルクローズ型が用いられるのは、スイッチの接触不良や配線の断線が危険側の故障にならないようにするためである。
(3)押しボタン式の非常停止装置は、押しボタンを押した力が直接働いて電気接点を開路する構造とする。
(4)安全上重要な機構や制御システムの故障等による危害を防止するために使用される非対称故障モードの構成品とは、複数の故障モードがある部品や回路において、特定の故障モードの発生確率が他より極端に高くなるような特性を持たせることにより、安全側に(一般的には機械が停止する側に)故障する確率を高くするようにしたものである。
(5)安全装置の回路を二重化するときには、共通原因による故障を防止するために、二つの回路の回路構成、部品の特性、素材等を異なったものとする。
正答(1)
【解説】
(1)適切ではない。巻過防止装置の巻過ぎを検出するリミットスイッチは、接点を開くことによって作動するようになっている。物理的な力で作動するので、接点の溶着はあまり気にしなくてよい。接触不良の危険を考えれば、この方が確実に作動する。
【クレーン構造規格】
(巻過防止装置)
第25条 (第1項略)
2 前条の巻過防止装置のうち電気式のものにあっては、前項に定めるところによるほか、次に定めるところによるものでなければならない。
一~四 (略)
五 接点が開放されることにより巻過ぎが防止される構造とすること。
六 (略)
(2)適切である。機械の始動スイッチにノーマルオープン型(a接点)が用いられ、停止スイッチにノーマルクローズ型(b接点)が用いられることは、ほぼ常識であろう。
あまりにも常識的すぎて意識することも少ないが、それには理由があり、スイッチの接触不良や配線の断線が危険側の故障にならないようにするためである。
(3)適切である。「工作機械等の制御機構のフェールセーフ化に関するガイドライン」により、押しボタン式の非常停止装置は、押しボタンを押した力が直接働いて電気接点を開路する構造とする。
【工作機械等の制御機構のフェールセーフ化に関するガイドライン】
5 フェールセーフ化の具体的方法
5-1 部品類の要件
(3) 非常停止用装置
イ 非常停止ボタンは強制引き離し式のノーマルクローズ型であること。
ロ 接点の接触不良が生じたとき機械を停止できなくなることを防止するため、ノーマルオープン型でないこと。
(4)適切である。平成13年6月5日基安安発第14号「「機械の包括的な安全基準に関する指針」の解説等について」によれば、「「非対称故障特性」とは、複数の故障モードがある部品や回路において、特定の故障モードの発生確率が他より極端に高くなるような特性で、部品や回路にこの特性を持たせることにより、安全側に(一般的には機械が停止する側に)故障する確率を高くするものであること
」であるとされている。
(5)適切である。安全装置の回路を二重化するときに、二つの回路の回路構成、部品の特性、素材等を同じものにしておくと、共通原因によって同時に故障する可能性が高くなる。これを防止するためには、2つの回路の要素をできるだけ異なったものとする必要がある。
なお、機能安全に関するIEC-61508は、システムを二重化した場合であっても、共通要因故障があることから、信頼性 β の向上は0.01<β<0.1程度であるとしている。