労働安全コンサルタント試験 2019年 産業安全一般 問03

溶接(融接)の不完全部(欠陥)




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合格

 このページは、2019年の労働安全コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と正答を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2019年度(令和元年度) 問03 難易度 溶接の専門家でもなければ、かなりの難問だっただろう。
溶接部の不完全部 (欠陥)

問03 溶接(融接)の不完全部に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)溶込不良とは、入熱不足により、溶接金属と開先面あるいはビードとビードの間が十分に融合していないことをいう。

(2)溶接金属中に生じる球状の空洞をブローホール、内部の気泡が溶接部の表面に達して開口した気孔をピットという。

(3)アンダカットとは、溶接によって生じた止端の溝であり、応力集中により疲労強度を低下させる。

(4)高温割れとは、溶接部の凝固温度範囲又はその直下の高温で発生する割れをいい、溶接金属や母材の熱影響部に発生する。

(5)低温割れとは、溶接後、溶接部の温度が常温付近に低下してから発生する割れをいい、ルート割れ、ビード下割れ、止端割れがある。

正答(1)

【解説】

溶接部の欠陥については、溶接学会編「新版 溶接・接合技術入門」(産報出版2015年)に分かりやすい説明図がある。

(1)適切ではない。溶け込み不良とは、「設計溶込みに比べ実溶込みが不足していること」である(図)。本肢は、融合不良(溶接境界面が互いに十分に溶け合っていないこと)の説明である。

溶け込み不良と融合不良

※ 全国登録教習機関協会「アーク溶接等作業教本」(2019年)

融合不良と溶込み不良の違いについては、(一社)日本溶接協会のサイトの「溶込み不良と融合不良はどのように違うのですか」に分かりやすい説明がある。

溶込不良や融合不良が起きる場合は、ワイヤのねらい位置に溶接金属が十分に溶けていないので、熱量を増加させることで解決する場合がある。そこで、溶接電流を大きくしたり、アーク長を短くしたりしてみる。それでも解決しないようなら、開先形状の変更を行う。

(2)正しい。溶融金属中で発生したガスによる空洞が、大気中に放出されず表面に開口された状態で固まったものがピットである。ビード内部で固まった場合はブローホールと呼ばれる。これは溶融池内部にガスが存在することによって起きる。ガスの原因としては、空気やシールドガスの巻き込みの他、母材開先面の油分や錆、メッキなどの表面付着材、材料中の水分などがある。

(3)正しい。アンダカットは「母材または既溶接の上に溶接して生じた止端の溝」のことであり、応力集中により疲労強度を低下させる。溶接電流が大きすぎるときや、溶接速度が速すぎるときに生じる。またウィービングが大きすぎても発生することがある。

(4)正しい。高温割れは、溶接部が冷却されるときに発生する割れで、凝固温度又はそれに近い高温域で発生する。溶接金属及び熱影響部が高温であるときに発生する。

(5)正しい。低温割れは、溶接部が300度以下になったときに発生するものである。常温付近に低下してから発生する割れに限られないので、やや疑問はあるが、(1)の方が明らかな誤りなのでこちらは正しいとしておく。ビード下割れ、ルート割れ、止端割れ(トウ割れ)などがあることは正しい。

  1. 全国登録教習機関協会「アーク溶接等作業教本」(2019年)を参考にして記述した。
2020年01月01日執筆 2020年06月09日修正