問10 特定機械等であるクレーン、ゴンドラ等に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。
(1)事業者は、移動式クレーンについては、1か月以内ごとに1回、定期に、ワイヤロープ及びつりチェーンの損傷の有無等について自主検査を行わなければならない。ただし、1か月をこえる期間使用しない移動式クレーンの当該使用しない期間においては、この限りでない。
(2)事業者は、瞬間風速が毎秒 30 メートルをこえる風が吹くおそれのあるときは、屋外に設置されている走行クレーンについて、逸走防止装置を作用させる等その逸走を防止するための措置を講じなければならない。
(3)事業者は、クレーン、移動式クレーン又はデリックの玉掛用具であるワイヤロープの安全係数については、6以上でなければ使用してはならない。
(4)事業者は、移動式クレーンに係る作業を行うときは、当該移動式クレーンの上部旋回体と接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのある箇所に労働者を立ち入らせてはならない。
(5)常設型のゴンドラを設置した者は、当該ゴンドラについて、所轄労働基準監督署長の落成検査を受けなければならない。ただし、所轄労働基準監督署長が当該検査の必要がないと認めたゴンドラについては、この限りでない。
このページは、2019年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2019年度(令和元年度) | 問10 | 難易度 | 検査については、基本的な制度を押さえておくことで確実に得点できる。正答したい問題である。 |
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クレーン、ゴンドラ等 | 3 |
問10 特定機械等であるクレーン、ゴンドラ等に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。
(1)事業者は、移動式クレーンについては、1か月以内ごとに1回、定期に、ワイヤロープ及びつりチェーンの損傷の有無等について自主検査を行わなければならない。ただし、1か月をこえる期間使用しない移動式クレーンの当該使用しない期間においては、この限りでない。
(2)事業者は、瞬間風速が毎秒 30 メートルをこえる風が吹くおそれのあるときは、屋外に設置されている走行クレーンについて、逸走防止装置を作用させる等その逸走を防止するための措置を講じなければならない。
(3)事業者は、クレーン、移動式クレーン又はデリックの玉掛用具であるワイヤロープの安全係数については、6以上でなければ使用してはならない。
(4)事業者は、移動式クレーンに係る作業を行うときは、当該移動式クレーンの上部旋回体と接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのある箇所に労働者を立ち入らせてはならない。
(5)常設型のゴンドラを設置した者は、当該ゴンドラについて、所轄労働基準監督署長の落成検査を受けなければならない。ただし、所轄労働基準監督署長が当該検査の必要がないと認めたゴンドラについては、この限りでない。
正答(5)
【解説】
(1)正しい。クレーン則第 77 条第1項の通りである。なお、クレーンの検査には、1年以内ごとの定期自主検査、1月以内ごとの定期自主検査があり、点検には作業開始前の点検と暴風雨後の点検がある。ここを理解しておこう。
ところで、吊り上げ荷重が3トン未満の移動式クレーンはどうなるのかという疑問がわくかもしれない。安衛令では定期自主検査の対象となる移動式クレーンを吊り上げ荷重3トン以上に限っているにもかかわらず、クレーン則第 77 条ではとくに吊り上げ荷重について制限せずに自主検査を義務付けている。従って、吊り上げ荷重が0.5トン以上(クレーン則第2条(第1号)参照)の移動式クレーンに、定期自主検査を義務付けているように見えるからである。
これは、もちろん吊り上げ荷重3トン未満の移動式クレーンには自主検査の義務はかかっていないのである。安衛法第 45 条は政令で定めるものについて定期に自主検査を行えと言っている。クレーン則は省令であるから対象を定めてはいないのである。
【労働安全衛生法】
(定期自主検査)
第45条 事業者は、ボイラーその他の機械等で、政令で定めるものについて、厚生労働省令で定めるところにより、定期に自主検査を行ない、及びその結果を記録しておかなければならない。
2~4 (略)
【労働安全衛生法施行令】
(特定機械等)
第12条 (柱書 略)
一~三 (略)
四 つり上げ荷重が三トン以上の移動式クレーン
五~八 (略)
2 (略)
(定期に自主検査を行うべき機械等)
第15条 法第45条第1項の政令で定める機械等は、次のとおりとする。
一 第12条第1項各号に掲げる機械等、第13条第3項第五号、第六号、第八号、第九号、第十四号から第十九号まで及び第三十号から第三十四号までに掲げる機械等、第14条第二号から第四号までに掲げる機械等並びに前条第十号及び第十一号に掲げる機械等
二~十一 (略)
2 (略)
【クレーン等安全規則】
第77条 事業者は、移動式クレーンについては、1月以内ごとに1回、定期に、次の事項について自主検査を行なわなければならない。ただし、1月をこえる期間使用しない移動式クレーンの当該使用しない期間においては、この限りでない。
一 (略)
二 ワイヤロープ及びつりチエーンの損傷の有無
三及び四 (略)
2 (略)
(2)正しい。クレーン則第 31 条の通りである。条文問題のうち、数値問題である。暴風雨が風速毎秒30メートルだということは覚えておこう。
また、クレーン則には強風時(※)の作業中止等についても規定されている。これについても併せて覚えておこう。
※ 法令の範囲からは外れるが、「「強風」とは、10 分間の平均風速が毎秒 10 m以上の風を、「大雨」とは1回の降雨量が 50 mm以上の降雨を、「大雪」とは1回の降雪量が 25 cm以上の降雪をいうこと
」(昭和 46 年4月 15 日基発第 309 号)とされている。
【クレーン等安全規則】
(暴風時における逸走の防止)
第31条 事業者は、瞬間風速が毎秒30メートルをこえる風が吹くおそれのあるときは、屋外に設置されている走行クレーンについて、逸走防止装置を作用させる等その逸走を防止するための措置を講じなければならない。
(強風時の作業中止)
第31条の2 事業者は、強風のため、クレーンに係る作業の実施について危険が予想されるときは、当該作業を中止しなければならない。
(強風時における損壊の防止)
第31条の3 事業者は、前条の規定により作業を中止した場合であつてジブクレーンのジブが損壊するおそれのあるときは、当該ジブの位置を固定させる等によりジブの損壊による労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。
(3)正しい。クレーン則第 213 条第1項の通りである。なお、第2項も覚えておくこと。
なお、合格後に建設現場の監査指導を行うときは、ワイヤロープが玉掛け専用のものであることも確認する必要がある(クレーン則第 219 条参照)。現場によっては台付け用のワイヤロープを使用しているケースがあるからである。
【クレーン等安全規則】
(玉掛け用ワイヤロープの安全係数)
第213条 事業者は、クレーン、移動式クレーン又はデリックの玉掛用具であるワイヤロープの安全係数については、6以上でなければ使用してはならない。
2 前項の安全係数は、ワイヤロープの切断荷重の値を、当該ワイヤロープにかかる荷重の最大の値で除した値とする。
(4)正しい。クレーン則第74条の通りである。
【クレーン等安全規則】
(立入禁止)
第74条 事業者は、移動式クレーンに係る作業を行うときは、当該移動式クレーンの上部旋回体と接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのある箇所に労働者を立ち入らせてはならない。
(5)誤り。落成検査とは設置工事落成時に所轄労働基準監督署長が行なう検査である。
落成検査の対象は、(固定式の)クレーン、デリック、エレベータ、建設用リフトなどである。移動式クレーンやゴンドラのような設置工事が考えられないものには、落成検査はあり得ない。ゴンドラは設置届の対象ではあるが、落成検査の対象ではない。
厚労省の「特定機械等の製造許可及び製造時等検査制度の在り方に関する検討会」の第1回資料「特定機械等の製造許可、検査等に係る制度の概要、現状及び論点」に分かりやすい説明がある。