問19 保護具に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)絶縁用保護具は、高電圧又は低電圧での活線作業又は活線近接作業で装着し、作業者が感電することを防止するために使用する。
(2)静電気帯電防止靴は、絶縁性に優れた材料を用いており、感電防止性能も有するが、着用しているからといって、むやみに電気機器、配線などに触れるべきではない。
(3)静電気帯電防止靴を着用することにより、床上の歩行などにより人体が帯電し、火花放電が可燃性のガスなどの着火源となることを防ぐことができる。
(4)導電服は、静電誘導電流を効果的に遮蔽し、人体に電流が流れることを防護し、高周波などの電磁波のシールド防護服としても使用される。
(5)高圧用電気絶縁ゴム手袋は、機械的な強度が高くないので、革手袋を併用する必要がある。
このページは、2018年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2018年度(平成30年度) | 問19 | 難易度 | 電気関連の個人用保護具に関する基本問題である。合否を分けた問題だろうか。確実に正答したい。 |
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個人用保護具 | 3 |
問19 保護具に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)絶縁用保護具は、高電圧又は低電圧での活線作業又は活線近接作業で装着し、作業者が感電することを防止するために使用する。
(2)静電気帯電防止靴は、絶縁性に優れた材料を用いており、感電防止性能も有するが、着用しているからといって、むやみに電気機器、配線などに触れるべきではない。
(3)静電気帯電防止靴を着用することにより、床上の歩行などにより人体が帯電し、火花放電が可燃性のガスなどの着火源となることを防ぐことができる。
(4)導電服は、静電誘導電流を効果的に遮蔽し、人体に電流が流れることを防護し、高周波などの電磁波のシールド防護服としても使用される。
(5)高圧用電気絶縁ゴム手袋は、機械的な強度が高くないので、革手袋を併用する必要がある。
正答(2)
【解説】
問19 保護具に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)適切である。安衛則に絶縁用保護具の定義があるわけではないが、同規則では、作業者が感電することを防止するために、高電圧又は低電圧での活線作業又は活線近接作業で装着させるものとされている。
なお、次表を参考にして、“絶縁用保護具”、“絶縁用防具”、“活線作業用器具”、“活線作業用装置”の区別がつくようにしておくこと。また、「絶縁用防護具」は建設業での作業やクレーン作業など、電気工事以外の作業で、充電電路に近接するおそれがあるときに、充電電路に装着するものなので、その違いは意識しておくこと。
保護具等 | 意 味 | 対象となる電圧 |
---|---|---|
絶縁用保護具 | 労働者が着用するもの | 低圧、高圧 |
絶縁用防具 | 充電電路に装着するもの | 低圧、高圧 |
活線作業用器具 | 労働者の電位を対地と同じにしたままで、充電電路を取り扱うための器具。必ず絶縁棒を有する。 | 低圧、高圧、特別高圧 |
活線作業用装置 | 労働者の電位を充電電路と同じにして、充電電路を取り扱うための装置。絶縁台、絶縁かごなど。 | 高圧、特別高圧 |
【労働安全衛生規則】
(高圧活線作業)
第341条 事業者は、高圧の充電電路の点検、修理等当該充電電路を取り扱う作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者について感電の危険が生ずるおそれのあるときは、次の各号のいずれかに該当する措置を講じなければならない。
一 労働者に絶縁用保護具を着用させ、かつ、(略)
二及び三 (略)
2 (略)
(高圧活線近接作業)
第342条 (略)ただし、当該作業に従事する労働者に絶縁用保護具を着用させて作業を行なう場合において、当該絶縁用保護具を着用する身体の部分以外の部分が当該充電電路に接触し、又は接近することにより感電の危険が生ずるおそれのないときは、この限りでない。
2 (略)
(低圧活線作業)
第346条 事業者は、低圧の充電電路の点検、修理等当該充電電路を取り扱う作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者について感電の危険が生ずるおそれのあるときは、当該労働者に絶縁用保護具を着用させ、又は(略)
2 (略)
(低圧活線近接作業)
第347条 (略)ただし、当該作業に従事する労働者に絶縁用保護具を着用させて作業を行なう場合において、当該絶縁用保護具を着用する身体の部分以外の部分が当該充電電路に接触するおそれのないときは、この限りでない。
2 (以下略)
(2)適切ではない。静電気帯電防止靴は、導電性のボルトを埋め込んであり、人体の静電気を床に逃がす仕組みになっている。従って、感電防止のための性能は有していない。
(3)適切である。本問の上記(2)の解説で示したように、静電気帯電防止靴は、床上の歩行などによって人体が帯電することを防止する目的のために使用する。
ただし、床面の絶縁性が高いとその効果はあまり期待できないし、水素ガスなど最小着火エネルギーのきわめて低いガスについては効果は期待できない。本肢が「火花放電が可燃性のガスなどの着火源となることを防ぐことができる」と言い切っているところにはやや疑問も感じる。
(4)適切である。導電服は、導電性の繊維を縞状に織り込んであるもので、コロナ放電によって静電気の帯電を防止しようとするものである。これを着用することにより、導電性の繊維でおおわれることになるので、静電誘導電流を遮蔽して人体に電流が流れることを防護することも可能である。そのため、高周波などの電磁波のシールド防護服としても使用される。
(5)適切である。低圧用のものでは比較的樹秋的強度の高いものもあるが、現行の高圧用の絶縁ゴム手袋は機械的な強度はあまり高くないのが実態である。そのため、高圧用電気絶縁ゴム手袋の上に使用するための保護革手袋が商品化されている。
なお、IEC60903では、ゴム製の手袋以外に、機械的な強度を有する複合手袋(composite gloves)も認めている。