労働安全コンサルタント試験 2019年 産業安全関係法令 問11

元方事業者の講ずべき措置




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合格

 このページは、2019年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2019年度(令和元年度) 問11 難易度 下請け構造の安全衛生管理体制等については、確実に学習しておく必要がある。正答したい問題である。
元方事業者の義務

問11 元方事業者の講ずべき措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令に定められていないものはどれか。

(1)鉄鋼業に属する事業の元方事業者は、関係請負人及び関係請負人の労働者が、当該仕事に関し、労働安全衛生法又はこれに基づく命令の規定に違反しないよう必要な指導を行わなければならない。

(2)金属製品製造業に属する事業の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われる場合において、当該作業がつり上げ荷重 0.5 トン以上のクレーンを用いて行うものであるときは、当該クレーンの運転についての合図を統一的に定め、これを関係請負人に周知させなければならない。

(3)造船業に属する事業の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、元方事業者及びすべての関係請負人が参加する協議組織を設置し、当該協議組織の会議を定期的に開催しなければならない。

(4)石油製品製造業に属する事業の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、毎作業日に少なくとも1回、作業場所を巡視しなければならない。

(5)建設業に属する事業の元方事業者は、土砂等が崩壊するおそれのある場所において関係請負人の労働者が当該事業の仕事の作業を行うときは、当該関係請負人が講ずべき当該場所に係る危険を防止するための措置が適正に講ぜられるように、技術上の指導その他の必要な措置を講じなければならない。

正答(4)

【解説】

(1)定められている。安衛法第 29 条そのままである。なお、同条はすべての元方事業者に適用されるのであり、当然に鉄鋼業の元方事業者にも適用がある。

なお、実務においては、元方事業者が関係請負人の労働者に対して、直接、作業の指揮を行ってよいわけではないことは覚えておこう。あくまでも行うべきことは「この法律又はこれに基づく命令の規定に違反しないよう必要な指導」である。

【労働安全衛生法】

(元方事業者の講ずべき措置等)

第29条 元方事業者は、関係請負人及び関係請負人の労働者が、当該仕事に関し、この法律又はこれに基づく命令の規定に違反しないよう必要な指導を行なわなければならない。

2及び3 (略)

(2)定められている。安衛則第 639 条において、本肢の措置について特定元方事業者に義務付けている。そして、本項の措置は同規則第 643 条の3で、「製造業その他政令で定める業種に属する事業の(特定元方事業者を除く)元方事業者」に準用されているのである。従って、金属製品製造業に属する事業の元方事業者にも適用がある。

これは、実務においても誤解しやすい条文なので留意が必要である。立法技術的には、第 643 条の3を新設するくらいなら、第 639 条の「特定元方事業者」を「特定元方事業者及び元方事業者」に書き変えた方が分かりやすいのではないかという気がしないでもない。

【労働安全衛生法】

第30条の2 製造業その他政令で定める業種に属する事業(特定事業を除く。)の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによつて生ずる労働災害を防止するため、作業間の連絡及び調整を行うことに関する措置その他必要な措置を講じなければならない。

2~4 (略)

【労働安全衛生規則】

(クレーン等の運転についての合図の統一)

第639条 特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われる場合において、当該作業がクレーン等(クレーン、移動式クレーン、デリック、簡易リフト又は建設用リフトで、クレーン則の適用を受けるものをいう。以下同じ。)を用いて行うものであるときは、当該クレーン等の運転についての合図を統一的に定め、これを関係請負人に周知させなければならない。

 (略)

(作業間の連絡及び調整)

第643条の2 第636条の規定は、法第30条の2第1項の元方事業者(次条から第643条の6までにおいて「元方事業者」という。)(以下略)

(クレーン等の運転についての合図の統一)

第643条の3 第639条第1項の規定は、元方事業者について準用する。

 (略)

(3)定められている。造船業に属する元方事業者は、安衛令第7条第1項の規定により、特定元方事業者となる。そして、特定委元方事業者は、安衛法第30条の規定により「協議組織の設置及び運営」を行わなければならない。

そして、協議組織の在り方については、安衛則第 635 条に、本肢と同旨のことが定められている。

【労働安全衛生法】

(統括安全衛生責任者)

第15条 (略)一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているもの(当該事業の仕事の一部を請け負わせる契約が二以上あるため、その者が二以上あることとなるときは、当該請負契約のうちの最も先次の請負契約における注文者とする。以下「元方事業者」という。)のうち、建設業その他政令で定める業種に属する事業(以下「特定事業」という。)を行う者(以下「特定元方事業者」という。)(以下略)

2~5 (略)

(特定元方事業者等の講ずべき措置)

第30条 特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによつて生ずる労働災害を防止するため、次の事項に関する必要な措置を講じなければならない。

 協議組織の設置及び運営を行うこと。

二~六 (略)

2~4 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(統括安全衛生責任者を選任すべき業種等)

第7条 法第15条第1項の政令で定める業種は、造船業とする

 (略)

【労働安全衛生規則】

(協議組織の設置及び運営)

第635条 特定元方事業者(法第15条第1項の特定元方事業者をいう。以下同じ。)は、法第30条第1項第一号の協議組織の設置及び運営については、次に定めるところによらなければならない。

 特定元方事業者及びすべての関係請負人が参加する協議組織を設置すること。

 当該協議組織の会議を定期的に開催すること。

 (略)

(4)定められていない。安衛法第 30 条第1項(第3号)の規定は、元方事業者に準用されていない。

従って、職場巡視は、特定元方事業者である建設業と造船業にしか義務付けられていないこととなる。

【労働安全衛生法】

(特定元方事業者等の講ずべき措置)

第30条 特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによつて生ずる労働災害を防止するため、次の事項に関する必要な措置を講じなければならない。

一及び二 (略)

 作業場所を巡視すること。

四~六 (略)

2~4 (略)

【労働安全衛生規則】

(作業場所の巡視)

第637条 特定元方事業者は、法第30条第1項第三号の規定による巡視については、毎作業日に少なくとも1回、これを行なわなければならない。

 (略)

(5)定められている。安衛法第 29 条の2に定められている。

【労働安全衛生法】

第29条の2 建設業に属する事業の元方事業者は、土砂等が崩壊するおそれのある場所、機械等が転倒するおそれのある場所その他の厚生労働省令で定める場所において関係請負人の労働者が当該事業の仕事の作業を行うときは、当該関係請負人が講ずべき当該場所に係る危険を防止するための措置が適正に講ぜられるように、技術上の指導その他の必要な措置を講じなければならない。

【労働安全衛生規則】

(法第二十九条の二の厚生労働省令で定める場所)

第634条の2 法第29条の2の厚生労働省令で定める場所は、次のとおりとする。

 土砂等が崩壊するおそれのある場所(関係請負人の労働者に危険が及ぶおそれのある場所に限る。)

一の二~四 (略)

2019年12月15日執筆 2024年11月13日最終改訂