労働安全コンサルタント試験 2018年 産業安全一般 問29

機能安全による機械等に係る安全確保




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 このページは、2018年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2018年度(平成30年度) 問29 難易度 機械の機能安全に関する知識問題であるが、かなり詳細な知識を問うている。難問であろう。
機能安全による安全確保

問29 厚生労働省の「機能安全による機械等に係る安全確保に関する技術上の指針」に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)機能安全は、機械、器具その他の設備(以下「機械等」という。)に電気・電子・プログラマブル電子制御の機能を付加することにより、当該機械等による労働者の就業に係る負傷又は疾病の重篤度及び発生の可能性の度合いを低減するための措置を意味する。

(2)要求安全機能には、機械等による労働者の就業に係る危険性又は有害性の結果として労働者に就業上の負傷又は疾病を生じさせる事象を防止するための機能及び当該事象によって生じる被害を緩和する機能が含まれる。

(3)要求安全度水準は、要求安全機能の作動が要求された時に、安全関連システムが当該要求安全機能を作動させることができる確率である。

(4)要求安全度水準は、要求安全機能の作動が求められる頻度(以下「作動要求モード」という。)により、その基準値が異なるため、要求安全機能ごとに、作動要求モードを適切に決定する必要がある。

(5)製造した機械等に関する機能安全に係る実施事項として、製造者が記録し、保管する事項の一つである要求安全度水準は、要求安全機能ごとに記録し、保管する必要がある。

正答(3)

【解説】

(1)適切である。機能安全による機械等に係る安全確保に関する技術上の指針(以下本問の解説において「機能安全指針」という。)の「1-2 適用」によれば、機能安全とは「新たに機械等に電気・電子・プログラマブル電子制御(以下「電子等制御」という。)の機能を付加することにより、当該機械等による労働者の就業に係る負傷又は疾病の重篤度及び発生の可能性の度合い(以下「リスク」という。)を低減するための措置」をいうとされている。

(2)適切である。機能安全指針の「2-2 要求安全機能及び要求安全度水準の内容」の(1)に「要求安全機能には、機械等による労働者の就業に係る危険性又は有害性の結果として労働者に就業上の負傷又は疾病を生じさせる事象(以下「危険事象」という。)を防止するための機能及び危険事象によって生じる被害を緩和する機能が含まれること」とされている。

要は、要求安全機能は、システムの信頼性を高めて死傷する可能性を低くするフォールトアボイダンスのみならず、事故が発生した時にその結果の程度を小さくするフォールトトレランスの考え方が含まれるとしているのである。

(3)要求安全度水準については、「機能安全による機械等に係る安全確保に関する技術上の指針」の「2 機能安全に係る実施事項」の2-2の(2)に記されている。「要求安全機能の作動が要求された時に、安全関連システムが当該要求安全機能を作動させることができない確率」である。従って本肢は適切ではない。

【機能安全による機械等に係る安全確保に関する技術上の指針】

 機能安全に係る実施事項

2-1 実施内容

(1)(略)

(2)要求安全機能を実行する電子等制御のシステム(以下「安全関連システム」という。)に要求される信頼性の水準(以下「要求安全度水準」という。)を決定すること。

(3)(略)

2-2 要求安全機能及び要求安全度水準の内容

(1)(略)

(2)要求安全度水準は、要求安全機能の作動が要求された時に、安全関連システムが当該要求安全機能を作動させることができない確率であり、その水準を表す指標として、国際電気標準会議の規格61508の安全度水準又は国際標準化機構の規格13849のパフォーマンスレベルが用いられること。

(4)適切である。機能安全指針の「3-3 要求安全度水準の決定」の(2)に「要求安全度水準は、要求安全機能の作動が求められる頻度(以下「作動要求モード」という。)により、その基準値が異なるため、製造者は、要求安全機能ごとに、作動要求モードを適切に決定する必要があること」とされている。

(5)適切である。機能安全指針の「5 記録」により、製造者は「要求安全機能ごとの要求安全度水準」を記録することとされている。従って、本肢は正しい。

【機能安全による機械等に係る安全確保に関する技術上の指針】

 記録

  製造者は、製造した機械等に関する機能安全に係る実施事項について、次の事項を記録し、保管すること。

(1)リスクの解析により特定された要求安全機能及び当該要求安全機能を実現する安全関連システム

(2)要求安全機能ごとの要求安全度水準

(3)要求安全機能ごとの要求安全度水準を満たすための要求事項

2018年10月27日執筆 2020年02月09日修正