問14 事業者が行うべき計画届又は報告に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。
ただし、労働基準監督署長による計画の届出の免除に係る認定を受けていないものとする。
(1)つり上げ荷重が 0.5 トン以上1トン未満のスタッカー式クレーンを設置しようとするときは、あらかじめ、クレーン設置報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
(2)高さ及び長さがそれぞれ 10 メートル以上の架設通路(組立てから解体までの期間が60日未満のものを除く。)を設置しようとするときは、その計画を当該工事の開始の日の 30 日前までに、所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。
(3)堤高が150メートル以上のダムの建設の仕事を開始しようとするときは、その計画を当該仕事の開始の日の30日前までに、厚生労働大臣に届け出なければならない。
(4)労働災害のうち休業を伴わないものについては、1月から 12 月までの期間における当該事実について、所定の様式による報告書を翌年の1月末日までに所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
(5)事業場で建設物の倒壊の事故が発生した場合には、負傷者が生じていないときでも、遅滞なく、事故報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
このページは、2019年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2019年度(令和元年度) | 問14 | 難易度 | 選択肢にはかなり詳細な内容も含まれているが、本質は基本的な問題。正答できなければならない。 |
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計画届又は報告 | 5 |
問14 事業者が行うべき計画届又は報告に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。
ただし、労働基準監督署長による計画の届出の免除に係る認定を受けていないものとする。
(1)つり上げ荷重が 0.5 トン以上1トン未満のスタッカー式クレーンを設置しようとするときは、あらかじめ、クレーン設置報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
(2)高さ及び長さがそれぞれ 10 メートル以上の架設通路(組立てから解体までの期間が60日未満のものを除く。)を設置しようとするときは、その計画を当該工事の開始の日の 30 日前までに、所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。
(3)堤高が150メートル以上のダムの建設の仕事を開始しようとするときは、その計画を当該仕事の開始の日の30日前までに、厚生労働大臣に届け出なければならない。
(4)労働災害のうち休業を伴わないものについては、1月から 12 月までの期間における当該事実について、所定の様式による報告書を翌年の1月末日までに所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
(5)事業場で建設物の倒壊の事故が発生した場合には、負傷者が生じていないときでも、遅滞なく、事故報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
正答(4)
【解説】
(1)正しい。事業者はクレーン則第5条の規定により、スタッカー式クレーンを含むすべてのクレーンについて、設置しようとするときは、事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長に提出しなければならない。
クレーン則の適用は同規則第2条により、吊り上げ荷重 0.5 トン未満のものは除かれるが、本肢は「0.5トン以上1トン未満」としているので関係がない。また、安衛法第88条第1項但書の除外規定についても、本問が「労働基準監督署長による計画の届出の免除に係る認定を受けていない」としているので適用がない。
なお、スタッカー式クレーンとは「直立したガイドフレームに沿って上下するフォーク等を装備し、ウォーキング(フォークを出し入れ)によって倉庫の棚の荷を出し入れするために使用され
」(※)る天井クレーンである。
※ 厚生労働省「労働安全衛生法で規制する特定機械について」19頁
【労働安全衛生法】
(計画の届出等)
第88条 事業者は、機械等で、危険若しくは有害な作業を必要とするもの、危険な場所において使用するもの又は危険若しくは健康障害を防止するため使用するもののうち、厚生労働省令で定めるものを設置し、若しくは移転し、又はこれらの主要構造部分を変更しようとするときは、その計画を当該工事の開始の日の三十日前までに、厚生労働省令で定めるところにより、労働基準監督署長に届け出なければならない。ただし、第28条の2第1項に規定する措置その他の厚生労働省令で定める措置を講じているものとして、厚生労働省令で定めるところにより労働基準監督署長が認定した事業者については、この限りでない。
2~7 (略)
【クレーン等安全規則】
(適用の除外)
第2条 この省令は、次の各号に掲げるクレーン、移動式クレーン、デリック、エレベーター、建設用リフト又は簡易リフトについては、適用しない。
一 クレーン、移動式クレーン又はデリックで、つり上げ荷重が0.5トン未満のもの
二~四 (略)
(設置届)
第5条 事業者は、クレーンを設置しようとするときは、労働安全衛生法(以下「法」という。)第88条第1項の規定により、クレーン設置届(様式第二号)にクレーン明細書(様式第三号)、クレーンの組立図、別表の上欄に掲げるクレーンの種類に応じてそれぞれ同表の下欄に掲げる構造部分の強度計算書及び次の事項を記載した書面を添えて、その事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長(以下「所轄労働基準監督署長」という。)に提出しなければならない。
一~三 (略)
(2)正しい。安衛則第 85 条及び同別表第7第十一号の規定により、高さ及び長さがそれぞれ 10 メートル以上の架設通路(組立てから解体までの期間が 60 日未満のものを除く。)は、安衛法第 88 条第1項の届出の対象となる。
【労働安全衛生法】
(計画の届出等)
第88条 事業者は、機械等で、危険若しくは有害な作業を必要とするもの、危険な場所において使用するもの又は危険若しくは健康障害を防止するため使用するもののうち、厚生労働省令で定めるものを設置し、若しくは移転し、又はこれらの主要構造部分を変更しようとするときは、その計画を当該工事の開始の日の30日前までに、厚生労働省令で定めるところにより、労働基準監督署長に届け出なければならない。ただし、第28条の2第1項に規定する措置その他の厚生労働省令で定める措置を講じているものとして、厚生労働省令で定めるところにより労働基準監督署長が認定した事業者については、この限りでない。
2~7 (略)
【労働安全衛生規則】
(計画の届出をすべき機械等)
第85条 法第88条第1項の厚生労働省令で定める機械等は、法に基づく他の省令に定めるもののほか、別表第七の上欄に掲げる機械等とする。ただし、別表第七の上欄に掲げる機械等で次の各号のいずれかに該当するものを除く。
一 (略)
二 機械集材装置、運材索道、架設通路又は足場で、組立てから解体までの期間が60日未満のもの
別表第七 (第八十五条、第八十六条関係)
機械等の種類 | 事項 | 図面等 |
---|---|---|
(略) | (略) | (略) |
十一 架設通路(高さ及び長さがそれぞれ10メートル以上のものに限る。) |
(略) | (略) |
(略) | (略) | (略) |
(3)正しい。安衛法第 88 条第2項は、厚生労働大臣への届出を規定しており、その範囲は安衛則第 89 条に定められている。この条文は覚えておかなければならないが、仮に覚えていなかったとしても、(4)が明らかに誤っているので、本問については正答はできるだろう。
【労働安全衛生法】
(計画の届出等)
第88条 (第1項 略)
2 事業者は、建設業に属する事業の仕事のうち重大な労働災害を生ずるおそれがある特に大規模な仕事で、厚生労働省令で定めるものを開始しようとするときは、その計画を当該仕事の開始の日の30日前までに、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣に届け出なければならない。
3~7 (略)
【労働安全衛生規則】
(仕事の範囲)
第89条 法第88条第2項の厚生労働省令で定める仕事は、次のとおりとする。
一 (略)
二 堤高(基礎地盤から堤頂までの高さをいう。)が150メートル以上のダムの建設の仕事
三~六 (略)
(4)誤り。労働者死傷病報告は、あくまでも「死亡し、又は休業したとき」に報告するものである。不休災害については義務付けられていない。
そもそも、ちょっと指先を怪我したとか、ちょっところんで擦りむいたとか、そんな報告を提出されても行政も困るだろう。そんなことを義務付けるはずがないと分からなければならない。
【労働安全衛生法】
(報告等)
第100条 厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者、労働者、機械等貸与者、建築物貸与者又はコンサルタントに対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。
2及び3 (略)
【労働安全衛生規則】
(労働者死傷病報告)
第97条 事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、様式第二十三号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
2 前項の場合において、休業の日数が4日に満たないときは、事業者は、同項の規定にかかわらず、1月から3月まで、4月から6月まで、7月から9月まで及び10月から12月までの期間における当該事実について、様式第二十四号による報告書をそれぞれの期間における最後の月の翌月末日までに、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
(5)正しい。「事業場で建設物の倒壊の事故が発生した場合」は安衛則第96条の事故報告の対象となる。負傷者が生じているかどうかにかかわりなく、遅滞なく、事故報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
なお、安衛則第 96 条は、すべて覚える必要はないが試験の前にざっと目を通しておくこと。とくに第一号はすべて覚えておく。
【労働安全衛生法】
(報告等)
第100条 厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者、労働者、機械等貸与者、建築物貸与者又はコンサルタントに対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。
2及び3 (略)
【労働安全衛生規則】
(事故報告)
第96条 事業者は、次の場合は、遅滞なく、様式第二十二号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
一 事業場又はその附属建設物内で、次の事故が発生したとき
イ~ハ (略)
ニ 建設物、附属建設物又は機械集材装置、煙突、高架そう等の倒壊の事故
二~十 (略)
2 (略)