労働安全コンサルタント試験 2019年 産業安全一般 問10

人の注意の働き(エルゴノミクス)




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合格

 このページは、2019年の労働安全コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と正答を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2019年度(令和元年度) 問10 難易度 一応、エルゴノミクスに関する知識問題だが、実際には一般的な知識があれば、正答できるだろう。
人の注意の働き

問10 人の注意の働きに関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)注意とは、同時に存在するいくつかの意識可能な対象のうち、一つ又はその一部に焦点を合わせ、それを明瞭に捉えようとする働きである。

(2)普通の条件で、単一の変化しない刺激を明瞭に意識している時間は1秒ないし数秒であって、長い間は続かない。

(3)注意には一点集中性があり、一つの事項に集中すると他の事項に注意がいかなくなる。

(4)動作に習熟し、それが習慣的になればなるほど、その動作に必要な注意力は少なくなる。

(5)注意は強い興味を持たせることによって方向付けられるため、興味が高ければ不注意が発生することはない。

正答(5)

【解説】

コンサルタント試験には、あまりにも細かな知識を要し、誰にも答えられないような問題や、逆にきわめて簡単な常識問題が出されることがある。この問題もきわめて簡単な問題であるが、首をひねりたくなるような内容が含まれている。

受験者の能力を正しく図るという観点からは望ましくないだろう。このような出題がされることは、受験者にとってもあまり好ましいことではないだろう。

(1)適切でないとは言えない。「注意」という用語に定まった定義があるわけではない。また、厳密に言えば本肢の記述は「能動的注意」であって広い意味の「注意」ではない。「受動的注意」が抜け落ちているのだ。

しかし、一般的には正しいと言っても誤りとまでは言えないだろう。

(2)必ずしも適切でないとは言えない。「普通の条件」というのはやや曖昧な表現ではあるが、状況によっては、単一の変化しない刺激を明瞭に意識している時間が1秒ないし数秒で途切れて、長い間は続かないということもあるだろう。

もちろん、現実には、単一の変化しない刺激を明瞭に意識している時間が数秒より長く続かないことはあまり多くはないだろう。そうでなければ、大洋上の船舶の見張りなど役に立たないことになる。また、彫刻や絵画も変化しない刺激であるが、単一の芸術作品に数分間意識し続けることは普通のことだろう。

かなり疑問はあるが、(5)が明らかに間違っているのでこちらは正しいとしておく。

(3)適切でないとは言えない。注意には一点集中性があり、一つの事項に集中すると他の事項に注意がいかなくなることは、日常、経験していることである。

下の動画(Test Your Awareness : Whodunnit?)の前半の短い動画の寸劇を、できるだけ全画面表示にして注意深く見て頂きたい。殺人事件が発生し、凶器きょうきになりそうなものを持った3人の容疑者を、刑事が追及する。犯人は誰なのだろうか。

なお、刑事が犯人を言い当てた後でもうひとつ質問をして、動画は撮影の現場の全景に切り替わる。

さて、あなたは最初に寸劇を見ていたとき、部屋の中の小物類はおろか、刑事のコートと帽子、果てはあなたが注視していた容疑者の抱えた凶器きょうきまでが変化していることに気付いただろうか。なお、2012年問10の(3)の動画も併せて見て頂きたい。

(4)適切でないとは言えない。単純な作業が繰り返し行われる場合、動作に習熟して習慣的になると、その動作に注意力をかけなくても動作ができてしまうようになる。

(5)適切ではない。そもそも、注意は強い興味を持たせることによって方向付けられるとは限らない。関心のないことに注意を向けざるを得ないこともあろう。

また、いくら興味が高くても不注意が発生することがあることは当然だろう。本肢の記述は、あり得ないことである。

2020年01月02日執筆 2022年12月11日動画の差替え