労働安全コンサルタント試験 2018年 産業安全関係法令 問15

安衛法上違反となるもの




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 このページは、2018年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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本問が最後の問題です
2018年度(平成30年度) 問15 難易度 安衛法全般のやや詳細な知識を問う問題。合否を分けた問題の一つかもしれない。正答したい問題。
安衛法全般

問15 常時250人の労働者を使用し、産業用ロボット10台及び動力プレス6台を有する輸送用機械器具製造業の事業場から労働安全コンサルタントに安全診断の依頼があり、安全診断を行った結果、当該事業場において事業者が講じている措置は次のとおりであった。これらの措置のうち、労働安全衛生法令上、違反となるものはどれか。

(1)総括安全衛生管理者は選任していなかったが、産業安全の実務経験が10年であり、総括安全衛生管理者が統括管理すべき業務のうち安全に係る技術的事項を管理するのに必要な知識についての研修であって厚生労働大臣が定めるものを修了した製造課長を安全管理者として選任していた。

(2)安全委員会を設置し、毎月1回開催していた。その議事の概要については各作業場の見やすい場所に掲示せず、備え付けることもしていなかったが、電子ファイルとしてハードディスクに記録し、かつ、各作業場に労働者がその内容を常時確認できるパソコンを設置していた。

(3)産業用ロボットの可動範囲内においてロボットについて教示等の作業を行うときは、ロボットの駆動源を遮断し、作業を行っている間、ロボットの起動スイッチに作業中である旨を表示して作業を行っていたが、産業用ロボットの操作の方法及び手順についての規程は定めていなかった。

(4)動力プレスについて、毎年1回、定期に、都道府県労働局長の登録を受けた検査業者による特定自主検査を実施していた。動力プレスの金型等の取付け、取外し又は調整の業務に従事する労働者に特別教育を行っていたが、プレス機械作業主任者は選任していなかった。

(5)機械と機械の間に設ける通路は、社内規程に基づき原則として幅1メートル以上とされていたが、機械の可動部分に堅固な覆いが設けられている箇所については、幅80センチメートルのところもあった。

正答(4)

【解説】

(1)違反とはならない。本問の事業場は、安衛令第2条第二号の業種であり、常時雇用する労働者が300人未満であるので、総括安全衛生管理者を選任していないことは違反とはならない。

一方、当該事業場は常時50人以上の労働者を雇用しているので安全管理者を選任しなければならないが現に選任している。以下、各条文について検討する。

① 安衛則第4条第1項第2号 製造課長は、その事業場に専属であろうから違反ではない。

② 安衛則第4条第1項第3号 該当がない。

③ 安衛則第4条第1項第4号 この課長は専任ではないが、同号のいずれも該当しないので違反はない。

④ 第5条 この課長は、産業安全の実務経験が10年であり、総括安全衛生管理者が統括管理すべき業務のうち安全に係る技術的事項を管理するのに必要な知識についての研修であって厚生労働大臣が定めるものを修了しているので、安衛則第5条第3号の「厚生労働大臣が定める者」に該当する(労働安全衛生規則第五条第三号の厚生労働大臣が定める者(昭和47年10月2日労働省告示第138号)第六号参照)。

従って、本肢は違反とはならない。ただ、かなり細かいことを聞いているように思える。

【労働安全衛生法】

(総括安全衛生管理者)

第10条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。

一~五 (略)

 (以下略)

(安全管理者)

第11条 事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、安全管理者を選任し、その者に前条第一項各号の業務(第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第1項各号の措置に該当するものを除く。)のうち安全に係る技術的事項を管理させなければならない。

 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(総括安全衛生管理者を選任すべき事業場)

第2条 労働安全衛生法(以下「法」という。)第十条第一項の政令で定める規模の事業場は、次の各号に掲げる業種の区分に応じ、常時当該各号に掲げる数以上の労働者を使用する事業場とする。

 林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業 百人

 製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゆう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゆう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 三百人

 その他の業種 千人

(安全管理者を選任すべき事業場)

第3条 法第11条第1項の政令で定める業種及び規模の事業場は、前条第一号又は第二号に掲げる業種の事業場で、常時50人以上の労働者を使用するものとする。

【労働安全衛生規則】

(安全管理者の選任)

第4条 法第11条第一項の規定による安全管理者の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。

 (略)

 その事業場に専属の者を選任すること。ただし、二人以上の安全管理者を選任する場合において、当該安全管理者の中に次条第二号に掲げる者がいるときは、当該者のうち一人については、この限りでない。

 化学設備(略)のうち、発熱反応が行われる反応器等異常化学反応又はこれに類する異常な事態により爆発、火災等を生ずるおそれのあるもの(配管を除く。以下「特殊化学設備」という。)を設置する事業場であって、当該事業場の所在地を管轄する都道府県労働局長(略)が指定するもの(以下「指定事業場」という。)にあっては、当該都道府県労働局長が指定する生産施設の単位について、操業中、常時、法第十条第一項各号の業務のうち安全に係る技術的事項を管理するのに必要な数の安全管理者を選任すること。

 次の表の中欄に掲げる業種に応じて、常時同表の下欄に掲げる数以上の労働者を使用する事業場にあっては、その事業場全体について法第十条第一項各号の業務のうち安全に係る技術的事項を管理する安全管理者のうち少なくとも一人を専任の安全管理者とすること。ただし、同表四の項の業種にあっては、過去三年間の労働災害による休業一日以上の死傷者数の合計が百人を超える事業場に限る。

建設業

有機化学工業製品製造業

石油製品製造業

三百人

無機化学工業製品製造業

化学肥料製造業

道路貨物運送業

港湾運送業

五百人

紙・パルプ製造業

鉄鋼業

造船業

千人
令第二条第一号及び第二号に掲げる業種(一の項から三の項までに掲げる業種を除く。) 二千人

 (略)

(安全管理者の資格)

第5条 法第11条第1項の厚生労働省令で定める資格を有する者は、次のとおりとする。

 次のいずれかに該当する者で、法第十条第一項各号の業務のうち安全に係る技術的事項を管理するのに必要な知識についての研修であって厚生労働大臣が定めるものを修了したもの

 学校教育法(略)による大学(略)又は高等専門学校(略)における理科系統の正規の課程を修めた者(略)で、その後2年以上産業安全の実務に従事した経験を有するもの

 学校教育法による高等学校(略)又は中等教育学校において理科系統の正規の学科を修めて卒業した者で、その後4年以上産業安全の実務に従事した経験を有するもの

 労働安全コンサルタント

 前二号に掲げる者のほか、厚生労働大臣が定める者

【労働安全衛生規則第五条第三号の厚生労働大臣が定める者】

  法第11条第1項の厚生労働省令で定める資格を有する者は、次のとおりとする。

一~五 (略)

 7年以上産業安全の実務に従事した経験を有するもの

(2)違反とはならない。本問の事業場は、安衛令第8条第一号に該当し、50人以上の労働者を常時雇用しているため、安全委員会を設置しなければならないが、設置しているのだからこのことは違反になりようがない。また、毎月1回開催していたことも安衛則第23条第1項に適合しており、違反とはならない。

そして、その議事の概要については各作業場の見やすい場所に掲示せず、備え付けることもしていなかったが、電子ファイルとしてハードディスクに記録し、かつ、各作業場に労働者がその内容を常時確認できるパソコンを設置していたことは、安衛則第23条第1項第三号に適合しており、違反とはならない。

【労働安全衛生法】

(安全委員会)

第17条 事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、安全委員会を設けなければならない。

一~三 (略)

 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(安全委員会を設けるべき事業場)

第8条 法第88条第2項の厚生労働省令で定める仕事は、次のとおりとする。

 林業、鉱業、建設業、製造業のうち木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、金属製品製造業及び輸送用機械器具製造業、運送業のうち道路貨物運送業及び港湾運送業、自動車整備業、機械修理業並びに清掃業 五十人

 第2条第一号及び第二号に掲げる業種(前号に掲げる業種を除く。) 百人

【労働安全衛生規則】

(委員会の会議)

第23条 事業者は、安全委員会、衛生委員会又は安全衛生委員会(以下「委員会」という。)を毎月1回以上開催するようにしなければならない。

 (略)

 事業者は、委員会の開催の都度、遅滞なく、委員会における議事の概要を次に掲げるいずれかの方法によって労働者に周知させなければならない。

 常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けること。

 書面を労働者に交付すること。

 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。

 (略)

(3)違反とはならない。産業用ロボットの可動範囲内においてロボットにおける教示等の作業については、安衛則第150条の3に定められている。本肢の場合、ロボットの駆動源を遮断していたのであるから、本条柱書の但書に該当し、産業用ロボットの操作の方法及び手順についての規程は定めていなかったことは違反とはならない。

また、ロボットの起動スイッチに作業中である旨を表示して作業を行っていたことも、同条第3号に適合しており、違反とはならない。

従って、本肢は違反とはならない。

【労働安全衛生規則】

(教示等)

第150条の3 事業者は、産業用ロボットの可動範囲内において当該産業用ロボットについて教示等の作業を行うときは、当該産業用ロボットの不意の作動による危険又は当該産業用ロボットの誤操作による危険を防止するため、次の措置を講じなければならない。ただし、第一号及び第二号の措置については、産業用ロボットの駆動源を遮断して作業を行うときは、この限りでない。

 次の事項について規程を定め、これにより作業を行わせること。

 産業用ロボットの操作の方法及び手順

 作業中のマニプレータの速度

 複数の労働者に作業を行わせる場合における合図の方法

 異常時における措置

 異常時に産業用ロボットの運転を停止した後、これを再起動させるときの措置

 その他産業用ロボットの不意の作動による危険又は産業用ロボットの誤操作による危険を防止するために必要な措置

 作業に従事している労働者又は当該労働者を監視する者が異常時に直ちに産業用ロボットの運転を停止することができるようにするための措置を講ずること。

 作業を行っている間産業用ロボットの起動スイッチ等に作業中である旨を表示する等作業に従事している労働者以外の者が当該起動スイッチ等を操作することを防止するための措置を講ずること。

(4)違反となる。安衛法第14条及び安衛令第第6条第7号の規定により、動力により駆動されるプレス機械を5台以上有する事業場において行うその動力プレスによる作業は、作業主任者を選任しなければならない。

【労働安全衛生法】

(作業主任者)

第14条 事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。

【労働安全衛生法施行令】

(作業主任者を選任すべき作業)

第6条 法第14条の政令で定める作業は、次のとおりとする。

一~六 (略)

 動力により駆動されるプレス機械を5台以上有する事業場において行う当該機械による作業

 (以下略)

(5)違反とはならない。機械と機械の間に設ける通路は、安衛則第543条の規定により幅80cm以上としなければならないこととされている。

なお、本問の場合、社内規程には違反しているが、社内規定に従って安全通路の幅を確保しなければならないという規定は、安衛則には存在していない。従って、社内規定に違反していることそれ自体は、安衛法違反とはならない。

【労働安全衛生規則】

(機械間等の通路)

第543条 事業者は、機械間又はこれと他の設備との間に設ける通路については、幅80センチメートル以上のものとしなければならない。

2018年10月28日執筆 2020年02月08日修正

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