労働安全コンサルタント試験 2019年 産業安全関係法令 問15

労働安全衛生法全般




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 このページは、2019年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2019年度(令和元年度) 問15 難易度 基本を押さえておけば正答できる問題である。確実に正答できなければならない。
安衛法全般

問15 常時450人の労働者を使用する有機化学工業製品製造業の事業場から労働安全コンサルタントに安全診断の依頼があり、安全診断を行った結果、当該事業場において次のような状況がみられた。これらの状況のうち、労働安全衛生法令上、違反となるものはどれか。

(1)工場長を総括安全衛生管理者として選任していたが、その工場長が人事異動により他工場に転出したため、その転出日から後任の工場長を新たな総括安全衛生管理者として選任するまでの7日間、総括安全衛生管理者が未選任の状態であった。

(2)安全管理者を2人選任しており、そのうちの1人はその事業場に専属の者で、勤務時間のおおむね2分の1が安全管理の業務で、残りの2分の1が生産関係の業務であった。他の1人は社外の労働安全コンサルタントで週1日来社していた。

(3)荷の落下によりフォークリフトの運転者に危険を及ぼすおそれのない作業では、ヘッドガードを備えていないフォークリフトを使用していた。

(4)化学設備の修理を行う場合において、化学設備を分解する作業を行うとき、作業箇所に危険物等が漏えいし、又は高温の水蒸気等が逸出しないように、バルブを二重に閉止していたが、閉止板は施していなかった。

(5)危険物を取り扱う作業場は平屋の建物であり、当該建物には、非常の場合に容易に地上の安全な場所に避難することができる2か所の出入口が設けられ、その出入口に設けた戸は、1か所は引戸で、もう1か所は外開戸であった。

正答(2)

【解説】

(1)違反とはならない。本肢の場合、「総括安全衛生管理者を選任すべき事由が発生した日」は前任の総括安全衛生管理者が転任した日である(昭和47年9月18日基発第601号の1の記のⅠの第2の1)。安衛則第2条の規定により、この日から 14 日(転任した日を含む(※))以内に、新たな総括安全衛生管理者を選任すればよいので、7日間未選任状態だったことは違反にならない。

※ 法令用語では、「○○の日から□□日以内に」とある場合の期日の計算では初日を含まないが、初日の原因が午前零時から始まっている場合は初日を含むのである(民法第 140 条)。転任の日は通常は午前零時からであろうから、初日を含むと考えるべきである。

なお、総括安全衛生管理者を工場長としていることは、安衛法第 10 条第2項に遵っており違反とはならない。

【労働安全衛生法】

(総括安全衛生管理者)

第10条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。

一~五 (略)

 総括安全衛生管理者は、当該事業場においてその事業の実施を統括管理する者をもつて充てなければならない。

 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(総括安全衛生管理者を選任すべき事業場)

第2条 労働安全衛生法(以下「法」という。)第十条第一項の政令で定める規模の事業場は、次の各号に掲げる業種の区分に応じ、常時当該各号に掲げる数以上の労働者を使用する事業場とする。

 (略)

 製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゆう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゆう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 300人

 (略)

【労働安全衛生規則】

(総括安全衛生管理者の選任)

第2条 法第10条第1項の規定による総括安全衛生管理者の選任は、総括安全衛生管理者を選任すべき事由が発生した日から14日以内に行なわなければならない。

2及び3 (略)

(2)違反となる。この事業場は「常時 450 人の労働者を使用する有機化学工業製品製造業の事業場」であるから、安衛則第4条第1項第四号の規定により、少なくとも1名は専任(安全管理者の仕事のみを行う)としなければならない。この事業場の安全管理者は全員が兼任であるので違反となる。

なお、安全コンサルタントである安全管理者が非専属(その事業場に所属していないこと)は、同第4条第1項第二号により違反とはならない。

「専属」と「専任」を混同しないこと。

【労働安全衛生法】

(安全管理者)

第11条 事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、安全管理者を選任し、その者に前条第1項各号の業務(第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第1項各号の措置に該当するものを除く。)のうち安全に係る技術的事項を管理させなければならない。

 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(安全管理者を選任すべき事業場)

第3条 法第11条第1項の政令で定める業種及び規模の事業場は、前条第一号又は第二号に掲げる業種の事業場で、常時五十人以上の労働者を使用するものとする。

【労働安全衛生規則】

(安全管理者の選任)

第4条 法第11条第1項の規定による安全管理者の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。

 (略)

 その事業場に専属の者を選任すること。ただし、2人以上の安全管理者を選任する場合において、当該安全管理者の中に次条第二号に掲げる者がいるときは、当該者のうち一人については、この限りでない。

 (略)

 次の表の中欄に掲げる業種に応じて、常時同表の下欄に掲げる数以上の労働者を使用する事業場にあつては、その事業場全体について法第十条第一項各号の業務のうち安全に係る技術的事項を管理する安全管理者のうち少なくとも1人を専任の安全管理者とすること。ただし、同表四の項の業種にあつては、過去3年間の労働災害による休業1日以上の死傷者数の合計が100人を超える事業場に限る。

建設業
有機化学工業製品製造業
石油製品製造業
300人
(略) (略) (略)

 (略)

(安全管理者の資格)

第5条 (柱書 略)

 (略)

 労働安全コンサルタント

 (略)

(3)違反とはならない。安衛則第 151 条の 17 は、安衛法第 88 条第2項は、「荷の落下によりフオークリフトの運転者に危険を及ぼすおそれのないとき」は除かれている。ただ、ヘッドガードのないフォークリフトを用いることは、望ましいことではない(※)

※ まれに、機械工場でマシニングセンタを設置する場合などでフォークリフトを用いるときなどに、配管等が上部にあってヘッドガードがあると作業ができないことがある。その様な場合に、ヘッドガードを取りはずしたフォークリフトを用いることがあるが、現実には、きわめてまれである。

【労働安全衛生規則】

(ヘツドガード)

第151条の17 事業者は、フオークリフトについては、次に定めるところに適合するヘツドガードを備えたものでなければ使用してはならない。ただし、荷の落下によりフオークリフトの運転者に危険を及ぼすおそれのないときは、この限りでない。

一~四 (略)

(4)違反とはならない。バルブを二重に閉止していれば、安衛則第 275 条第三号を満足している。

【労働安全衛生規則】

(改造、修理等)

第275条 事業者は、化学設備又はその附属設備の改造、修理、清掃等を行う場合において、これらの設備を分解する作業を行い、又はこれらの設備の内部で作業を行うときは、次に定めるところによらなければならない。

一及び二 (略)

 作業箇所に危険物等が漏えいし、又は高温の水蒸気等が逸出しないように、バルブ若しくはコックを二重に閉止し、又はバルブ若しくはコックを閉止するとともに閉止板等を施すこと。

四及び五 (略)

(5)違反とはならない。安衛則第 546 条を満足している。なお、出入口に設ける戸は、引戸又は外開戸でなければならないとしているのは、内向きに開く扉では緊急時に退出することが困難となるからである。

【労働安全衛生規則】

(危険物等の作業場等)

第546条 事業者は、危険物その他爆発性若しくは発火性の物の製造又は取扱いをする作業場及び当該作業場を有する建築物の避難階(直接地上に通ずる出入口のある階をいう。以下同じ。)には、非常の場合に容易に地上の安全な場所に避難することができる2以上の出入口を設けなければならない。

 前項の出入口に設ける戸は、引戸又は外開戸でなければならない。

2019年12月30日執筆 2024年11月17日最終改訂

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