労働安全コンサルタント試験 2018年 産業安全関係法令 問05

車両系建設機械による労働災害の防止




問題文
トップ
合格

 このページは、2018年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」か「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2018年度(平成30年度) 問05 難易度 かなり高度な知識問題である。建設、土木の受験者でないと難問と言えるだろう。
車両系建設機械

問5 車両系建設機械による労働災害を防止するため事業者が講ずべき措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、定められていないものはどれか。

(1)車両系建設機械を用いて作業を行うときは、その日の作業を開始する前に、ワイヤロープ、チェーン、バケット及びジッパーの損傷の有無について点検を行わなければならない。

(2)路肩、傾斜地等であって、車両系建設機械の転倒又は転落により運転者に危険が生ずるおそれのある場所においては、転倒時保護構造を有し、かつ、シートベルトを備えたもの以外の車両系建設機械を使用しないように努めるとともに、運転者にシートベルトを使用させるように努めなければならない。

(3)車両系建設機械を用いて作業を行うときは、誘導者を配置し、その者に当該車両系建設機械を誘導させるときを除き、運転中の車両系建設機械に接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのある個所に、労働者を立ち入らせてはならない。

(4)車両系建設機械の修理又はアタッチメントの装着若しくは取り外しの作業を行うときは、当該作業を指揮する者を定め、その者に、作業手順を決定させ、作業を指揮させなければならない。

(5)岩石の落下等により労働者に危険が生ずるおそれのある場所でブル・ドーザー、トラクター・ショベル、ずり積機、パワー・ショベル、ドラグ・ショベル及び解体用機械を使用するときは、当該車両系建設機械に堅固なヘッドガードを備えなければならない。

正答(1)

【解説】

(1)定められていない。安衛則第 170 条に、車両系建設機械の作業を開始する前の点検について定めてあるが、「ワイヤロープ、チェーン、バケット及びジッパーの損傷の有無」ではなく「ブレーキ及びクラッチの機能」について点検を行うこととされている。

なお、ワイヤロープ、チェーン、バケット及びジッパーの損傷の有無は、同規則第 168 条による1月以内ごとの定期自主検査の点検項目として定められている。

【労働安全衛生規則】

(定期自主検査)

第167条 事業者は、車両系建設機械については、1年以内ごとに1回、定期に、次の事項について自主検査を行わなければならない。ただし、1年を超える期間使用しない車両系建設機械の当該使用しない期間においては、この限りでない。

一~五 (略)

 ブレード、ブーム、リンク機構、バケツト、ワイヤロープその他作業装置の異常の有無

七~九 (略)

 事業者は、前項ただし書の車両系建設機械については、その使用を再び開始する際に、同項各号に掲げる事項について自主検査を行わなければならない。

第168条 事業者は、車両系建設機械については、1月以内ごとに1回、定期に、次の事項について自主検査を行わなければならない。ただし、1月を超える期間使用しない車両系建設機械の当該使用しない期間においては、この限りでない。

 (略)

 ワイヤロープ及びチエーンの損傷の有無

 バケツト、ジツパー等の損傷の有無

 (略)

 事業者は、前項ただし書の車両系建設機械については、その使用を再び開始する際に、同項各号に掲げる事項について自主検査を行わなければならない。

(作業開始前点検)

第170条 事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、その日の作業を開始する前に、ブレーキ及びクラッチの機能について点検を行なわなければならない。

(2)安衛則 157 条の2に規定がある。なお、現在は、よほど古いものでもない限りシートベルトの備わっていない車両系建設機械など存在していない。試験合格後の実務においては、シートベルトは必ず使用させなければならない。

【労働安全衛生規則】

第157条の2 事業者は、路肩、傾斜地等であって、車両系建設機械の転倒又は転落により運転者に危険が生ずるおそれのある場所においては、転倒時保護構造を有し、かつ、シートベルトを備えたもの以外の車両系建設機械を使用しないように努めるとともに、運転者にシートベルトを使用させるように努めなければならない。

(3)安衛則 158 条に規定がある。なお、本肢は誘導者の配置について言っているのではなく、“運転中の車両系建設機械に接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのある個所に、労働者を立ち入らせてはならない” と言っている。誘導者は例外規定に過ぎない。

【労働安全衛生規則】

(接触の防止)

第158条 事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、運転中の車両系建設機械に接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのある箇所に、労働者を立ち入らせてはならない。ただし、誘導者を配置し、その者に当該車両系建設機械を誘導させるときは、この限りでない。

 (略)

※ 安衛則第 158 条第1項は、2025 年4月1日より以下のように改正される。

(接触の防止)

第158条 事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行うときは、運転中の車両系建設機械に接触することにより危険が生ずるおそれのある箇所に当該作業場において作業に従事する者が立ち入ることについて、禁止する旨を見やすい箇所に表示することその他の方法により禁止しなければならない。ただし、誘導者を配置し、その者に当該車両系建設機械を誘導させるときは、この限りでない。

 (略)

(4)安衛則 165 条に規定がある。

【労働安全衛生規則】

(修理等)

第165条 事業者は、車両系建設機械の修理又はアタッチメントの装着若しくは取り外しの作業を行うときは、当該作業を指揮する者を定め、その者に次の措置を講じさせなければならない。

一及び二 (略)

(5)安衛則 153 条に規定がある。

【労働安全衛生規則】

(ヘッドガード)

第153条 事業者は、岩石の落下等により労働者に危険が生ずるおそれのある場所で車両系建設機械(ブル・ドーザー、トラクター・ショベル、ずり積機、パワー・ショベル、ドラグ・ショベル及び解体用機械に限る。)を使用するときは、当該車両系建設機械に堅固なヘッドガードを備えなければならない。